第10話 未来の少女


 「てことで、その魔法陣を通った後がついさっきなんです」


 「なるほど、理解した」


 やはりこの少女は未来から来ていた。


 先程、俺がグロッグドラゴンに取った行動は「ギリギリの窮地に立って強い味方が現れる」と言う、テンプレをしようとしたのだが中途半端だった故に、この子が俺を助けてくれる前に倒してしまったみたいだ。


 しかし、未来の話を……あれ?


 「ちょっと待て、理解したが……まさか、君のお母さんって……アオイさん?」


 「はい!そうです!自慢のお母さんです!」


 「オウマイガ!!!!」


 アオイさんが未来では子供を産んでいる!だけどこの子は俺の事をお父さんと呼んでいない!!つまり俺はアオイさんと結婚できなかったのかぁぁぁぁあ!!!


 もう死のうかな……



 「あ、お母さんと言っても育ての親ですよ」



 「あ!よ、よし?え、えと」


 「フフッ良いですよ隠さなくても、リュウトさんがお母さんに恋してる事は知ってますから」


 「そ、そうなのか……」


 確かに隠すつもりは無いのだがこれはこれで知られているのは恥ずかしいな。


 「リュウトさんは……その……」


 「じゃぁ俺は死んだんだな、しかもアオイさんに殺された」


 「どうしてそれを!?」


 「大体予想はつくさ」


 「流石としか言いようがありません……私はどうしたらいいでしょうか?」


 「簡単な話だよ、未来を変えればいい」


 「未来を?」


 「そう、今君が俺にこうやって未来の事を話しただけで未来は変わったはずだ、そんな感じでわざと未来を変えるような事をするといい」


 「みんなに未来の事を話しまくる、とかですか?」


 「そうしてもバタフライエフェクトで未来は変わる可能性はあるが、同時に何かのトラブルが発生する原因にもなりえる、時間がどれくらい残されているか解らないから一番効率的なのは未来で仲間だった人たちを利用する事だな」


 「なるほど……」


 「ちなみに君は俺のパーティーメンバーだったのか?」


 「元々はそうでした」


 「抜けたのか?理由は?」


 「え?聞きます?」


 「今の俺は何もしてないからな」


 「いえ!リュウトさんが何かしたわけじゃないんですよ!……その……私が……」


 「ん?」


 「…………ヒロユキさんに恋をしたからです」


 「なるほど、それはすぐその時に抜けた方がいい」


 「未来のリュウトさんもそう言ってました」


 「恋については痛いほど気持ちは解るからな……なら、ヒロユキのパーティーに?」


 「はい」


 「じゃぁ決まりだ、君はヒロユキの元に行って立ち回るといい、未来の事を言うのも秘密で動くのも自由だ」


 「分かりました!頑張ります!」


 さて、話はついたし、この子を町まで帰しがてら他にも重要な事を聞くか。


 あまり聞きすぎると1週間はかかりそうだ。



 「あ、それともう一つ、かなーーり重要な事があります」

 

 「?」


 かなり?そう言うわりにはニヤニヤしてるな?

 冗談でも言うのだろう____と思ってた



 「ヒロユキさんはお母さんの弟です」



 「っ!!!!!!」


 

 それを聞いた瞬間、少女に色が塗られ始める。


 茶色の髪が柔らかく波打ち、陽光に照らされてはまるで琥珀のように輝いた。

 透き通るような肌は陶器のように滑らかで、ほのかな血色が頬に映えていた。そして、その大きな赤い瞳は、まるで深紅の宝石。



 「フフッ、つまりリュウトさんと私がうまく行けば__」


 「__俺たちは親族……」


 「そう言うことです、お兄さん♡」


 

 …………まって、何も考えられなくなった。



 「……」


 「もしもーし?」


 



 「全力でお互いの恋、実らせよう、妹よ」




 「はい!」


 

 

 俺達は熱い握手を交わした。





 


 




 

 

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