第4話 クイーンズタウン!


 さて、と。


 ユニコーンの引く馬車に乗りこみ、その中には勇者の2人しかいない。


 「……」


 「……」


 この人は見たところ俺より年上の大人だ。

 相手も俺が高校生という事は把握してると見ていいだろう、なら____


 「そう言えば、聞いてなかったな?君の名前は?」


 本当は説明の時に一回聞いているのだが、話の入りとしては自然に派生できる。


 「……ヒロユキ」


 「俺はリュウトだ、よろしくな」


 握手を求めたらしてくれた、根は良い人っぽいな。


 「それにしても驚いたよな、俺たち、勇者だってよ?俺、前の世界ではアニメイトに行ってたらトラックが突っ込んできたのまでは覚えてるんだけど……もしかして仮死状態で今夢?」


 まずは自分と相手の共通点を話して様子を見る。


 「……」


 雰囲気で話しかけて来ないでくれと意思表示。

 だけどここで話を終わらせない為に最初に名前を聞いてるのにバカのふりをしたのが生きてくる。

 

 「そうか……確かに死ぬ前の事なんて思い出したく無いよな、すまん」


 このおとぼけに中身が出来てくるからな。


 「これからどうする?俺達は召喚されたけど魔王がいないからやる事がないらしいし」

 

 「……」


 「やっぱりあの城で習ったみたいに《冒険者》になるのか?」


 ま、テンプレートだし理にかなってる事だが、王宮でのタソガレさんからの会話の節々に冒険者になる様に誘導されていた。


 あれは女王よりもあの人の個人的な感情なのだろう。


 「……」

 

 「……“最初は”冒険者になる」


 なるほどな……“最初は”か……

 いい判断だと思う、まさに大人の考えというとこか……


 なんとなく、この人の事は解った。


 ここはとぼけながら会話を切ろう。


 「ん?最初は?ま、まぁいいか!俺も冒険者になる!がんばるぞー!」


 「……」



 ………………………なんだろう。


 最初はこれを聞くのもついでと思ってたけど……聞きそびれた……会話に入れる予定だったけど俺がためらったのか?


 ハハ……ほんと、この感情は初めてすぎて色々狂ってしまうな。



 「あ、はは……もう一つ聞きたいことがある」



 「……?」


 「俺達とは別の……もう1人の勇者のことだ」


 「……何だ?」


 「その……えと……」


 な、なんだ喉が詰まる。

 こんなこと一度もなかったのに!


 「……?」


 顔も熱くなる!どうして!

 

 「言いにくいんだけど……その……」


 「……ハッキリ言え」


 ハッキリ言えだと!

 それが出来たら苦労しないんだよ!!

 くそ!なら言ってやる!言ってやるぞ!


 「ヒ、ヒロユキはあの人の事好きじゃないよな!?」


 







 「………………………………は?」







 「そ、その……一目惚れって言うのかな?こう言うの初めてだから分からないけど……もう……好きなんだ!」


 喉元過ぎれば出てくる本能からの言葉の数々。

 あぁ……ほんとに俺は恋してるんだな……


 「……」


 「どうなんだ!もしもヒロユキも一目惚れしたのなら俺達は恋敵になってしまう!どうしても確認しときたい事なんだ!」


 「……落ち着け……俺はない」


 「ないって!?つまり好きじゃないって事だな!?」


 「……」


 ヒロユキは首を縦に振って肯定した!


 肯定した!!!!!!!!!証拠は目に焼き付けたぞ!


 「よし!後から好きになっても知らないからな!」


 「……あぁ、大丈夫だ」


 「よっしゃーーー!!!」



 これが心からの喜び……良いな……



 あぁ……好きだ。


 ______________



 __________



 ______



 そして、目的地のクインズタウンに到着した。


 「すっげぇ……」


 「……あぁ」


 漫画でしか見たことない様な光景だ。

 すごい、とは思うが、あの時の一目惚れのインパクトにはかけている。


 「とりあえずギルドだな?どうせ目的地が一緒だし一緒に行かないか?」


 「……あぁ」


 ま、断る理由は無いからな。

 同じ勇者なら友好関係は作っておくべきだろう。


 ……………………………


 …………………


 …………


 「お、ここか、それにしても看板に《クインズギルド》なんてそのまんまだなぁ」


 「……」


 さて、テンプレートならば色々とある場所だが、全ていなしてやろう。


 「こんにちはーどうもー」


 「……」


 ふむ……

 目立って入ったが視線こそ受けたが、あっさりとカウンターの受付嬢の前まで来た。


 「えーっと、俺はリュウトって言うんですけど、こっちはヒロユキ……お城からここに来る様にと……」


 「あなた方が例のお二人様ですね?此方に通知は届いております、あちらの扉に入ってください」


 案内されたのは《関係者以外立ち入り禁止》と書いてある扉。


 開けると、中にはソファとデスクがあり中年のおじさんが待っていた。


 「ようこそ勇者さま、私はこの町のギルドマスターです。これが勇者様専用のギルドカードになります」


 そういって免許証サイズの黒い高級感漂うカードを渡してきた。

 

 「ギルドカードの説明はお城で受けましたか?」


 「はい、でも通貨となる数字が俺もヒロユキも書いてないみたいですが……」


 「良くぞ聞いてくれました、普通のギルドカードの場合、数字が書かれていてそれが通貨になるのですが、あなた達のカードの表記は《∞》!何でも買えるのでどうぞ使ってください!流石に家を何軒も買うなどそれを使って自分の店を開くなど行きすぎた事は出来ませんので悪しからず」


 ………………よくぞ聞いてくれました……か……


 確かに、話はスゴい……ここは驚くべきだな。


 「うへえぇ!?」


 わざとらしく手も震えさせる。

 これで勇者らしく振る舞えてるだろうか?


 「それと勇者であることは絶対に秘密です、我々ギルドからしても国同士が戦争なんて望んでいませんのでくれぐれもお気をつけてください」


 勇者と言う兵器を保有してる事がバレれば他の国から危険と判断されるのは当たり前だな。

 もっとも、この世界には世界地図は無くて国も3個しかないが__


 「はい!」


 まぁ、この問題は今度でいいだろう。


 「では、素敵な冒険者ライフをお楽しみください」


 「ありがとうございました!」


 「……」


 礼をして部屋を出てギルドを安全に出れた。


 あのイベントはまだと言うことか……

 

 「とりあえず俺はここら辺を探索してみて武器屋とか行ってみようかと思うけど、ヒロユキはどうする?」


 「……俺は宿を探す」


 予想通り。

 2人でいる必要が無ければこの人は1人になるだろうな。


 ここはガッカリしとけば次に活かせるか。


 「そ、そっか……短い間だったけどここで一旦お別れかな?」


 「……あぁ」


 「お互いにこの世界を楽しもうな!じゃあな!」


 そして此方から離れればあっちも後ろ髪引かれることはないだろう。


 

 さて、資金はある。


 まずは武器だな……

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