2-3 面接前夜

「……それでね、編集者にも2つのタイプがあって、『ライター系の編集者』と『企画系の編集者』がいるのよ。今回の募集はライター系の編集者だそうよ」

 圭子叔母さんが、、詳細を説明してくれたのだった。

「そうなんですね。私、本を読むのが大好きなんですが、余り書いたことが無くて……。大丈夫でしょうか?」

「この間、小論文を幾つかお借りしたでしょ? それを編集長の高幡さんに見せたの」

「どうだったんですか?」


 私は息を呑んだ。

「合格だそうよ。あとは面接ね」

「良かった」


 私は心臓が跳ねるように動いているのを感じた。本当に大変なことになった。

「私、出来るかどうか分からないですが、挑戦してみたいと思います」

「頑張ってね、あんずちゃん」


 それが三日前の四月中旬のことだったのである。そして明日の土曜日に、編集室で面接をしてもらうことになったのだ。急な展開で、こんなに上手くいっていいのか不安だ。


 私は翌日に面接があるので、その日は早めに圭子叔母さんの家から帰ることにした。

「じゃあ、またね、あんずちゃん。面接、頑張ってね」

「有り難う、圭子さん。私、全力でぶつかってきます」

 私がそう言うと、圭子叔母さんはほほ笑んだ。

「あまり頑張りすぎないようにね。その調子なら大丈夫よ」


 私は圭子さんの家からでて、自転車で帰路についた。帰り道には菜の花がたくさん咲いていて、私を応援してくれているような気がした。オレンジ色の夕日が辺りを照らし、眩しい残光が西の空にあった。


 それが私の「新しい出発」の日のことだった。その道が、ずっと先まで続いていることを、その時の私はまだ知らなかったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る