閉ざされた凍てつく世界にて

 彼は体も強く恵まれて産まれたものの周りには敵ばかりで命を狙われていた。

 神の子の内に無理矢理始末されそうになり、異界に逃げ込み生き延びたが異界と強い縁を作ってしまったのだ。




 流れる川の水は絶やさぬことを呪として絶えぬことを祝とする。

 呪いの如く強い血故に生き延びて彼は銀世界に惹かれ閉じこもってしまった。




 努力すれど強くなれど、先祖返りの父は眩しく辿り着けず銀世界に迷い込む。

 ヤマのモノに見守られた彼は危険な美しき銀世界のヤマに惹かれ、人間を信じられなくなっていたのだ。

 それは人の子になっても、やがて人になっても変わらず人に惹かれなくなっていた。






 人の子になっても人前に出されず虐げられ美しき銀世界の異界に迷い込み人である事を忘れかけたあの子が居た。

 彼は留めて此の世に連れ戻した時、幼いあの子の絶望の映った瞳に心を奪われ心を締め付けられた。





 その後あの子には長く会わず、歪な形に育ったあの子にまた心を揺さぶられ彼は銀世界を想起する。

 歪で危うげなあの子に、滅びを齎しかねないあの子を銀世界の中に閉じ込めてしまいたいと彼は葛藤する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る