青は淡し

 アオは生まれた時からあわいの最中に在った。

 生と死の、色と空のあらゆる狭間に在ったのだ。

 体も弱く寝込んでしまえば暫く夢現を彷徨い、死の淵にさえ片足を踏み入れてしまう程に不安定な存在で神の子から人の子になっても人の前には出られる状況では無かったのだ。

 両親が健やかであることを願い、春の青葉に澄み渡る風を謡う真名を与えられても、その存在は淡いものだった。

 山の気の力強さにあやかっても間の此の世とは思えない硝子のような美しさと儚さを持った存在だったのだ。






 ある時からアオは実体をしっかり持ち前へ進める様になった。

 神の子の界渡りの山の気の残滓をけて立ち上がり前に進める様になったアオは死の淵にはあらねど存在は淡いままだった。

 朔であれど望月のような輝きを放ち、穏やかな慈愛に満ちた雰囲気を漂わせる存在であったのだ。

 それと同時に水面に映る月を渇望するかのような執着と狂気を奥底に隠し持つ存在となったのだ。

 アオは才に溢れ求聞持ぐもんじの力を持つかの如く混沌の意識から抜け出した後に全てを吸収した。

 嘗ては死の淵で見聞どころか意識も淡く在った事実さえも払拭するかの如く険しい道を歩んで行く。

 生まれた家とは違う道へ、山の応援を背にアオは進んで行く。

 例え神の子から人の子になった少女への執着だけはあきらかでソレが自身を蝕もうが溺死しようが捨て去ろうとは露とも思わないだろう。







 尚アオの執着の行く末も歩む茨の道の涯も淡いままである。

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