體と空蟬
『これはかつて私が身辺整理をしていた頃の話なのですが――』
私の家は元々御三家の一つである本家の命令で執行をする分家で他の御三家の後継ぎに嫁いだのですが、その家は腐敗しその始末すら自身でつけられない有り様の家でした。
私の前に私の友人でもあった親戚の女性が嫁いで居たのですが嫁いだすぐに便りが途切れ、子供を産んで死んでしまいその死んだ姿も骨も見ずに全て終わったなどと一方的に告げられて終わりでした。
流石に子供の七五三詣りにも報告もなく本家も怪しいと思い暫くしてから私を送り込み、そこで見たのは虐待され痣に根性焼きに服もボロボロとみすぼらしい姿の中に力を輝かせる幼子の姿でした。
私自身には本家の御威光も自身の抵抗力もあった為直接的な自身への被害は無かったものの、外との関わりを妨害されたりと閉塞された場所には変わりありませんでした。
幼子を露骨に保護すれば引き離され更に虐待されるのは目に見えており、距離を取って遠回しに助ける事しか出来ませんでした。
幼子は成長し小学校に通うようになり身体的な虐待は外に出さなければいけない関係で穏やかになりましたが精神的なモノは悪化します。
その家の中で比類なき潜在能力が体の中で輝き出します。それを妬んだ当主も父親である後継ぎも禄に力の制御も願い方も教えませんでした。
私は家の系統が違う為彼等の監視もあって助けを乞う方法しか教えられませんでした。
そして幼子が少女になった頃、私も知らなかったのですが生まれた直後に呪いを掛けていたらしいのです。
それを自覚し絶望した少女は家の中を使い方のわからない力を暴走させ不完全な呪詛返しを行い家の建物を半分壊滅させ人間も負傷に追い込みました。
かすり傷だった私は蹲り掠れた声で助けを求める少女の声を聞き、現場が混乱している隙に呪いまみれになっている少女を連れ出し本家に逃げ込みました。
私は当主に説明し匿ってもらい、神子様に隠匿と忘却の呪を同い年である少女に施してもらい大都会の混沌の中で嫁ぎ先から身を隠しました。
忘却が解けてまた少女が力の暴走を起こさないようにひっそりと何年か過ごしましたが、暫くして少女の呪いと私の実家などの分家とその本家が嫁ぎ先に引導を渡したようでした。
そしてその始末を私の実家が行い私の実家は嫁ぎ先のかの家の役割を継承し一族内での地位を上げました。
私達は故郷に戻る事も可能になりましたが、少女の忘却の呪の関係で暫くは電話などの連絡だけに留まりました。
私は実家から少女の養育費を貰っていましたが、友人の子供であり血の繋がりはか細かろうと無いわけでもなくそもそもあろうと無かろうと関係なしに自身の子供として育てていました。
実家が私の嫁ぎ先を潰した際に離縁の処理は済んでいたのですが、家からの紹介の人と結婚をして子供を二人儲けました。
少女は旦那になった人と距離はあれどあからさまな怖がりもしなければ反発もせず受け入れてくれ、私の産んだ子供を淡々と面倒を見てくれるいいお姉さんになりました。
それでも何処か危うげな挙動をする事がありました。子供に危害を加えるとかそう言うのではなく、爪を噛むような自傷行為とも言える行為でした。
少女のこの行為は嫁ぎ先を抜け出す前からあり、逃げ出した頃には大分落ち着きましたが、時折無意識行ってしまうようで病院行っても完全に無くすことは出来なかったのです。
家からの紹介で私が結婚した旦那は少女の事情を元より知り、出しゃばらなければ見放しもせず距離を取って接していて下さる人でした。
だからこそこの自傷行為を知り病院を探したり、少女の根幹の絶望を否定も肯定もせず前の向き方を教えたのでしょう。
長い目で見て行こうと私と少女に声を掛け見守ってくださいました。
極稀に旦那に少女と旦那との子供達を預けて故郷に報告を行ったりし穏やかな時間を送っていました。
少女に私の実家に行かないかと問うと顔を強張らせ力が漏れ出しかろうじて捻り出すような声で行きたくないと言い、忘却の中でも体が覚えてるのは言うまでもない状態で少女の体の傷は殆どの痕も消えても心はまだ癒えてないのがわかりました。
少女の在り方を長い目で見ようとしていたのですが、暫くして違和感が出始め彼女の体の成長に現れてきて異常が確定しました。
身長がそれなりに伸びるものの体に丸みを帯びたり声が多少なりとも変わったり精神への変化が全く見られなかった為です。
さらに少女の身体自体に体重の乱高下や外因内因心因にその時期何かあった訳でもなく二次性徴の印が訪れなかった事が決定打となりました。
病院に行っても原因がわからず数値も二次性徴が始まってない子供の範囲内で、このまま放置してしまえば大人になれず子供が作れない体になってしまうおそれがあります。
その病院で出来る治療は全て行いましたが数値が良くなっても訪れず良い結果も見られなかった為、本家に相談をしました。
本家に相談をした結果、少女本人の身体は本来異常はないが大人になる事を拒否しているかもしれないと推論が出ました。
本家の神子様の推論によると、今まで放置してきた呪詛返しが何かしらの悪さをしているかもしれない、とのことでした。
少女の呪詛返しは跳ね返しただけで根源すらも呪ってしまうあまりにも危険なモノだったのですが、力の使い方も不完全だった為機能しておらず、才無き近しい近親や一族にしか実質的な被害はありませんでした。
それでもその呪詛返しの条件がその血統の大人くらいのモノで実際の少女に対しては術者本人でもあるため効果が無かったとしても、少女の大人に対しての無意識の忌避感も相まって大人になる事を体が拒んでいるかもしれないとの事でした。
呪詛返しを解いても元の呪の術者である少女の父親と祖父である当主は死んでおり問題無く、力の操作をある程度学ばないと少女が色々な意味で危うい存在なのでどちらにしろ此方に帰る必要がありました。
そして私達の故郷へ少女はようやく帰ることになったのです。
私が病気の治療の為に帰郷を提案した時、少女は嫌がる素振りもなくそれに従いました。
そしてようやく私は少女の心は癒えてきたのだと安心しました。
そして少女は故郷に帰りました。
私も一緒に帰郷して少女の転校先や紹介先の病院での手続きや少女への説明や下宿先という私の実家の説明などで一泊した後大都会に戻りました。
ここからは私にはどうにも出来ず私の手から離れた少女がどのように動くか次第で変わります。
静かで大人びた少女があらゆる事に折り合いをつけて前を向いて歩み出せる事をその時の私は願っていました。
『少女に
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