あの子カミの子

 あの子は生を享けた時から力を持たず、ヒトとして生きることを許されなかった。

 ただカミの子として、神のお供え物と呼ばれいずれカミの元に還される存在として生きる事しか許されなかったのである。

 その存在は尊く聖別された者として崇拝される対象でもあった。

 あの子はヒトの中に居場所はなくやがてヤマの元にカミの元へと還されてしまった。



 還された後も同じ立場の成れの果てと共に在り他のモノが擦り減り消え失せて土へと還っていく中、半月と謳われたモノと共にあの子は存在だけが残り存在と言うモノに固執していった。

 還っていったモノ達の名残を集める自身に取り込み今となっては意味を持たない力をあの子は持てるようになった。



 やがて迷い込んだカミの子をを半月が現世へ帰しヒトにした後、半月は暫くして邪仙の契約でヒトの中に放り込まれ半月とあの子は分たれた。

 半月がヒトの中に放り込まれた時にヒトに入るために力を擦り減らし削ぎ落として舞った残滓を必死に取り込んで身に纏いあの子は存在を保つ事だけに固執するようになった。



 カミの子がまた迷い込んだ時、あの子はカミの子に縋り付かれあの子自身を求められた。

 やがてあの子はカミの子を現世へ帰すのに固執し存在を捨てられるようになった。

 あの子はカミの子を現世へ戻した後、ヤマのモノに存在を喰らわれ残滓を周りに散らした。

 そしてようやく還ることが出来たのだった。


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