あの世への旅行
『私の上の兄が、西の方に行った話なんだが――』
私の兄は大学の先生をしていてなんていうか文系な感じの人なんだが、夏休みに西のあの世に行ってくるから私のお目付けをしてる付き人を貸してくれといきなり支離滅裂なことを言ってきたんだ。
相変わらず素っ頓狂と言うか言葉が足りてないと言うか、必要が無いと言葉を省くから妹であり師匠の私に伝われど連れて行く予定の私の付き人本人には
まぁ、その後に兄は嘗てのミヤコビトのあの世の事や伝承やその土地の事を自分の肌身で感じて来ると言って楽しそうで、面白そうだったから好きにすれば良いと許可は出したんだが。
私のお目付け自体は別の人員が別個で新しく確保できたから暫く彼が居なくても問題はなかったので連れて行くなら連れて行く本人を説得してくれと許可は出したんだ。
一応彼の育ちは西の方で地が出たときや単語選びや発音にそれが出てくることがあるから連れていきたいの動機はまぁ理解出来るし、息抜きによそに行くのは良いことでもあるからな。
兄はその後話し合いの交渉を行っていたそうだ。
交渉や労働の報酬賃金待遇にしろ色々あるだろうからどうにか説得して連れて行ったらしい。
彼結構頑固なんだが割とすぐ了承してて驚いた、それで1週間ほど私は基本家から動かず偶に女性の付き人付けて所用に出掛けたりとしていたんだ。
二人は帰ってきたんだが沢山のお土産を貰ってびっくりしたよ。
女性の付き人がお茶を出したりアレコレしてから彼に仕事の交代はいつからするか聞いたら無言でお茶のお盆を女性から取ろうとしたので、私が荷物の片付けとか休んだらと止めたらぐぬぬぬってなってたよ。
それを横目に兄は家族に対するお土産を居間にぞろぞろ集まってきた母と母に連れられた父や妹等家にいた人間に配り始め、私はあまり外に出歩けないから付き人からは色々食べ物やよくわからない置き物を貰い、兄からはまた色々風景の写真等も分けてもらった。
兄はその後すぐ資料の仕分けなど本業の為に自室に籠もったもんだから母が溜め息をついていたよ。父は母の肩をポンポンしてた。
付き人の彼も一度家に帰って片付けてから夕飯頃に来て兄の仕事を今日まで手伝うと言っていた。
ご飯については祖父母や両親へ兄と帰ってきた際に言っていたようで待ってるよー、と私の母と祖母に声を掛けられていた。
多分夕飯関連の手伝い要員も兼ねているんだろう。
父は気を付けて来るように、と彼に声を掛けていた。
私は彼から曰く貰った凄い木で作った凄い置き物とか何かよくわからない気配のする置き物やら不思議な雰囲気出してるストラップ等独特なお土産を検分しやって来た唯一の妹と話をしたんだが、色々と無頓着な割に面白い物を寄越してくるんだなあ、の妹の一言に笑ってしまったんだ。
確かにあまり勘の鋭い人間ではなく兄に相談したでもなさそうな感じの品々に私は自分のために選んでくれたんだと心の底から感心していたよ。
その後彼がまた夕飯時に来てくれた時に素直にありがとうと感謝の意を述べ、お土産の検分たら顔を真っ赤にしていて面白く、父がクククッと静かに笑っていたよ。
夕飯時に兄や彼から兎の話や狼の説話の話などを聞かされて面白かったかな。
月に関する話、人里から離れた山の言葉、非日常の修行場、あの世と呼ばれるだけのその場所に二人は何を見て感じたのか、私もその非日常の魅力溢れる話に見に行きたいなと思ったよ。
『まぁ、付き人の彼が育った場所はまた更に遠い場所だから知己の者と会うことは無かっただろうが何かあったとしても言わないだろうなと思うが』
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