亡き者を糧に

「此れは昔お祖母ちゃんから聞いた話なんだけど――」


 お祖母ちゃんがこっちに嫁入りする前実家にいた頃、少し影のあるご近所のAさんから家庭菜園の果物のお裾分けを貰ったらしいの。

 そのAさんは元々とても明るい人で鴛鴦夫婦としてご近所で有名で半年前にとても仲の良かった旦那さんを亡くしててようやく様々な手続きも大方終えて旦那のいない生活にも慣れてきた人だったらしいんだよね。

 お祖母ちゃんも家にたくさんあったトマトをお裾分けしてその時は終わったらしいんだ。

 頂いた果物が熟す前だったから、少しばかり台所に置いておいたら色が変わってだんだん顔みたいな模様が出てきたんだって。

 お祖母ちゃんはギョッとして果物をくれたAさんに見せに行ったら、Aさんは突如「貴方ー何で死んじゃったのー」て果物抱き抱えて泣き出しちゃって。

 Aさん外で大泣きだから、お祖母ちゃんの家族も他のご近所さんと来てしまって、お祖母ちゃんは問い詰められたので訳を話したんだって。

 そしたらやって来た人たちがAさんが抱えてる果物を見たら確かに模様がAさんの死んだ旦那さんの顔だったんだって。

 お祖母ちゃんはあまりAさんの死んだ旦那さん見たこと無かったからピンと来なかったらしいよ。

 戦後暫くは死んだ人の骨を畑に撒く風習自体は珍しく無かったみたいで極稀に人の顔の野菜果物が採れたらしいんだよね。

 お祖母ちゃんも模様にはびっくりしたけど骨を撒いてることにはなんとも思ってなかったってさ。

 その後、ご近所さんは別の果物を代わりに下さったけどそれは普通だったとか。

 別に旦那さん印の果物を気付かずに食べても祟られるとかそういう危険性は別にないらしいよ、絵面的に食欲失せるけどね。



「言った私が言うのも何だけど、面白い話というか怖い話とも違うこれは何なんだろうね」



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