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「あぁ、何でこんな事に……」


 夜更けに怪異列車の車掌の比良坂は嘆いていた。


「ホラ文句言ってないデさっさと目的地ニ行け」


 美女の上半身に二メートルも長さもあろう蜘蛛の腹を持ちでかく長い脚を持つ女郎蜘蛛の様な霊峰ヤマの怪異にど突かれていた。

 霊峰の領域の程近くを掠った途端に突然大蜘蛛の怪異に乗り込まれてハイジャックされたからだ。

 実は怪異列車は大蜘蛛に絶望的に相性最悪である。

 列車形態については化けているだけだが、本性自体も車なので結局車輪駆動部をやられたり単純に速度や衝撃をころしてしまう大蜘蛛の綱の様な糸で網にされて捕まえられると動けなくなるのだ。

 加速でぶち破るなどの抵抗すら出来ない。

 ただの普通の蜘蛛の糸でさえ稀に意図せず自分よりも大きな鳥を雁字搦めにして蜘蛛は捕食している事があるのだから。


「畏まりました」


 これでも速度出てるんだけどな、などと怪異に下手に聞かれたら無駄に詰められるので素直に速度を上げてまた霊峰ヤマの怪異の寝床へと向かっていった。


「えーと、今回の依頼は、寝床付近に放棄された不届き者の死体の撤去ですね」


 移動中に確認をして打ち合わせをする。

 乗り込まれてジャックされた時点で一度貨車は切り離してある、山で移動するのに邪魔だからだ。

 相変わらずの悪路だがまた次元をずらしてただの木々石ころなどの障害物はすり抜けた。


「そうダ、霊峰ヤマに相談しタラお前捕まエテこいと言われタ」


「えぇ……そうなんですか」


「だから奇襲しタ」


「奇襲のし甲斐無かったと思いますが、私は怪異に対しては滅法弱いので」


 輸送に特化し過ぎて、と言ってて悲しくなることを比良坂は言った。


「ソレはそウ」


 大蜘蛛の怪異は人に関わる生まれでないためかカタコトで喋っている。

 動物系の怪異そのものは人に関わらない限り基本的に必要ないからだ。


「到着しました」


「着いたナ」


「えぇ…」


 蜘蛛は勝手にドアをこじ開けて雑に飛び降りた。

 その姿を見て比良坂は退いた。

 因みに車体は前回ほどではないが地味に破損している。


「ホラさっさと出てコイ」


「あぁ、ハーイ」


 車体を凹まされる前に慌てて比良坂は車外に出た。


 すると十人くらいの男性と思われる死体が積まれていた。


「えー、こちらが撤去希望の死体ですか」


「そうダ」


 比良坂は仕事モードに入り普段の感情を埋もれさせる。

 雰囲気が変わった比良坂を面白そうに蜘蛛は見ていた。


「直接の死因はマチマチですが、首に噛み跡アリ、肌の状態を見るに元々蜘蛛の糸でぐるぐるにされてたようですね」


「そうダ、私ガ狩っタ、色々と死体放棄しに来た不届き者だッタからナ」


 棄てられた死体は贄ヶ淵に放り込んだ、と蜘蛛は言った。


「死体生産側も死体側にと……金で雇われて中身を詳しく知らない運び屋だったのかもしれませんが、運が悪かったと言うことで」


 比良坂も比良坂でさらっと言い切りながら死体の査定と死体袋への収容をテキパキと行った。


「良イ事言うじゃないカ」


「お手柔らかにお願いいたします」


 美女は笑顔でそう言ってペシペシ手加減して叩くが、叩くのは巨体の蜘蛛の前足なので普通に比良坂には痛い。


「査定結果はこちらです、今回の回収は多めですね、死体の対価は何をご希望でしょうか?……急に連れて来られたので今すぐ用意は難しいので現時点ですと書類と引き換え札になりますけど」


 前回は形式上の運賃の代わりであったが、今回は呼ばれて買い取りしている形に等しいので比良坂も今すぐでは無いにしろ何かを用意して差し出さないといけなくなる。


「ソレについテは霊峰ヤマから希望ガある」


 蜘蛛の人間の女性部分が腕を組みながら言った。


「おや、そうでしたか……では何をお望みで」


 列車から書類を取り出して書き込みながら訊いた。


「テイキケン?が欲しいとカ言ってタ」


「……え?誰が使うんですか?ソレ」


 蜘蛛の言葉を聞いて素で固まり書く手を止めて蜘蛛を見た。

 そもそもあの世への片道切符しかない比良坂鉄道怪異列車に定期券等のサービスは存在しないのである。


「詳しイ事は今カラ連れてクから用意しロ」


「あ、ハイ撤去希望の品をしまうので先に中でお待ち下さい」


 蜘蛛に言われて慌てて中身入りの死体袋を列車の後部に収容した。


「お待たせしました」


 列車に比良坂は戻り出発する。


「あそコの山の頂に行ケ」


 蜘蛛は女性の細腕である場所を指し示した。それは霊峰の更なる霊域である。


「え、あちらは結界があって行動制限が掛かるんですが、それは」


 しかも見るからに凄い霧で覆われている。

 人間ではなく怪異なのでただの霧なら問題なく進めるが、領域を隔てているのと同時に感覚を曖昧にさせる危険な霧である。


「知るカさっさと行ケ」


 あの中ではどこまで動けるかわからない、との比良坂の懸念を蜘蛛は一蹴した。


「うぅ……、承知しました」


 比良坂は怯えながらも重苦しい圧力を受ける霊峰の更なる霊域に進入した。

 異界の深度が上がるのを比良坂は感じる。

 比良坂の所属している竪洲でもここまでの場所は危険物を管理する場所が多く下っ端の為入ることは出来ない。

 冷たく静謐な重苦しい空気の圧力を文字通り比良坂は車体で感じる。


「……思ったよりは挙動に影響はなさそうで安心しました」


 暫くして比良坂がほっと一息つくと隣にいた蜘蛛は呆れた顔でソレを見る。


「そリャ『霊峰入山許可証』持ってルからダ、バカか」


 そう言って比良坂に右手でデコピンした。


「あ゛だっ」


「周りニ仲間が監視しテる状態だかラ大人しくしてロ」


 比良坂は額をおさえてピクピクしている。

 痙攣気味の比良坂を状態を蜘蛛は気にせず、左人差し指で目的地の方向を示した。


「そのまマ登れば着くゾ」


 車体が独りでにボロボロになりつつあるも列車は問題なく進んでいった。













「着いたゾ」


 あまりにも濃い霧がかっていて、蜘蛛が居なければ途中で迷って外に出られなくなるであろう領域を進む行動から解放される。

 比良坂は列車を停車させて外に出た。

 気付けば霧が晴れ、立派な社殿が見える。

 あまりにも綺麗な社殿はここを紛うことなき異界だと知らしめるものでもあった。

 社の前には誰かが佇んでいた。


「……や、やっと着いたぁぁ」


「うるさイ」


「おっぶぅっ」


 比良坂は半泣きになりながら喜ぶと後頭部を軽くはたかれる。


「こコは『人々に忘れられた社』ダ」


 蜘蛛の説明にも関わらず比良坂に視認あるいは感知できるモノは実体を持つ人間の少女にしか見えなかった。

 幼気な可愛らしい美貌に二つの三つ編みを両サイドでループさせたような髪型で身長は女性にしてはそれなりに高く体つきも豊かでアンバランスな魅力がある少女であった。


「……ですが、あちらに見える方はに見えるのですが」


 比良坂の声を聞いてこちらへ人とは思えない瞬間移動がと誤解するような速度で目の前に現れた。


「それでも貴方は先輩をあの世に連れ去ろうとしたんですよねー?」


「!?」


 そのまま比良坂は大量の水を掛けられた、叩きつけられたような感覚を覚えるほどの滝のような水である。

 しかも酸ではないはずなのに、何故か焼かれる痛みが襲う。

 清廉な水のようだ。死属性とでも言うべき比良坂のようなモノを焼くような清い水を少女は操れるようだ。


「あ゛ぁっ……」


 うめき声を上げながらうつ伏せに倒れ込んだ。

 そんな比良坂を横目に少女は蜘蛛の方を見て口を開く。


「ここまで連れてきてくれてありがとー、珠織たまおり


 コレ報酬ね、と言って少女はタッパに入った何かを蜘蛛に渡していた。

 蜘蛛の名前は珠織というらしいことを、焼かれる痛みに悶絶しながら知った。

 車体も錆びついていく、ただの雨ならすぐにこんな事には当たり前だがならないようになっている。

 

「ン、紫里ゆかりの料理オイしイからスキ」


 そう言って喜んだ顔をして珠織は女性の手で受け取り何処かへ去っていった。

 比良坂は少女の名前が紫里であることも悶絶の最中さなか聞き取れたが今はそれどころではない。


「さて……」


「お待たせー、生きてるー? 存在の根幹をやる程強くないから暫く大丈夫よねー」


 比良坂には何時ぞやを思い出すような拷問を焼かれる水責めによって執行された。

 掛けられた水は散ることなく比良坂の周りに留まり彼を焼く。

 全身が焼かれた痛みに支配される。


「貴方が連れ去ろうとした生きてた人は私の先輩なんですよー、わかってもらうために軽く焼きましたー」


「ぞ、ぞの件は手打ちになったはずじゃ……」


「だからコレは私からの私刑ですー、痛いけど存在が焼かれるほどではないでしょー?あ、ちゃんと事前に許可取ってるから少しの間、付き合ってくださいねー調整もありますしー」

 

 紫里の気が済むまで終わらない事に比良坂は絶望した。

 しかも前回と違って見た目と苦痛の度合い程存在にはダメージが入らないので回復は早い。精神にはダメージ若干入るが。


「ゔぅ゙……格の高い童子でしたか……許してください……」


 童子と言われてピクリと反応をする。水を操る手を止める。


「まぁ、お姉ちゃんにも扱かれたらしいし良いよー」


 許したげるー、と緩く言って水を退かせた。

 そして紫里は比良坂の肩にタッチすると比良坂は火傷が瞬く間に癒えていき、車体の錆も、取れて綺麗になっていった。


「ゔぅ……ありがとうございます」

 

 感謝します、と言ってノロノロと立ち上がる。


「因みに定期券の希望者は私と私のお姉ちゃんだよー。珠織は当たり前だけど電車のシステム知らないから説明するにも私が出る必要があるからねー」


「なるほど、それは確かに」


 そりゃ蜘蛛の怪異には電車のサービスなんてわからないよな、と比良坂も同意した。


「でも私では貴方を捕まえるのは困難だからー、貴方を簡単に捕まえられる珠織にお願いしたのー。あ、そのあたりも話が通ってる筈だよー」


「経緯はわかりましたが……死出の旅片道切符の比良坂鉄道に定期券などのサービスなんてありませんよ」


「そこは竪洲の方にお話を通してますよー、霊峰との交流及び提携も含めてですねー」


 マタタビや油揚げ、御香等色々包んで私のお姉ちゃんが話を通しましたー、と紫里が比良坂に向かって言った。


「比良坂さんの能力は空間移動が得意分野ですからー、他の事も可能ですしー、竪洲には定期的に死体なり何なり対価を供給する形で他の場所に行かせてほしいかなと話を私のお姉ちゃんが乗り込んで通したそうですー」


「紫里さんのお姉さんて、あぁ……あの方ですか」


 比良坂は以前の雑に表記された書類を思い出した。

 そして、散々痛めつけられた思い出が蘇る。


「署名の便宜上、半月様となっておりますね」


「うん、半月が私のお姉ちゃんだよー、お姉ちゃんは霊峰の眷属でもあるから色々と制限があってねー、比良坂さんならー遠くへお姉ちゃんを運べるかなってー、お姉ちゃん楽しそうにしてたよー」


 実際に竪洲まで行けたからねー、と紫里は言った。


「お姉ちゃんがあそこまで遠くまで言ったの、じゃないかなー?」


 まるで生前の半月は遥か遠いところに行っていたという口振りである。


「つまりお客様を送る普通の旅客サービスを行うようにということでございますか?」


「うん、そうだよ」


 そう言ってポケットから書類を出した。


「ちゃんと、比良坂さんの上司達から許可貰ってるからねー」


「……そのようですね」


 比良坂には了承して定期券を発行する以外、逃げ場はないようだ、そもそも敵陣のど真ん中も良いところだが。

 因みに一枚目の書類には比良坂の貸出の了承と契約内容、二枚目には霊峰との交流と提携に行き来に関する事項が、三枚目以降は貢ぎ《包んだ》物の謝意の文が添えられていた。

 因みに轍さんはマタタビとキウイに骨抜きにされたことが比良坂には確認できた。

 しっかりと一枚目と二枚目には竪洲の頭領の署名と印まであった。


「一枚目と二枚目は写しもあってー、これは比良坂さんに渡してー、って言われたから渡すねー」


 はーい、と紫里は二枚の写しの書類を比良坂に渡した。

 比良坂は受け取り目を通しているとわなわなと身を震えさせ始めた。


「……かしこまりました、少々お待ち下さいませ」


 そう言って書類を持ったまま比良坂は車内に引っ込み、息を吐き出したあと、手に二枚のカードを出して力を込めた。

 そして書類を置いたあと再び列車から降りる。


「お待たせしました、こちらが定期券というか今回はプリペイドカードの扱いになります」


 そう言って紫里に二枚のカードを渡した。

 ありがとー、と言って紫里は受け取る。


「えーと契約更新とかどうすればいいのー?」


「とりあえず、今回は手探り感覚の形で死体分の価値が対価のサービスになるので、死体の対価分貴方方を乗せたら今回のカードは切れるので、定期的に死体か何かの供給で延長の形になるかと思います」


 詳しい事は書類に纏めて後日お渡しします、と言って今回の死体の査定とカードでどこまで行けるかの説明を始めた。


「今回の死体の査定はこのようになったのでこのカードでは距離換算するとここから竪洲まで三往復程乗れますね。まぁ半月さんはともかく、紫里さんは竪洲には決して行かない方が宜しいかと」


 比良坂は真面目な顔で言った。

 彼らの死の国と紫里の存在は相性が最悪だからである。


「ふーん、なるほどー、わかったー」


 そう言いながら紫里はプリペイドカードを、じいっと見つめていた。


「では、今日はこれにて失礼致します……と言いたいところですが、すいません、この霊域の外まで案内してもらえませんか?」


 外は変わらず霧で真っ白な上に霧がなくても月が隠れて見えず暗い。

 別に比良坂は暗視もあれば灯りもつけられるので暗いだけなら問題なく走行可能だが感覚どころか意識さえ曖昧にしてしまうあの霧の中では『霊峰入山許可証』が無ければ異界の糧になってしまうだろう。

 その様な場所を先ほどまで案内していた珠織は去ってしまい比良坂一人では無事に一人で外まで出られる気がせず紫里に頼み込む。


「いーですよー」


 そう言って高く跳び列車をタラップもなしに着地して跳び乗った。

 慌てて比良坂も車内に入る。


「では、ご案内しまーす」


 出発進行ーと言われ、比良坂は新車と言わんばかりの綺麗な車体で『忘れられた社』前から出発した。











「ここからはもう普通の山の中ですねー」


 暫くすると霧が晴れた場所に出られた。


「霊域外までの案内ありがとうございました、お礼に社までお送りしますね」


 比良坂は一息吐いてから霊峰神社の本殿鳥居前まで送る。


「ありがとうございますー」


「あ、あと比良坂さん、八つ当たりのお詫びと兼ねてこちらお渡ししますねー」


 そう言って目の前で空の瓶を取り出す。

 そしてくうに水を出して瓶に入れ、蓋を閉めた。

 そしてラベル代わりに御札を貼り付ける。

 無論、比良坂にとっては水も御札もかなりの危険物である。


「御札の殺傷力は私が正式に譲渡したモノなら大丈夫ですよー」


 さり気なく殺傷力とか紫里は口にした。


「そ、そうですか……あ……ありがとうございます」


 紫里はそう言って清水の入った小瓶を比良坂に渡した。先程まで自身を焼け爛れさせた代物なので比良坂は恐る恐る受け取る。

 清水自体は瓶に入っていて直接触っていないので爛れたりしないがうっかり車内で落として割ったら体の中から焼かれる痛みと戦う羽目になってしまう代物なのでビクビクしながら受け取る羽目になる。


「これは比良坂さんにとっては危険物でしょーでも使い方を変えれば何か見いだせるかもねー」


「この瓶自体は御札の効果もあってかなり丈夫だけどねー、まぁ、吹っ飛んで行かないように気をつけてねー」


「それに関してはそうですね……」


 貴方の拠点だと大惨事になってしまいかねないからー、とさらっと怖い事を紫里は言った。

 比良坂が拠点にする竪洲は死属性とでも言うべき怪異が多く存在する関係でこの水で凄惨な事件を引き起こせるだろう。


「またの御利用をお待ちしております」


 ありがとうございます、とお辞儀をして水の入った瓶を近くの窓に一度置いた。

 車内であれば車掌を勤める分体の比良坂が管理しなくても車体が意識して管理できるからだ。梃子でも動かせないようにも出来る。


「では、ありがとうございましたー」


 そう言って比良坂がタラップを出す前にドアから飛び降りる。

 少し離れた所に着地したあと手を振ってお見送りの体勢に入った。

 比良坂はドアを閉める。そして窓からお辞儀をしたあとに出発準備に取り掛かる。

 人間に余計に気付かれないように静かに比良坂は出発した。


「さテ、用は済んだナ」


 何故か珠織が居た。


「……貴方は何処から入ったのですか」


「ちゃんト壊さずにドアかラ入ったゾ」


 珠織は無表情な美女の顔をして人指し指でドアを指ししながら言った。


「確かにそうでしたね」


 流石に車体の事は分体の比良坂も関知している。

 なのでそういう意味での質問では無いのだが、片言の相手に対して今わざわざ長々と説明する理由も無いので適当に受け流した。


「置イてきた客車のトコロまで見送ってヤル」


 そう言って比良坂の側に立った。

 客車を置いてきた山の領域との境界あたりなら比良坂一人でも向かえるが、おそらく山の領域内で無駄なちょっかいを出されないように珠織なりに気を遣っているのだろう。


「追加の蝗ノ佃煮の分の働きダ」


「……紫里様から受け取ってたのは蝗の佃煮だったのですか」


 あの紫里が渡していたタッパーの中身は蝗の佃煮だったらしい。

 蜘蛛は獲物を溶かして汁を吸うことで捕食するが、珠織は女性の体を持つから、嗜好品として人の料理を楽しむことが出来るのだろう。

 結果、虫料理が好きになったと。

 比良坂は微妙な顔をした。


「肉モ好きだゾ」


 お前喰ウなら溶かしテ喰うか中身の存在ダケ喰うのカ? と比良坂を見ながら恐ろしい事を言っている。

 因みに蜘蛛が鳥を巣で捕まえて捕食した場合、最後に残るのはおおよそ羽毛ばかりである。

 比良坂は青褪めてたがポンポンと手加減して肩を叩かれる。


「安心しロ、その代わリきりキリ働イて貰ウ」


「ソレハ安心シマシタ」


 安心しロ、と至極真面目に珠織に言われ真顔になる。

 そもそも今捕食されたら先程迄のやり取りが全て無駄になってしまうのだから、

 知らぬ間に竪洲の上司達に半ば売られてたり霊峰に新たな仕事を寄越されたりと色々なことが起きすぎて車体がピカピカでも比良坂の頭は疲弊していた。

 比良坂は客車を置いてきた所まで辿り着き珠織と別れるまで真顔になっていた。

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