『とくとく』

ヒニヨル

『とくとく』

コップが倒れた

私の気持ちがいっぱい

なみなみと入っていた


時々あなたを見つめては

この胸に少しずつ注いでいたんだ


気がつくと目で追っていた

見つめすぎて

目が合いそうになった事もある


底の方から

一度湧き出すと

抑えられなくなっていた。


あの娘みたいに

隣に立てなくても

ただ、一度でもいいから

私を見つめて欲しくて

想いを伝えた


倒れたコップから

こぼれたものが

私の目からあふれ出た。


大丈夫

コップは割れていない


一滴残らず

ながれ落ちたら

私は前を向いていける


でも、今は

倒れたコップを起こせない。

いつもより速い鼓動と

涙が止まらないから。




     Fin.





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『とくとく』 ヒニヨル @hiniyoru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ