逃亡劇は高級車とともに

世の中に競う大会があるならぶっちぎりのクズ野郎は。よくある話ですが周囲世間にはイイ人イイ男と名が通っていた。


何せ、ルーズな女性関係が、何故か彼では無く彼に近寄るオンナに原因があり争いになる、みたいな暗黙の了解があって。

皆、彼に今一番近付いた女と過去の女がバトルするけど彼は悪く無い、たぶらかした女狐のせいと疑わない、彼の言葉を信じるらしいせいで。


彼、辻神章久は男仲間からは女を紹介してくれるから、また女の子達からは優しいからとモテて、次、次、と浮き名を流しながらもモテるから仕方ないみたいに、人気らしかった。


知り合いになった時点で味方だった同僚たちとの仲がギスギスし出し会う度助けるよとか、ふと近くよって、仕事の場で他人の前でプライベートの事聞いてきて、そして。


口説いてくるのを止めたくて、不快に嫌ってくれたらと、周りにいる女性たちとの関係、浮気性な事を知っているといえば。


「何せ、好きって貰って、と向こうが言うから愛してやったけど、合わなきゃ付き合いやめたらイイし、だいたい結婚してなきゃ自由、お互い自己責任、だろ?」

と。


なかなかだよねと、相談に乗ってくれる友人には愚痴ってみるものの、ハッキリ嫌と言うに、嫌がってるフリしてなんって空気読めねー人に対する対策が見当たらない。


そうこうして、避けようとながらも仕事関係、しかも、相手は私のクライアント。

担当替えしたら切ると上司を力で脅し、毎回彼を思う女性達の痛い視線と、嫌いな男からのキッツイ香水とタバコが混ざってひっどい匂い付きのナメクジみたいな、じめじめじっとりする視線。



で、女性達からは、あんなに思う彼に応えてやれだの、はたまた、近寄んな、離れてだの。

会社の男性たち、特に上司には助けて欲しいと頼むのに梨の礫、暖簾に腕押し。


「上手く流せよ、社会人だろ。

いっそ、行き遅れてんだからもらってもらったら?」


相談した相手、上司だとは言え相手間違えたよな。て言うか、この人こんな女性に偏見酷い中身だったか、に、幻滅。


数少ない同性の、未婚新卒採用できた子は彼が好きらしく、お金も仕事もある、顔いいして言い。

私に対抗意識をして、私の営業事務しているからと地味な嫌がらせ、書類隠し、書類間違い、仕事しない、話を無視、など。



なかなかにメンタルガリガリ削る人に囲まれていた事に、削られながら氣付いてみたら。


守る力が彼に勝る味方、そもそも味方が誰も、社内に居なかった。


だけど、だからすぐ仕事辞める?出来ない。

地獄のような場所、にだけは戻りたくない、頼りたくない、関わりたくない。



1人と、多摩に住む友人、しか。

しかも、友人とは距離も時間合わなくて月一、電話が出来る、かどうか。


それを、増やしてもらいながら仕事しながら、知人に声をかけ、転職先を探しながら。

でこれがまた。不味かったらしい。



会社も、仕事関係者も、男女も。

全て彼と、彼を取り巻く信者女子に漏れていて。で。


ある日話しかけて来た人に振り向き際に。

パシーンっと。ビンタ。

驚く間に反対側もバーンって。


これまたいい音。

痛いの前に固まる。


「彼から逃げるっていい度胸してんじゃない、ババア」


20代なりたてくらいの、これからクラブに同伴者連れて歩く、そんな夜の蝶。

全身ハイブランドで固めて、まつ毛爪先まで作り込んだ、女の子が、今なんて?


「付き合われちゃ困るけど、彼に対して酷いことするのも、許せないし。

だから、

彼が抱きたくない姿になって、しまえばさ、彼はあなたを追わない、私も安心。

で彼はもっと相応しい女を、そう、私をまた見つめてくれる、と思うのよ。



だから、ババア好きなコイツらの相手してやって。


その年なんだから簡単、実は彼を惚れさせるくらい慣れてるって感じなんじゃない?」




明らかに遊びまくって世を拗ねたそんな、ストリートファッションの男達が三人。


彼らの後ろには、ドアの開いたガラス黒塗りなワゴン車。


やばすぎ。




「あのー」


はい。

突然新しい車が、私達の間に割り込んで。

私を呼ぶ、サングラス男。

「あなたが坂本泉さんだよな、乗れ?」


手を引かれ入ると。扉しまり、男は運転席ににいる男性に、出せと一言。




あっけに取られ。

正気に戻ると今度は、社内ながら出来るだけ距離を取る。


まさか、ドラマでしか見ない運転手付きの高級車、に。初めて会う男と、見つめ合う。


いやいやいや、誰、誰、出してぇ

いや出たらまた捕まんぞ?


そう、今、逃げているのである。

逃がしてくれた人も正直味方なのか、襲う人なのかわからないから逃げたいが、だけど。


逃がしに来てくれたと言う。

だから乗っておけ。な。


俺はマガモイッペイ、はい、これお名刺な。

は、わ、私は、坂本泉、です。

名刺交換をし、誰かを知った、所が。

社名ない、フリーランス?自営業?

個人でしているらしい事務所の名前、見てもなんの仕事かわからず首を傾げる。


雇うさ。

これから、帰れないおまえに貸す住まいへ向かう、あんだーすたんー?






彼の呼んだ、彼の顧問弁護士を含め三人で相談。

仕事を辞める、住んでいたアパートを引き払う、私物回収する、幸い、月末。最終日。

今月分の給与とボーナス回収、など。



後は代わりに代行して下さるむしろ、自らしたら足がついてややこしいから会社に連絡するなと厳命され。


弁護士さんは帰る。


「ここは?」


「俺の事務所件住まい。

あの端っこを貸すからお前、住め。


ホテルは危ない、ばれる。

他に良い場所ありゃ良かったが、相手が相手だしな。部屋に風呂もついてる、服は悪いが貸せないから部屋の洗濯乾燥機で洗って着てくれ、あとは。」


インターホン。

『はい、白龍軒でーす』と。中華の出前。



「好きなのあるか?

選ばせてやる、食え。まずは、食え。

詳しい話はそれから、だ。

俺も聞いておきたい事がいくつかあるし、自分も知りたいだろ?色々。」

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