第3話 住人の作った酒

 そんな話をしながら宴会を楽しんでいると、あの市長が一人の老人を連れて入ってきた。


「皆さん、そろそろ夜も更けてきました。近くのホテルに部屋を取ってありますので今夜はそちらでお休みください。しかしその前に是非とも味見していただきたいものがございます」


  そう男が言うと老人が隊員達の前にグラスに入った透明の液体を配った。


「何でしょう、これは。見たところ酒のようですが」

  船長が代尋ねた。


「さよう、酒でございます。これは我々の持つ力を結集して苦労して作り上げた自慢の酒です。材料、製造工程全てにこだわっています。どうぞご賞味くださいませ」

  老人が丁寧に説明した。


「うむ、みんな、頂こう!」



  全員がその酒を呑んだ。そして一斉に声をあげた。


「美味い! こんな酒は初めてだ! 特に香りが素晴らしい」


「どうしてこんな美味い酒が作れるのですか?」

  みんな口々に訊いた。


「お口にあったようで、こちらも嬉しいです。しかし作り方を教えるわけにはいかんのです。このレシピも我々の大切な資産ですから」


  フッと老人は笑った。


(どうしても教えてくれないわけか、それでも構わない彼らはもうすぐ我々に征服される、そうすれば嫌でも作り方を吐くことになる)


  船長はそう思った。






  宴会も終わり、隊員達は取ってくれたホテルにむかおうとレストランの外に出た。


「あれ? こんな建物ありましたっけ?」


  酔ったせいであろうか、一番最初に外に出た一人が言った。


「おいおい、呑みすぎだろ。」


  そう言いながら船長は隊員全員を外に出るように促し、最後に出た。


「なんだ? これは」


  確かに景色が違って見えた。どうやらみんな同じことを考えているようだった。


  しばし理解に時間がかかったが、それは隊員達みんなに見覚えがあった。


 それは彼らのふるさとの星でよく見る、ミサイル発射基地であった。それも一つではない、無数の発射基地が隠すそぶりもなく、建っていた。


「これは…まさか、そんなはずはない。この星にはこのような軍事力はないはず…」


  船長は驚きでぼんやりと呟くしかできなかった。


「船長…あれ、さっきまでただの塔だったのに…あれは核ミサイル発射基地ではないでしょうか!」


  隊員達の声、顔が先ほどまで酒で赤く染まっていたが、恐怖が青く染め直した、それは船長も同じで、


「こんなバカな話があるわけない…あんな巨大な核ミサイル基地など我々の星にはないぞ!」

  と、声を震わせた。

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