第2話 観光
しかしそんな住人の様子を見て船長は、
(もしかすると、これは油断させるための奴らの作戦かもしれない、だがあの市長が言う通りに皆、長旅で疲れている。相手をよく観察するためにも、この提案は受け入れよう)
と考えた。
「ありがたい。では視察させてもらう」
彼は市長の男に愛想の良い笑顔で返した。
「ではこちらへ。この辺を案内しますよ」
すると市長も笑顔で返すのだった。
それからしばらくの間、市長の案内に身を任せ、隊員達は視察とは名ばかりの観光をして回った。
隊員達は市長と名乗る男に連れられ、街の中を見学した。いくつかの塔、綺麗に並び建った家々やアパート、畑を耕す農家、のれんを出してダシの良い匂いを漂わせる屋台の主人達、公園で遊びまわる子供達の姿、他多数の平穏な日常があった。
隊員達は彼ら人間たちが周りから彼らを見ていることに気づいた。
みんな物珍しそうに見てくるため、
(やはり他の惑星との交流がほとんど無いのだろう)
哀れに隊員達は思ったが、ジロジロ見られるのは少々恥ずかしかった。
「どうですか? 我々の文明は。なかなかのものでしょう?」
市長が歩きながら後ろを振り返り、船長に笑顔で尋ねた。
「えぇ、どれも興味深いものばかりですよ。」
そう船長は笑顔で返した。しかし内心は、
(彼らの文化は我々の文明よりもかなり低いものだ。こんなものは文明と言えるようなものではない、やはり私達の方が立派な文明を築いているのだ。)
そんなことを考えていた、どうやら後ろにいる隊員達も同じことを考えているようだった。
「まぁ皆さんのような方々から見ると退屈かもしれませんがね。しかし我々も日々努力をしているのです」
市長はまた笑顔でそう返し、
「それに最近では科学の分野にも力を注いでいるのです」
そう付け加えた。
「ほう。それは見てみたいものですね」
「是非とも後で体験していただきたいと思っております。続いては街の中心地へ参ります」
街の中の見学ツアーなるものはおよそ二時間くらいであっただろうか。
その後、隊員達はあるレストランの宴会場に通され、手厚いおもてなしをそこでも受けた。
「船長、この民族とても良いですね」
酒を呑み、顔を赤く染めた隊員が陽気な声で話した。
「おいおい、本来の目的を忘れるなよ」
言いながらも船長自身も浮かれながら言った。
「わかってますよ、彼らは穏やかで人懐っこい、おまけに他の星から来た者達に対しての警戒が全く無い。だから大丈夫ですよ、征服できるでしょうね」
笑いながら話す隊員に船長は、
「そうだな」
短く相槌程度に微笑みながら返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます