シコリ豚

 部屋を出たリリムは真っ直ぐにローション坂へ向かう。

 作戦はなかったが、その代わりに絶対の自信がリリムにはあった。


 ――サキュバスがエロでゴブリンに負けるはずがない。


 ローション坂の頂上から豚達を見下ろしたリリムは、自分の有能さをアルフレードに示す為、考え無しに声を張り上げた。


「豚さん達! ここは通しません!」


 際どい格好をする可憐な美少女の出現に、豚達はざわつく。


「か、可愛い……」

「でも、◯学生みたいな子があんな格好してるなんて大丈夫なのかよ?」


 多くの豚が動揺する中、豚界隈で一目置かれている豚が、腕を組んで他の豚達に話し始めた。


「確かに駄目だろうな……あれが、人間なら」


 豚達が再びざわつく。

 勘の良い豚は、今の一言で気付いたのだ。


「ロリはロリでも、あのロリは魔物」

「つまりは――合法ロリかっ!?」


 豚達は頷き合い、ギロリとリリムに視線を送る。

 そして、豚達の中でもロリ豚と呼ばれる者達が、目を血走らせながら、ゆっくりとローション坂に足を踏み入れた。


「ぷぷっ、そんな顔したって怖くありませんよぉ♡ どうせ、豚さん達じゃあリリを捕まえられないし」

 

 リリムは、その幼い見た目とは裏腹に妖艶に笑う。


「あ、そうだ♡ もし、リリを捕まえられたら、ここを通してあげる……それにリリの事、好きにしても良いよ?」


 リリムの笑みと挑発的な態度を見たロリ豚達は、我先にと坂を駆け上がる。

 

「ぶひひひひひっ!!」

「ぶひぃぃいいい!!」

「ぶひん、ぶひん!」

 

 リリムの誘惑に抗えず、次々とリリムに飛びかかる豚達。

 そんな豚達をリリムはひらりとかわしてあざ笑う。

 

「ざーこ、ざーこ♡ 豚さん達がリリを捕まえられるはずないじゃん」

 

 ローションに足元を取られる豚達に対し、リリムは羽を駆使して宙に浮く。

 ぎりぎりを演出しているが、捕まえる事は豚達には不可能だ。

 

「ああ、暑くなってきたなぁ♡」

 

 リリムはわざとらしく胸元を開け、パタパタと手で仰ぐ。


「ぶひぃぃぃん、ぶひぃぃぃん!!」

「ぶぶぶぶぶぶぶっ!!」

 

 リリムのその扇情的な仕草に理性を吹き飛ばされた豚達は、再度リリムに飛び掛かるが、やかりリリムはひらりとかわされる。

 

 そんな攻防が続いてしばらく――。

 体力の限界を迎えた豚が暴挙に出る。

 

「もう駄目ぶひぃ……こうなれば、せめて!」

 

 豚は膝に手をつき呼吸を整えた後、ずぼんとパンツを脱ぎ捨て、下半身を曝け出した。

 

「シコってやるぶひぃ!」

 

 周囲の豚達はシコリ豚の暴挙に動揺して固まる。

 だが、おっぱじめたシコリ豚の勇姿を見て、動揺していた豚達も覚悟を決めた。


「油断しているところにぶっかけてやるぶひ」

「見てもらうだけで十分ぶひ」


 目的は分かれたが、皆が皆、シコリ豚になった。

 その様子を見て、リリムは勝ち誇るかのように胸を張った。

 

「わぁ、いけないんだぁ♡ これで豚さんたちはアカウント削除だね♡」


 リリムの言葉にシコリ豚達は一斉に首を傾げる。

 確かにこんな姿を配信すれば、アカウントは削除されるだろう。

 そうなれば、配信者にとっては痛手だ。

 だが、豚達は配信者ではなく一般豚であり、そもそもアカウントを持ってすらいない。

 

「これで、ゴブ蔵君に一歩リード」

 

 リリムは作戦について詳しく知らなかったのだ。

 ダンジョンで痴態を晒させれば、侵入者達を排除できるのだと、簡単に考えていた。

 

「あはっ、あはははは♡」


 リリムは高らかに笑い、見ているであろうアルフレードに向けて拳を突き上げる。


 その姿を見てチャンスだと捉えた豚達は一斉にシコる。

 そして、ローション坂は白濁と汚れてしまった。

 

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