基本所得の街

第1話 新たな希望

朝の光が窓ガラスを通して部屋に満ち、ジュンは久しぶりに目覚めの良い朝を迎えていた。無職になってからというもの、彼の日々は不安と焦燥で覆われていたが、昨日のニュースがすべてを変えた。サンノソの町にベーシックインカムが導入されるというのだ。自宅のテーブルに広げられた新聞には、「全住民に月10万円支給」と大きく見出しが打たれている。

「これで少しは息ができるか…」

ジュンはほっと一息つきながら、これからの計画を練り始めた。新しい職を探すためのスキルアップや資格取得のために、このお金をどう使うか。彼にとって、これは単なる経済的支援以上のものだった。それは自立への一歩と、失われた自尊心を取り戻すチャンスでもあった。

一方、町の反対側でマユも新しい朝を迎えていた。彼女の夢は自分のカフェを開くこと。これまでの貯金だけでは資金が足りず、銀行からの融資も断られていたが、ベーシックインカムの導入がその障害を取り除くかもしれない。マユはカフェのメニュー案やインテリアのスケッチを広げ、新たな希望に胸を躍らせていた。

「これなら、もう少し具体的な計画が立てられるわね。」

しかし、町の中にはこの計画に懐疑的な声も上がっていた。町役場では、ベーシックインカムの導入について住民たちの意見を聞くためのフォーラムが開催された。住民たちは集まり、それぞれの意見を交わし始める。

「町の経済にどんな影響があるんだろう？」「本当に働く意欲がなくなるんじゃないの？」

ジュンとマユもこのフォーラムに参加していた。二人はそれぞれの夢に向かって前進するために、他の住民たちと共に、この新しい制度の意味を理解し、受け入れようとしていた。

この日、サンノソの町は新たなページを開いた。ベーシックインカムがもたらす変化は、希望に満ちたものであることを願いつつ、ジュンとマユはそれぞれの未来を切り開いていく準備を始めていた。