第4話  修正

AB「はい、どうも~リサイクルです」


A「僕、大阪の或る街で育ちましてね」


B「或る街って、なんやねん?」


A「少年時代をディープな街で過ごしたんですよ」


B「やっぱり、ディープなん?」


A「僕、歩くときは下を向く癖があるんですけどね」


B「あるなあ」


A「路上に、よく糞が落ちていたから下を見るようになったんです」


B「ペットの糞とかね」


A「いや、ホームレスの」


B「人糞かい」


A「人糞ですよ」


B「そんなにホームレスはおらんやろう」


A「それが、いるんですよ」


B「どのくらいおるねん?」


A「歩道にズラッと並んで寝ているくらいいますよ」


B「ほんまかいな」


A「僕、寝ているホームレスの頭を自転車でひいたことありますからね」


B「おい、おい、大丈夫かいな?」


A「“ごっつ痛いわ-!”って言ってました」


B「そら痛いやろ」


A「でも、謝ったら許してくれましたよ」


B「それで済んで良かったな」


A「自転車と言えば、僕らの住んでいた街ではよく自転車を盗まれたんですよ」


B「治安が悪いな」


A「トラックが来て、男たちが降りてきて、自転車を積めるだけ積んで去るんですよ」


B「夜に?」


A「いや、昼夜を問わず、年中無休でやって来ます」


B「コンビニか」


A「でも、一番腹が立ったのは、サドルだけ盗まれたときです」


B「サドル無かったら、ずっと立ちこぎやな」


A「仕方ないので、隣の自転車のサドルを装着して帰りました」


B「隣の人は、どないするねん」


A「また隣の自転車のサドルを使うでしょう」


B「悪循環やな」


A「冗談や。他人のサドルは盗らへんわ。立ち漕ぎで自転車屋まで行ったわ。ああ、それで、ホームレスの話ですよね」


B「話、戻るんかい。何のための寄り道やってん」


A「彼女と街を歩いていたらですね」


B「俺のことは無視かい」


A「道の真ん中でホームレスが大便していたりするんです」


B「おちおち歩道を歩かれへんな」


A「いやいや、車道でも」


B「マジで!? 危ないやんか」


A「いや、ゆっくりタバコ吸いながら大便していますよ」


B「すごいな」


A「すごいでしょ」


B「ホームレスの話だけで、結構しゃべれるもんやね」


A「まだ、ありますよ」


B「まだ、あるんかいな」


A「男性のホームレスと女性のホームレスが、路上でHしてることもあるんですよ」


B「マジ?」


A「ぼくが見たのは、男性が上、女性が上、そして後ろから、でした」


B「教育上、良くないな」


A「それからね」


B「まだあるん?」


A「僕ら、中学生の時にグランドで野球してたんですよ」


B「あれ? 話が変わった?」


A「そしたら真っ黒なベンツが止まって、中からパンチパーマのオッチャンと全身ヒョウ柄の女性が降りてきましてね」


B「ちょっと不穏な空気やな」


A「オッチャンが言ったんですよ、“儂にも1球打たせてくれや”、そして僕らの金属バットを持ってバッターボックスに立ったんですよ」


B「困った状況やな」


A「その時、グランドで寝ていたホームレスが起きてしまいまして」


B「寝てればいいのにな」


A「ヒョウ柄を見て言ったんですよ、“ブサイクやな~このオバハン”


B「あらら」


A「そしたらオッチャンがホームレスを金属バットで殴り始めて」


B「事件やないか」


A「ホームレス、みるみる血まみれ」


B「怖い怖い、ホームレスはどうなったん?」


A「“ごっつ痛いわ~”って言っていました」


B「そら、痛いやろ。もうええわ」


AB「どうも、ありがとうございました」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ノンフィクション漫才! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画