第2話  ホームレス。

AB「はい、どうも~」

A「僕、歩くとき、下を見ながら歩く癖があるんですけどね」

B「こいつ、下向いて歩くんですよ」

A「僕の育った街では、下を見ないとう〇こ踏んじゃうんですよ」

B「ああ、犬とか猫の」

A「ホームレスの」

B「人糞かい?」

A「人糞や」

B「そんなに沢山落ちてるんか?」

A「ごっつ落ちてるで」

B「ほな、お前の育った街では、みんな下を向いて歩くんかい?」

A「そんなわけないやろ、真っ直ぐ前を向いて歩く奴もおるわ」

B「なんや、まともな人間もおるやんか」

A「そういう奴は踏むねん」

B「踏むんかい」

A「ほんで夜になるやんか」

B「それが、どないしたんや」

A「商店街のシャッターがズラリと閉まっていくねん」

B「それがどないしてん」

A「ホームレスがズラリと並んで寝るねん」

B「えらい集まるなぁ」

A「めっちゃ集まるで。小学生の時、ホームレスの頭を自転車でひいたもん」

B「かなり痛そうやなぁ」

A「痛かったと思うで。一応、“すみません”って謝ったけどな」

B「ほんなら?」

A「気にすんな、早よ、行けって」

B「ホームレス優しいなぁ」

A「ほんで中学の時な」

B「話、変わるんかい」

A「みんなでグランドで野球しててん」

B「ほんなら?」

A「真っ黒なベンツが停まったんや」

B「あらあら」

A「ほんなら、パンチパーマのオジサマと全身ヒョウ柄のオバサマが降りて来たわ」

B「なんか、怖い話するつもりか?」

A「オジサマ、“兄ちゃん、俺にも1回打たせてくれや!”て」

B「ピッチャー、かわいそう!」

A「ほんならグランドの隅で寝てたホームレスが起き上がって」

B「なんでそこにおるねん、ホームレス」

A「ホームレスがオバサマを見て、“ブサイクやな-!”って」

B「アカンやん」

A「オジサマ、金属バットでホームレスをボコボコにしてたわ」

B「おいおい」

A「ホームレス、みるみる血まみれ」

B「事件やん」

A「いや、日常や」

B「ホームレスは?」

A「“大丈夫か?”って聞いたら“大丈夫や!”って」

B「逞しいな、ホームレス」

A「自転車のサドルを盗むしな」

B「アカンやん」

A「アカンけど、僕、何回か目撃したで」

B「サドル盗られたら、どうやって帰るねん?」

A「ずっと立ち漕ぎ」

B「ツライなぁ」

A「そのまま自転車屋に行くねん」

B「石を投げたらホームレスに当たるくらい、ホームレスが多いみたいに聞こえるわ」

A「石を投げたらホームレスに当たるで」

B「もう、ええわ」







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