第115話 捨てられ王子、フリーズする





 目を覚ますと、俺の隣にはローズマリーが眠っていた。



「ローズマリー? ローズマリー!?」


「んっ……なんだ、レイシェル? 騒がしいぞ」



 ローズマリーが眠たそうに目を擦りながら、俺の名前を呼ぶ。


 その声、眼差し、雰囲気……。


 俺が見間違えるはずがない。たしかに本物のローズマリーだった。



「やった!! ローズマリーの記憶が戻ったんだ!!」


「ん? 何の話だ、レイシェル。というか、そもそもここはどこだ?」



 ローズマリーが首を傾げている。


 自分が今どういう状況なのか理解が追いついてきないようだ。


 俺はローズマリーに事情を説明する――


 その瞬間、ローズマリーとは反対側の俺の隣で小さな何かがもぞもぞと動いた。



「んぅ、お兄ちゃん……?」


「え? ん? え?」


「えへへ、お兄ちゃん。昨日の夜、すっごく気持ちよかったね」



 俺は脳がフリーズした。


 隣にはたしかにローズマリーがいる。しかし、反対側の隣にはローズがいる。



「……レイシェル、その幼子は? まさか、その年端も行かぬ少女にまで手を出したのか? いや、お前ならやりかねないが……」


「再会早々酷い言われようだけど事実だから言い返せない!! って、そうじゃなくて!!」


「えへへ、お兄ちゃん♡」



 俺は困惑しながらも、隣の部屋でクーファやアデライトと共にコタツでぬくぬくしていたシストレアに詳しい説明を求めた。



「あ、ええと、多分、ですけど。『ローズ』っていう名前を付けちゃったから、かも、です。ふひ」


「え? な、名前を付けたから?」


「簡単に言えば、ローズマリーちゃんからローズちゃんが独立……い、いえ、この場合は複製、の方が正しいかも、です」


「よ、よく分かんない……」



 とにかく俺が『ローズ』っていう名前を与えてしまった結果、この現象が起こったってことか。


 ……これ、どうしよう?



「ねぇねぇ、よく分かんないけど、ローズはお兄ちゃんと一緒にいられるんだよね?」


「そこら辺はどうなんです?」


「ん、んーと、本当は冥界から連れ出すのは難しい、です、けど。レイシェル様のお願いなので何とかします、ふひ」



 シストレアが卑屈な笑みを浮かべながら言う。



「やったー!! ローズ、ずっとお兄ちゃんと一緒!!」


「お、おい、昔の私。少しレイシェルに馴れ馴れしすぎやしないか?」


「なんで? ローズはローズマリーお姉ちゃんなんだし、ローズがお兄ちゃんのお嫁さんになってもいいよね?」


「な!?」



 ローズマリーよりもローズの方が口が回るように思えるのは何故だろうか。


 でもローズとローズマリーの三人でエッチとか絶対にヤバイ。想像しただけでヤバイ。


 とか考えていたら、クーファが声をかけてきた。



「想い人と再会できてよかったですね、レイシェル殿。その、ところで……」


「ん?」


「わ、私もレイシェル殿と一緒に行ってもいいでしょうか? いえ、ローズマリー殿が駄目だと仰るなら諦めますが……」


「いや、構わん」



 ローズマリーがクーファに向かって言う。



「私がいない時、レイシェルを支えてくれたのだろう? いや、ローズはいたから正確には私がいないわけではなかったが……ううむ、ややこしい」


「あ、ありがとうございます、ローズマリー殿!!」



 クーファが嬉しそうに言う。


 と、そこで成り行きを見守っていたアデライトが満面の笑みを浮かべた。


 な、なんだ?



「あら、娘が沢山できたわね!!」


「……娘? レイシェル、あちらのご婦人は?」


「俺の母」


「む。そうだったのか」



 ローズマリーがアデライトの方を見て、一度俺の方に向き直る。


 そして、一拍遅れて。



「レ、レイシェルの母君だと!?」


「ええ、レイシェルの母です。ぴーすぴーす」


「こ、これは、ご挨拶が遅れてしまいました!! レイシェルの妻のローズマリーと申します!!」



 ローズマリーはアデライトに勢いよく頭を下げた。


 見事な九十度のお辞儀である。



「うふふ。堅苦しいのはナシよ、ローズマリーちゃん。うちの息子はどうかしら? 迷惑はかけてない?」


「い、いえ、迷惑など!! ……少し女癖の悪いところはありますが」


「そういうことろは嫌い?」


「……いえ。そういうところも含めてレイシェルだと思っていますので」



 ローズマリーが俺を見つめながら言う。



「私はこれからもレイシェルの側にいます。これからもどうか、よろしくお願いします」


「こちらこそ、うちの子をよろしくね」



 アデライトが手をパンと叩く。



「それじゃあ真面目な話はここまでにして、早く地上に戻りましょうか!!」


「母上。短い間でしたが、再びお会いできて嬉しかったです」


「あら、何を言っているの? 私も地上に行くわよ?」


「……え?」



 ちょっと何言ってるのか分からない。



「ええと、母上は亡者なのでは……?」


「そこはほら、シストレアにどうにかしてもらうわ!!」


「え? わ、わたし? いや、それは、いいけど、その、わ、私もレイシェル様と……」



 一緒に行きたい、とシストレアも主張したかったのだろう。


 しかし、アデライトが首を横に振った。



「あら、シストレアは駄目よ。ちゃんと冥界でのお仕事を終わらせるまでは」


「え? で、でも……」


「でもじゃないの。亡者の人たちが凄く困ってるんだから」


「ぅ、うぅ、わ、分かった……」



 しょんぼりするシストレア。


 ……たしかにアデライトの乱入で抱くタイミングを逃してしまったからなあ。


 シストレアにとっては生殺し状態だろう。


 彼女の冥界での仕事が終わり、また会うことができたらやらかしたい。



「レイシェル?」


「っ、な、何かな? ローズマリー」


「……いや、何でもない」



 こうして俺たちは冥界での冒険を終え、地上へと帰還するのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「ロリ&美女と同時にイチャイチャできる、最高よな」


レ「最高です」



「ローズはいなくなるわけじゃないのかw」「シストレアかわいそす」「作者の性癖を理解できる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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