第116話 捨てられ王子、地上へ帰還する





「――ということがあったんだ」


「……なるほど」



 無事に地上へと帰ってきた俺は、ことのあらましをアルカリオンに話していた。


 冥界でローズと出会い、おそらくはアルカリオンの元夫と出会い、中層でクーファとシたこと、下層で皆の制服姿とか色々……。


 そして、最下層で母親と再会したことも。


 ……シストレアとワンチャンありそうだったことは黙っておく。


 いやまあ、アルカリオンなら見抜きそうだけど。



「つまり――私の可愛い娘が増えたということですね」



 アルカリオンはローズがローズマリーの幼い頃の姿だとすぐに気付いた。


 その結果、抱っこしてめちゃくちゃナデナデしている。



「お母様、くすぐったいよぉ!!」


「ふむ、たしかに昔のローズマリーのようです」


「……むぅ」



 ローズマリーは昔の自分が撫でられている姿に嫉妬したのか、頬を膨らませている。


 すると、アルカリオンはローズマリーを手招きした。



「ローズマリー、こちらに」


「な、なんでしょう? 母上」


「いいからこちらに来てください」



 アルカリオンは近づいてきたローズマリーをギュッと抱き締めた。



「よくぞ帰ってきてくれました。私の愛しい娘」


「……ご心配を、おかけしました。礼ならレイシェルに……」


「無論、坊やにもたっぷりお礼をします。しかし、今はただローズマリー、貴女が私の元へ戻ってきてくれたことが堪らなく嬉しいのです」


「母上……私も、再びお会いできて嬉しいです」



 ええ話や……。



「いい話ねー」


「……ところで坊や、そちらの女性が?」


「あ、うん。俺の母上」


「レイシェルの母ですっ」


「……ふむ」



 アルカリオンがアデライトを見つめながら、しばらく何かを考え込む。


 そして、おもむろにアデライトの前に立った。


 身長が高いからか、アルカリオンが妙に威圧感を放っている。



「坊やの妻でもあり、ママでもアルカリオンです」


「あら、あらあら……」



 アルカリオンのママ宣言に微笑むアデライト。


 あれ? なんか急に部屋の気温が下がってきたような……。


 アデライトがアルカリオンを見上げながら一言。



「レイシェルったら、お嫁さんとそんなことまでしてるのねっ!!」



 母親に知られるのが一番キツい。


 いや、というかどうしてアルカリオンは急にママ宣言したんだ?



「それにしても嬉しいわ!! 私、娘も欲しかったの!! まさか街一つ分の女の子たちが娘になるとは思わなかったけど!!」



 そう言ってアデライトは背伸びして、アルカリオンの頭を撫でた。


 アルカリオンは無表情のまま、しばらくされるがまま。


 アデライトがナデナデを終えると、相変わらず無表情でアルカリオンは呟いた。



「ふむ、これが本当のママ味ですか。初めての感覚です」


「真面目な顔で言わないでください、母上」



 普段は俺を甘やかす側のアルカリオンが甘やかされる側に回ったことで理解が深まったらしい。

 後日、俺はアルカリオンにめちゃくちゃ甘やかされることになった。


 いや、その話は一旦置いておくとして……。



「アルカリオンの方は、俺たちがいない間どうだった?」



 アルカリオンは俺が冥界に行っている間、女神様の代行として活動し、宇宙人の侵略を防いでいた。


 少し疲れているように見えるのはそのせいだろう。



「……特にこれという報告はありませんが」


「それなら良かっ――」


「二回ほど帝国が襲撃を受けました」


「いや、あるじゃん!?」



 サラッと言うアルカリオンに俺は声を荒らげる。



「世界を守る結界を突破され、敵の小規模な軍隊が攻め込んできたのです」


「に、二回も?」


「いえ、結界が破られたのは一度ですが、侵入してきた敵が二回に分けて攻撃してきました」



 アルカリオンの話をまとめると。


 一度目の攻撃で帝国は甚大な被害を被ったらしいが、辛うじて撃退。

 イェローナが二度目の攻撃に備えて敵の使ってきた兵器を研究、解析したらしい。


 その結果、敵の技術の一部を吸収。


 新兵器を幾つか作って二度目の宇宙人の襲撃を返り討ちにしたそうだ。


 イェローナ、しゅごい。



「しかし、敵が世界間の結界を破ってまた来ないとも限りません。現在は兵器の開発を急がせています」


「……そっか」



 兵器の開発……。


 そう聞くとちょっと物騒な気もするが、自分たちの国を守るためなら仕方ない。


 それから俺たちは冥界での出来事、地上での出来事を事細かに喋り合った。


 終始ローズマリーとローズを抱き締めて話すアルカリオンはちょっと、いや、かなり可愛かった。











 問題が起こったのは、その日の夜。


 俺は帝城へと侵入してきた賊に捕まってしまうのであった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「短めですまん」


レ「ええんやで」


作者「あと次はキャラクターまとめを投稿します。『誰だっけ?』となったキャラがいた時にご覧ください」



「ええ話だなー」「アルカリオンかわいい」「正直キャラまとめ助かる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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