第113話 捨てられ王子、母親と再会する
「あら? もしかして……レイシェル?」
「は、はい、俺です。レイシェルです……」
アデライト・フォン・アガーラム。
この世界での俺の母であり、俺が生まれてすぐに亡くなってしまった人物。
直接会ったのは赤ん坊の時だけだったが……。
弱々しかった当初の面影はなく、活発で明るい雰囲気の女性だった。
スタイルは抜群でボンキュッボン。
おっぱいを強調するような胸元が大きく露出した黒のドレスをまとっており、大人の色気をムンムンに漂わせている。
あと単純に顔がいい。
最後に見た時よりも若いように見えるが、気のせいだろうか。
まさかここで再会するとは思わなかった。
いや、クーファから悪魔たちの城を破壊して下層に向かったと聞いていたが、本当に再会できるとは思わないじゃん?
「きゃー!! 大きくなったわねぇー!!」
「むがっ、は、母上!?」
「ビックリしたわ!! うちの子、かわいすぎっ♡ 天使っ♡ もう存在が尊い!!」
アデライトが嬉々として俺に抱き着いてきた。
大きくて柔らかいおっぱいに頭を包まれ、俺は窒息させられる。
体温が高いのか、おっぱいで窒息して苦しくはあるものの、妙に落ち着いてされるがままになってしまう。
まるでおっぱいに食べられしまったかのような錯覚に陥る。
ああ、なんか川が見えてきた……。
川の向こう岸で前世の祖父がこっちに来るなと叫ん……で……。
「はっ!? は、母上、苦しいですっ、息がっ、できませんっ!!」
「やんっ♡ もぉ、せっかく可愛い息子と会えたのに……まさか反抗期?」
「再会した息子が窒息死するところでしたよ!!」
「怒ってるレイシェルもかわいいっ♡」
どこか背筋がゾワッとする視線を感じながら、俺は大きく息を吸って心を落ち着かせる。
この際だ。正直に言おう。
俺はアデライトが自分の母親であるとあまり認識できていない。
当然だ。
アデライト俺が生まれてすぐ亡くなってしまい、母と子として接する時間が限りなくゼロに近かったからな。
俺にとってアデライトは、ただ血の繋がっているだけの他人だ。
だから、普通に女として見てしまう。
母親という認識ができるようになるまで、極力触れ合うのは避けたい。
そうしないと実の母親に欲情する変態だと思われてしまう。
「ところでレイシェルはシストレアと何をしていたの?」
「え? あ、いや、そのぉ……」
「い、いや、ほら、アレ!! 初対面だし、挨拶してたの!! あと生き返らせてほしい人がいるって話を!!」
言い淀む俺をフォローするように、シストレアが必死に誤魔化す。
まさかおっ始める寸前だったとは言えない。
「あら、それならよかったわ。気を付けてね、レイシェル。シストレアったらレイシェルの絵を部屋中に貼りまくって――」
「わー!! わー!! わー!! そ、そうだ、レイシェル様っ、他の二人のところに案内するから付いてきてください、ふひっ」
「ちょっとシストレア!! まだレイシェルはお母さんと話してる途中なのよ!!」
「むがっ!?」
必死に話題を逸らそうとした結果、アデライトは再び俺を抱き締めた。
でっかいおっぱいに再び食べられてしまう。
あ、やばい。愛刀が反応してアデライトの太ももに当たってしまった。
「あら? ……ちょ、な、何これ!?」
終わった。完全に変態扱いだ。
え? 今さらだろって? 失礼な。俺は変態ではない。
少し好きな女の子が人より多いだけだ。
そうして俺が一人で絶望していると、アデライトは思わぬ反応を見せた。
「ず、随分と大きいわね……。あのハゲの何倍もあるじゃない」
「え? ハゲって、父上のことですか?」
「あ、いえ、何でもないわよ、うふふふ」
たしかに父はハゲだったが、アデライトがハゲ呼ばわりするとは。
もしかして二人の仲って悪かったのか?
俺の抱いた疑問にアデライトは答えることなく、シストレアが手を叩くと瞬時に見知らぬ場所に移動してしまう。
そこにはクーファとローズの姿もあった。
「あ、お兄ちゃん!!」
「レイシェル殿!!」
「ふ、二人とも、待たせちゃってゴメン」
「いえ!! レイシェル殿がご無事で何よりです!!」
「お兄ちゃんも一緒にゲームしよ!!」
そう言ってローズが俺の腕を引き、テレビの前に座らせられる。
そこはやたらと現代的な部屋だった。
部屋の中心にはコタツがあり、手の届く範囲にテレビやエアコンのリモコン、漫画や雑誌、ゲーム機等が散乱している。
ローズやクーファと再会できたのが嬉しくて気付くのが遅れてしまったが……。
なんだ、ここは!?
驚いて辺りをキョロキョロしてあると、シストレアが説明してきた。
「ふひっ、こ、ここは、私がレイシェル様の頭の中を除いて再現した部屋、です。ふひっ、あのテレビで地上の様子とか見られます」
「す、すっげー。流石は女神……」
「あひっ、そ、そんな、そんな目で見られたらイッちゃう♡ ふひっ、いひひ」
その場でビクンと身体を震わせるシストレア。
くっ、あのムチムチな身体をあと一歩で好き放題できそうだったのに!!
「って、そうじゃない!! シストレア、お願いがある!! ローズマリーを生き返らせてくれ!! 後で例の条件も果たすと約束するから!!」
「あ、はい。も、もちろん、ふひ、です。でも、蘇生には二つ必要なものがありまして」
「なんだ? なんでも言ってくれ!!」
「ま、まずは肉体です。ローズマリーちゃんの身体って、まだ残ってます?」
俺は勢いよく頷いた。
ローズマリーの亡骸はアルカリオンが厳重に保管している。
損傷した部位も俺が治したので、かなり綺麗な状態で。
「じゃあ、えっと、ふひ、ふ、二つ目に必要なのが、ローズマリーちゃんの魂です」
「ロ、ローズマリーの魂?」
「あ、は、はい。魂を肉体に戻すことで生き返らせるので、ふひ、魂がないと無理です」
そ、そんな……。
あんなに広い冥界のどこかでローズマリーの魂を探すなんて、不可能に決まって――
「あ、そっちのローズちゃんが、ふひっ、ローズマリーちゃんの魂ですし、そこは大丈夫ですよ?」
「え? はあ!?」
「え、あ、あれ? 気付いてなかったんですか? ふひ」
「え、いや、ええ!?」
衝撃の事実。
シストレア曰く、ローズはなんとローズマリーの魂だったらしい。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「うん、知ってた。なんなら読者の中にもローズをローズマリーとして扱ってる人いた」
レ「ええ!?」
作者「あと最近、作者すらキャラを把握できていないので区切りのいいところでキャラまとめ書きます」
「ママン、エッ」「親子はダメ絶対!!」「ローズ=ローズマリーと最初から思ってた」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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