第109話 捨てられ王子、曲がり角で殴られる





 教室に入る。


 やはり学校の内装も前世で通っていた高校に酷似しており、むしろ違うところを探すのが難しい。



「ローズやクーファはいない、か」



 クラスメイトの顔をざっと見回すが、俺と一緒に下層へ入ったはずの二人の姿はどこを探してもなかった。


 もしかしてここにいるのは俺だけなのだろうか。


 一人だと不安だが、それはそれで二人がこの謎の世界に閉じ込められていない証明だ。


 きっと無事だと信じて行動するしかない。



「レイシェル、授業が始まるぞ」


「あ、う、うん」



 目の前のローズマリーはローズマリーではないと分かっているのに、言動も仕草も本人のものなので困惑する。


 いや、惑わされちゃダメだ。


 俺はここから脱出して冥界の最下層を目刺し、ローズマリーを生き返らせる。


 それまで絶対に誘惑には屈しない。


 学校らしく朝のホームルームを終え、一時間目の授業に突入する。


 ちなみに担任の教師はアイルインだった。


 完全に泥酔しており、呂律が回っていなくて廊下で吐いていた。

 あのアイルインも偽物だとは思うが、本物の再現度が高すぎてビビる。



「皆さん、注目してくださーい」



 そう言って教壇に立ったのはアルカリオンの最初の娘、ヴィオレッタだった。


 生徒ではなく教師のようで、いつものえぐいスリットの入ったシスター服は着ておらず、丈が異様に短いスカートを履いている。


 あまりにも短すぎてその下にある紐パンがチラ見えしている程だ。


 しかも胸元のボタンを緩めているのか、健全な男子であれば前屈みになること必須な格好になっている。


 えっちだ……。



「一限目の保健の実技は体育館で行います。すぐに着替えてくださいね」


「ん?」



 俺の聞き間違いだろうか。


 いや、でもたしかにヴィオレッタは保険の実技と言ったような気が……。


 と、考えていたその時だった。



「レイシェル、何をしているんだ。早く着替えないと授業に遅れてしまうぞ」


「え、あ、うん。分かっ――ローズマリー!?」


「ん? なんだ?」



 俺は目を疑った。


 ローズマリーが俺のいる目の前で制服を脱ぎ始めたのだ。


 否、ローズマリーだけではない。


 教室にいた生徒たち全員が男の俺がいることなどお構い無しで着替え始めた。


 何故だろう。


 ローズマリーの身体は何度も見ているが、生着替えを目の当たりにすると悪いことをしているような気分になる。


 ……ごくり。


 しばらく生唾を飲みながらローズマリーの着替えを見守っていると。



「そ、それは……」


「体操服だぞ? 他の何だと言うのだ」



 ローズマリーが着替えた体操服は、太ももを激しく露出していた。


 俗に言うブルマである。


 前世を含めても実物を見たことは一度もなかったが、ふむふむ。


 これは廃止になるのも頷けるな。


 だってシンプルにエッチだし、ローズマリーのような肉感的な美女が着たら魅力が天元突破してしまう。


 お陰で愛刀も元気100倍だ。



「まったく、お前という奴は。授業まで我慢できないのか?」


「え? 授業?」


「ほら、早くトイレに行くぞ」



 それから俺はローズマリーに軽く気持ちよくしてもらってから、体育館に向かう。


 体育館には学校中の美女たちの姿があった。


 今から全校集会でもするのかと思ったが、ステージ上にはヴィオレッタとアルカリオンが立っている。


 ここで俺は更に驚かされてしまった。


 アルカリオンとヴィオレッタは、ハイレグの角度がえぐいスク水を着用していたのだ。


 ヴィオレッタがマイクを片手に話し始める。



「それでは今から、理事長のお母様が直々に保健の実技――子作りの授業を行います♡」



 保健の実技!!


 やはり聞き間違いではなかった。というか保健の実技って。


 完全に思春期の男の子が一度は考える奴だ。


 というか子作りの授業って何!? いや、保険の実技らしいっちゃらしいけど!!


 俺は何が起こっているのか分からず、状況を飲み込めないでいたが、ヴィオレッタは待ってくれなかった。



「でもこの学校には男の子がレイくんしかいないので、授業を手伝ってもらいましょう♡」


「え!?」



 一斉に拍手が起こり、俺はステージの上に立たされてしまう。



「坊や、今朝ぶりですね。寂しかったですよ」


「え、あ、うん。俺も会いたかったけど、本当にやるの? この衆人環視の中で?」


「はい。授業なので」


「い、いや、流石に恥ずかし――むぐ!?」



 俺が何かを言う前に、アルカリオンがギュッと抱き締めてくる。


 ぷるぷるの水みたいなおっぱいに頭を包まれた。


 酸素の代わりにアルカリオンの谷間で生じた甘い匂いが肺から脳に行き渡る。



「坊やはこのように抱き締めると、すぐに抵抗が弱まります」



 そう言って俺を抱き締めたまま、本当に全校生徒が見てる前で授業を始めるアルカリオン。


 まずいと思って抵抗するが、無意味だった。



「どうやら私だけでは不満なようです。ヴィオレッタ」


「はい、お母様♡ レイくん、お姉ちゃんが沢山甘やかしてあげるわね♡」


「!?」



 前にはアルカリオンのおっぱい、後ろにはヴィオレッタのおっぱい。


 これは、逃げられない。


 それから俺は体育マットの上で、クラスメイトが見ている前でヴィオレッタとローズマリーに抱かれてしまった。


 いや、それで終わりではない。


 次々とクラスメイトの美少女美女たちにこってりと搾り取られてしまった。


 特にローズマリーは俺が搾られている様子に嫉妬したのか、誰よりも激しくしてきて気持ちよかった。


 そのまま一日が終わり、帰宅する。


 家に帰ったらまたローズマリーやアルカリオンとエッチしまくる生活だ。


 幸せな生活だった。



「もういっそ、このままここで暮らしても――」



 などと考えていた帰り道での出来事。


 俺は曲がり角から何者かが飛び出してきて、俺の頬をぶん殴った。



「へぶ!? な、だ、誰!?」


「――いいわけないだろ。クソヤリチンが」


「え? あ、ヘクトン!? なんで!?」



 いきなり俺を殴ってきたのは、女の子になっていた弟、ヘクトンだった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「保健の実技は全世界の男が一度は絶対に考えたことあると思っている」


レ「分かる。考えたことある人、怒らないから正直に言いなさい」



「ブルマとかスク水いいよね」「この手の術中にまんまと嵌まる主人公は中々いない」「……スッ(静かに手を上げる音)」と思った方は、感想、ブックマーク、☆評価、レビューをよろしくお願いします。

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