第88話 捨てられ王子、イチャラブデートする④





「うぅ、なんか頭が痛い……。あれ? ていうか俺、何してたんだっけ?」



 気が付いた時には日が暮れていた。


 頭がふわふわして気持ちよかったことは何となく覚えているが……。


 他には何も思い出せない。



「レイシェル、お前はもう酒を飲むな」


「ローズマリーもですよ。お酒で酔っ払い、冷静に対処できていませんでしたから」


「うっ。い、いや、私はレイシェルほどでは……」


「五十歩百歩、です」



 ローズマリーもあまりお酒には強くないらしい。


 俺が変なことしたら止めてって言ったのに止められなかったのはそれが理由か。



「すっかり遅くなってしまったが、この後はどうする?」


「うーん、時間的に今日中に見て回れるのはあと一ヶ所かな。他は明日に回そ」


「分かった」



 というわけで次に俺たちがやってきたのは、サキュバスたちが経営する牧場だった。


 飼っているのは牛や豚、馬のような一般的な動物を始め、アガードラムーンでしか育たないワイバーンだ。


 問題はサキュバスに動物たちの管理をするいろはがあるか否か。


 答えは、ある。


 サキュバスの主食は男の精であり、ハーレム街に住むことになった以上、彼女たちが食べるのは勿論俺の精だ。


 しかし、いくら俺一人でもサキュバスたち全員に毎日精を食べさせるのは……。


 不可能ではないが、半日かかる。


 サキュバスたち曰く「いくら絶倫でも連続して搾るとマンネリ化するし味が落ちる」とのこと。


 そこでサキュバスたちは俺の精に代わる、言わば代替食を自分たちで生産することを話し合って決めたのだ。


 サキュバスの代替食、それは動物の乳。


 動物の中でも牛の乳が一番栄養が得られる上、味も安定していて美味しいそうだ。


 というかそうでなきゃ、異大陸で暮らしていたサキュバスは男の数が圧倒的に少なくて絶滅していただろう。


 そういうわけで俺は彼女たちが牛を育てる片手間に他の動物も飼育してくれるようお願いした。


 ちょうどアガードラムーンに浮島が増えた関係でワイバーンの数を揃える必要もあり、こちらに関してはアルカリオンがお金を出してくれた。


 ワイバーンの生育は確実な国益に繋がるし、俺の私欲のために使うわけではないのでオッケーだ。



「もう!! 遅いわよ、レイシェル!! ずっと待ってたんだから!!」


「ごめんごめん、サキ」



 やってきた俺たちを迎えたのはクイーンサキュバスのサキだった。


 異大陸でサキュバスに捕まっていた時、俺に取り引きを持ちかけて、エロい気分になるお香で暴走した俺がそのまま堕としてしまった淫魔。


 見た目は少し幼いが、スタイルがいい。


 以前よりも胸が大きくなったように見えるのは俺の気のせいではないだろう。



「じゃ、早速行きましょ!!」


「え、行くってどこに?」


「ふふん♪ いいからいいから!!」



 俺はサキに腕を引かれ、辿り着いた先は――



「お、おおー!! 露天風呂だ!!」


「それだけじゃないわよ!! 今から私たちサキュバスが君のこと搾り尽くしちゃうんだから!!」



 そう、露天風呂。


 それもどこか日本を彷彿とさせる風流な木製デザインの風呂だ。


 お城にあるものとはまた違う雰囲気があった。


 空を見上げると満天の星空が広がり、アシュハラでも見なかった鹿威しが一定のリズムで胸に響く音を奏でる。


 俺は思わず目を瞬かせてしまう。



「どうしたんだ、この露天風呂?」


「ふふっ、少し前にナユちゃんに聞いたの!! 君はこういうのが好きだって!!」



 ナユちゃん……。ああ、那由多のことか。


 たしか前に露天風呂とか入ってみたいよねーとか喋ってたな。


 まさか覚えていたとは。



「えっとね、それで……」


「ん?」



 サキが俺にしなだれかかってきた。



「私たちぃ♡ お腹空いてるんだあ♡」


「……分かった。じゃあ全員、お尻こっちに向けて並んでくれる?」


「「「「はーい♡」」」」



 否、サキ以外のサキュバスたちもぞろぞろと俺に群がってきた。


 一人一人がハリウッド女優並みの美貌を誇るサキュバスたちが揃いもそろって俺に食欲と性欲の混じって肉食獣のごとき目で見つめてくる。


 そんな目で見られたら興奮するではないか。


 更には露天風呂のお湯には媚薬が入っていたみたいで歯止めが利かない事態に陥る始末。


 アルカリオンやローズマリーもサキュバスたちが俺を独占することが気に食わなかったのか、途中で参戦。


 俺はこってりと搾り取られてしまった。











 その翌日。


 サキュバスたちから熱烈なご奉仕を受けて目覚めた俺は、気持ちいい朝を迎えた。


 どうやらサキュバスは完全に俺の好みを把握しているようで、牧場の傍らに旅館のような建物があったのだ。


 食事も美味しく、露天風呂もある。


 控えめに言っても至れり尽くせりな最高の一晩だったね。



「たまには遊びに来てよね。私たち全員で歓迎するから♡」


「うん、また来るよ――って、んむ!?」


「ちゅ♡ れろっ♡ ちゅぱ♡ っぷはあ♡ 帰ってきてくれたら、もーっとエッチなちゅーしてあげる♡」



 サキの情熱的なキスで見送られ、継ぎの視察先に向かう。



「……むぅ」


「えーと、ローズマリー、怒ってる?」


「……別に怒ってはいない。ただ、その、この視察は一応デートも兼ねているのだぞ。もっと私に興奮してもいいと思うのだが」


「あ、ご、ごめん」



 そうだった。


 今は視察と銘打ってはいるが、これはローズマリーとアルカリオン、二人とのデートでもある。



「ローズマリーは寂しがり屋ですね。母がよしよししてあげましょう」


「うっ、こ、子供扱いはやめてください、母上」


「では代わりに坊やをぱふぱふしてあげましょう」


「喜んで!!」


「喜ぶな!! ええい、母上もレイシェルもふざけてないで次の視察先に急ぎますよ!!」


 

 ローズマリーが可愛い。


 アルカリオンもこちらを見て無言でサムズアップしているため、俺と同じことを思ったに違いない。


 さて、次にやってきたのは農園だ。


 運営しているのはミタマ率いる獣人たちで、その凄まじい身体能力でトラクターのように土を耕している。



「すっげー、クワだけなのに超速いスピードで畑が耕されてる」


「ご主人様に気に入ってもらえたようで朕は嬉しいぞ」



 着物を大きく着崩して谷間を見せつけながらそう言うのは九尾の美女、ミタマだ。


 相変わらずめちゃくちゃエッチな格好をしているが、今日はローズマリーたちとのデートに集中するので手は出さない。


 そのつもりでいたいのに、更なる試練が俺の方に走ってきた。



「レイシェル殿、おはようございます」


「おはようございます!!」



 キンコとギンコである。


 しかも普段の巫女服とは異なり、やたらと生地が薄くて二人の肌が透けて見える。


 エッ!!!!



「ふ、二人とも、その衣装は?」


「アシュハラに伝わる、巫女が豊穣を祈って秘密裏に行う儀式に使うものです。本来は殿方に見られてはならないものですが……愛を確かめ合った方は見られても大丈夫ですのでご安心を」


「ご安心を!!」


「そ、そっか。あー、二人とも、めっちゃ似合ってるぞ」



 正直、押し倒してこの場でエッチしたい。


 でも俺は今、ローズマリーとアルカリオンの二人とデートしているのだ。


 今は我慢。後日、また着てもらおう。うむ。



「お、おい!! お前!!」


「ん?」



 急に声をかけられて振り向くと、知っている獣人がいた。


 コジロウ少年……。


 いや、この島にいるということは、コジロウ少女だったのだろう。

 また決闘と言い出したりはしないと思うが、何やら俺に言いたいことがある様子。


 どうしたのだろうか。



「その、えっと、だな」


「ど、どうかしたのか? 顔色がよくないぞ?」


「う、うるさい!! ぼ、ぼくと交尾しろ!!」



 ……おっと。


 キンコとギンコに続いてボーイッシュガールからの思わぬ誘惑が来たぞ。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「自分のこと嫌ってる女の子がメス堕ちする光景でしか得られない栄養ってあるよね」


レ「三大栄養素の一つだね」



「お風呂でハーレムとか裏山」「ボーイッシュ女子が堕ちるとエッ」「その栄養は大事」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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