第86話 捨てられ王子、イチャラブデートする②




 始まりはアルカリオンの言葉だった。



「実は、日に日に大きくなるローズマリーのお腹を見ていると、ふと思うことがありまして」


「うん?」


「私も赤ん坊を抱っこして、街で買い物をするような普通の母親っぽいことをしてみたかったのです」


「うん」


「というわけで坊や、今から坊やは私の赤ちゃんです。言語は発さず、用がある時は泣くかママと呼ぶように」


「え?」



 どういうわけなのか、俺はこうして抱っこ紐でアルカリオンの身体に固定されてしまった。


 まるで幼子がくまのぬいぐるみを抱えるように、アルカリオンは俺を抱っこしてハーレム街を練り歩く。


 柔らかくて大きなおっぱいが後頭部に当たり、ふわふわで気持ちいい。


 いや、ちょっと待って!?



「は、恥ずかしすぎる!!」


「坊や、赤ちゃんは言葉を話してはなりませんよ」


「おぎゃー!!」



 抵抗しようと泣いてみるが、アルカリオンは頭を撫でたり、身体をポンポンしてきた。

 赤ちゃん扱いに加え、道行く女たちに見られて生じる快感。


 あ、新感覚……。ダメ、目覚めそう。



「母上、それは流石に……。レイシェルにも尊厳というものがあるのですよ」


「坊やの坊やは元気なようですし、問題ないのでは?」


「な、レイシェル!?」


「ばぶぅ」


「適応が早すぎる!! もう少し抵抗したらどうなのだ!!」



 そんなこと言われても。


 超長身の爆乳美女にママ呼びを強制されてオギャらない男はいないと思うのよ。


 すると、アルカリオンがローズマリーに一言。



「ふむ。たしかに強制はよくなかったかも知れませんね」


「っ、母上にも常識があったようで安心しました!!」


「一度ローズマリーが母のことをどう思っているのか話し合う必要がありそうですね」


「い、いえ、別に他意はありませんが」



 愛娘からの扱いに頬を膨らませながらも、若干しょんぼりしているアルカリオン。


 ローズマリーは申し訳なさそうに視線を逸らすが、露骨にホッとした様子を見せたことを俺は見逃さなかった。


 しかし、続くアルカリオンの一言で状況が一変してしまう事態に。



「では赤ちゃん坊やはローズマリーに抱っこさせてあげましょう」


「「え?」」


「母の『眼』を誤魔化そうとしても無駄ですよ。本当はローズマリーも坊やと赤ちゃんプレイしたがっていることなどお見通しです」


「なっ、ちが!! そ、そんなことありません!!」


「ローズマリー……」


「ほ、本当に違うのだ、レイシェル!! 私は断じてお前を赤ん坊扱いして興奮する変態では――」



 ローズマリーが必死に言い訳する。


 どう考えても客観的に見たらオギャってる俺の方が変態なわけだが……。


 いや、俺はチビだからギリセーフだろうか。


 どちらにしろ何故か慌てるローズマリーが可愛いので、彼女が落ち着くまではしばらく黙って見守ろうと思う。



「くっ、どうしてこうなった!?」


「まあまあ、ローズマリー。俺も赤ちゃんプレイに目覚めちゃったし、いずれ産まれてくる子のための練習と思って。……ばぶぅ」


「だから何故そうも適応が早いのだお前は!?」



 俺はアルカリオンからローズマリーに引き渡され、抱っこされた状態でおしゃぶりを咥えていた。


 ちなみに今度はお姫様抱っこである。


 最早そこに男としてのプライドなど無く、ただ赤ん坊として抱っこされるのみ。


 ローズマリーも最初は強引に俺を押し付けてきたアルカリオンに不満そうだったが、その口元が少しニヤニヤしていた。


 アルカリオンは正しかったらしい。


 間違いなくローズマリーもこの外出赤ちゃんプレイをエンジョイしている。



「ところで母上、我々はどこに向かっているのですか?」


「イチャラブデートと称してはいますが、実際は新しい首都の視察です。住まう人々の様子や建築状況の確認も兼ねているのです」



 アルカリオン、真面目なのか不真面目なのか分からないな。



「坊や。報告によるとラミアはお酒、アラクネは服、サキュバスは畜産、ダークエルフは金物や建築関係、獣人は農耕、鬼人は狩猟や採集をしているそうですね」


「あ、うん。各種族でできそうなもので衣食住を安定させようかなって――」


「坊やは今、赤ん坊ですよ」


「ばぶぅ、きゃっきゃ、おぎゃー!!」


「なるほど、流石は坊や。数多の種族の女性とまぐわってきただけありますね。今からその様子を見に行きます」


「……私はもう何もツッコミはしない」



 俺の言いたいことを言語として発さずとも理解できるアルカリオン。


 流石の一言である。


 と、そこで深く考えないようにしているローズマリーにアルカリオンが言った。



「ローズマリー、赤ん坊に無関心なのは感心しませんね」


「え? あの、母上?」


「先ほど坊やが言っていたように、これは貴女が母になった時のための練習でもあるのです」


「!? 本気で仰っているのですか!?」



 いや、流石に冗談でしょ。俺もさっきのは冗談で言っただけだし……。


 しかし、アルカリオンの目が真剣だった。



「さあ、ローズマリー。赤ちゃん坊やを徹底的に甘やかすのです。何かできたらとにかく褒め、何もできなくても褒め、悪いことをしても叱らない。躾など後でするものです」 



 ……ふむ。


 アルカリオンなりにローズマリーが母親になった時のための心構えを教えているのだろうか。


 だとしても手段よ。


 仮にも夫を赤ちゃん役にして赤ちゃんプレイで子育てを教えようとするのはどうかと思う。


 まあ、興奮するからいいけどね!!



「わ、分かり、ました」



 ここで素直なローズマリーの性格が出た。


 いずれ母親になるなら、今練習できる時にしておいた方がいいと判断したのだろう。


 そして、俺の頭を撫でながらあやしてくる。



「よしよし、いい子だな。ママにもっと甘えていいんだぞ?」


「っ」



 ローズマリーは普段の凛々しさとは違う、ベッドの上で見せる可愛らしさやエロさとも違う顔を見せてきた。


 なるほど、母親の顔という奴か。


 まだぎこちない笑みだが、正直ローズマリーにこの微笑みを向けられる娘か息子が羨ましいと思った。


 同時にローズマリーの女としての顔を俺が独占できているのだと思うと、めっちゃ興奮する。


 というかもう我慢できない。


 幸いにもこのハーレム街には俺の女だけが住まう街。

 道端でおっ始めても咎める者はおらず、俺は思わず暴走してしまった。


 これに関しては後でローズマリーにこっぴどく叱られたのでもうやらない。


 自分の女しかいない街というのは、俺の倫理観を著しく失くす危険な場所になってしまうのではないか……。


 そう思ったのだが、やはりハーレム街はすべての男の夢と言っても過言ではない。


 今さらハーレム街をナシとかできないのだ。


 というわけで俺は倫理観を損なわないよう、自分で気を付けようと誓うことにした。


 え? もうハーレムとかやってる時点で倫理観はないだろ、だって?

 ははは、ぐうの音も出ない正論は時に人を傷付けるということを知りたまえ。


 とまあ、道中でおっ始めてしまったが、俺はアルカリオンとローズマリーの三人でラミアたちの酒蔵へ視察に向かうのであった。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「冷静に読み返すと作者の頭がおかしいと分かる」


レ「自覚した?」


作者「更新速度を少し下げます。三日に一話投稿します」



「赤ちゃんプレイする主人公……」「ノリノリで草」「作者がおかしいのは分かってた」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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