第85話 捨てられ王子、イチャラブデートする①
ある日の出来事。
珍しいことにアルカリオンが普通にドアから入ってきた。
「坊や。今日は政務がお休みなのでイチャラブデートしましょう」
「は、母上。レイシェルにも都合があるのですから、いきなり押しかけてデートというのは……」
「あ、二人ともいらっしゃい」
ハーレム街の屋敷にやってきたアルカリオンは、開口一番にそう言った。
その後ろではローズマリーが溜め息を吐いている。
「俺は大丈夫だよ、ローズマリー」
「ほ、本当に大丈夫なのか? 最近は何やら忙しくしていると聞いたが」
「本当に全然平気だって。書類にサインしまくるだけだし。……二人に中々会えないのは寂しいけど」
俺がそう言うと、ローズマリーとアルカリオンはお互いの顔を見合わせた。
ローズマリーがくすっと微笑む。
「ふふ、そうだな。私も寂しかったぞ」
「たしかにローズマリーは、お腹の子に坊やが如何に愛しいかを話すほど寂しがっていましたね」
「む、は、母上!! そういうことは言わないでください!!」
そう言われて、俺はローズマリーのお腹を見た。
「お腹、少しずつ大きくなってるね……」
「ああ、お前の子だぞ」
俺はそっとローズマリーのお腹を撫でる。
流石にまだ蹴るほどではないが、今まで『完全再生』を使ってきたからだろうか。
ローズマリーのお腹に別の生命を感じられる。
「男の子か女の子、どっちかな?」
「気が早いぞ、レイシェル。……レイシェルはどちらがいい?」
「うーん。やっぱり男の子、いや、でも女の子に『大きくなったらパパのお嫁さんになる』的なことを言われてみたい」
「ははは、それは可愛いな」
「子供の性別が知りたいなら私が視て――」
「「やめて(ください)」」
アルカリオンがとんでもないネタバレを言いそうになったのでローズマリーと真顔で止める。
ちょっとしょんぼりしてしまったアルカリオン。
「あ、そうだ。母上、例の話を」
「……そうですね。坊や、少し相談というか、話しておきたいことがあります」
唐突にアルカリオンが襟を正したので、俺も真面目に耳を傾ける。
「私やローズマリーもこのハーレム街に移住しようと思っています」
「え、政務とか大丈夫なの?」
「その点はご心配なく。坊やと共にいられる時間と比べれば些事です」
「さ、些事って……」
そう言ってくれるのはとても嬉しいが、ちょっと不安だなあ。
と、俺が反応に困っているとアルカリオンは更に反応に困ることを言った。
「というより、この土地そのものを新たな城にしてしまおうと思っています。城都市、とでも言うべきでしょうか」
「ふぁ?」
「現在の城を撤去し、この地を新たな城とすることで
アルカリオンの計画では、首都上空に浮遊する居城をアガードラムーンの象徴にしたいというものだった。
「アガードラムーンが今までとは違うことを示し、ある種の信仰を集めさせます。程よい信仰は安寧をもたらしますから。二度と反乱を起こさぬよう、この地を神格化させるのです」
「い、いや、言いたいことは分かるけど。政務とか大変じゃない? 大臣に男の人だっているし」
「実を言うと、現在の国は私と宰相のオリガの二人で回しているので問題ありません」
「え!?」
どうやら先の反乱で大臣だった者たちの大半が反乱軍に与していたらしい。
お陰で宰相さんの負担が凄いとのこと。
「特に最近はオリガが怖いので、ここで才能ある若者を徴用するつもりです」
「それはいいけど……。宰相さん、そんなに荒れてるの?」
「婚期を逃したことが大きいのでしょう。彼女、まだ処女ですし」
宰相さん、あんな美人なのに処女だったのか。
「坊やに処女をもらってもらえばいいと言ったら本気で怒られました。彼女は誠実で料理のできる男性がいいそうです。あと高身長イケメンは絶対条件だとか」
「そ、そっか」
たしかに俺は沢山の女の子に手を出してるし、誠実ではないよなあ。
料理は簡単なものこそ作れるが、不得手だ。
俺は顔が整っているものの、高身長というにはもの足りない。
俺じゃダメだな、うむ。
「まあ、分かった。実は細かい景観作りとか種族間で話し合っても決まらなくて、最終的には『レイシェルが決めて!!』みたいになってて困ってたんだ」
具体案が何もなかったので助かった。
お城と都市が一体化した街とかカッコイイし、敷地内に森とか残せばアラクネやラミアも納得してくれるかも知れない。
でも、そこまで巨大な都市となると俺のお金では絶対に足りなくなるだろう。
「お金、どうしよう?」
「費用は国庫で賄いますよ」
「いや、それは……」
「……坊やは、税金を使うことに忌避感があるようですね」
「う、うん」
俺の心情を見抜いたアルカリオンが、宥めるように言う。
「問題ありません。じゃんじゃん使いましょう」
「え?」
「王は民の奴隷ではありません。民を想い、守ることは大切ですが、贅沢をしてはならない理由にはなりません」
「それは、そうかもしれないけど」
「無論、戦時中であれば贅沢はダメでしょう。でも今は戦時中でも何でもないですし、お金は使ってナンボのものです。――どうせ税金の使い途を民が知る由はありませんし」
「そ、そっか」
小さな声でボソッと為政者らしからぬことを言うアルカリオン。
うーむ、どうしたものか。
可能なら税金は使いたくなかったが、城都市を作るとなると大金が必要だ。
俺一人ではどうにもならない。
「よし!! 考えるのが面倒になってきた!!」
「では気分転換がてら、坊やの街でデートと洒落込みましょう」
「そうだな!!」
と、そこまで言って俺はハッとする、
「あ、しまった。ごめん、二人とも。今日大事な書類が届くんだけど、ラピはお休みで、キンコは別の用事でいないから誰かが家にいないといけなくて……」
「その未来はあらかじめ視ていたので把握しています。なので代理を用意しました、カモン」
「久しぶりの私ですわー!!」
「わっ、エリザ!? ちょ、窓から入ってきちゃダメでしょ!! ていうかどうしてここに!?」
まるで映画のワンシーンのように窓を突き破って入ってきたのは、エリザだった。
え? 誰だっけ、だって?
最近は忙しくて会えなかったからな。忘れている人も多いだろう。
エリザはアガーラム王国時代の俺の婚約者だ。
彼女はたしかアガードラムーン海軍の飛竜母艦でワイバーンを乗り回していたはず。
「どうしてエリザが?」
「国家浮遊計画に伴い、海軍は解体になりましたので――」
「私、本日付けでレイシェル様の統括警備責任者になりましたわ!! レイシェル様の平和を私が守りますの!!」
ほぇ!?
「ついでに私の侍女をお連れしましたわ。どうかレイシェル様のお屋敷で働かせてくださいまし」
「駄嬢様改め、エリザ様の侍女をしております。エフィリアと申します」
いつの間にか、エリザの背後に給仕服をまとった黒髪ポニーテールの女性が立っていた。
たしかエリザと一緒に亡命してきた人だな。
最近はあまり見なかったが、どこで何をしていたのだろうか。
「あとは姉上たちやオリヴィア殿もここに移住する予定だ」
「ほぇー、じゃあ皆で暮らせるわけか」
ハーレムエッチとかできるな。最高かよ。
「というわけで、留守はお任せします」
「レイシェル様、今度は私ともデートしてくださいまし!!」
「もちろん」
こうして俺はアルカリオンとローズマリーと三人でイチャラブデートすることになった。
一つ、問題があるとすれば。
「何この羞恥プレイは!?」
俺はどういうわけかアルカリオンに抱っこ紐で身体を固定され、その大きなおっぱいに後頭部を埋めている。
女たちの視線を一身に浴びるのだ。
あまりにも恥ずかしい格好に新たな扉を開きそうになったのは言うまでもない。
本当に何がどうしてこうなったのだろうか。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「でっかい美女に成人男性が抱っこされて外出するという特殊プレイに興奮する」
レ「お巡りさん、俺たちです」
「エリザが誰か分からんかった」「真面目な話から急展開だなあ(白目」「自主してて草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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