第83話 捨てられ王子、ハーレム街(予定地)に行く





 結局、鬼ヶ島にいたアイルイン(仮)やファルナの正体、行方は分からなかった。


 考えても分からないことは考えても仕方ない。


 というわけで俺は気を紛らわせるために、サリオンに乗って新たにアガードラムーンの国土となった島にやってきた。



「ここが俺のハーレム街を作る島か!!」


「ほほう、中々広いのじゃ」



 ここは元々アシュハラの領土だった島。


 しかし、アシュハラの領土と言っても人のいない無人島であり、小さな丘のような山と森が広がるばかりで未開の島だ。


 アシュハラはアガードラムーンに吸収されて、その島々の全てが浮島となる。


 今はまだ海底資源の採取が終わっていないから浮いていないが、アガードラムーンが再び浮遊する際に一緒に浮くらしい。


 イェローナが浮遊装置の増産と調整で大変そうだったな。


 資源を確保したら浮島を要塞化して本土防衛に利用する計画も同時に動いているそうだし、イェローナはしばらく忙しいだろう。


 で、俺がやってきたのは要塞化するには少し大きすぎる島のようだ。



「お待ちしておりました、レイシェル殿」


「あれ? キンコ?」



 島にやってきた俺を迎えたのは、アシュハラで俺の世話をしていたキンコだった。


 巫女服を見事に着こなし、文字が書かれている紙で顔を隠している少女などキンコとギンコしかいない。


 表情は見えないが、キンコは口元を緩めて恥じらいながら言った。



「はい。その、未熟な身ながら、レイシェル殿のお側にいたいと思いまして。ギンコ共々、移住を決意した次第です」



 この狐っ娘は可愛いなあ。


 どうやらキンコはハーレム街(予定地)を管理する一人に抜擢されたらしい。

 というか、キンコ以外に計算や書類仕事ができる者がいなかったとか。


 俺は島の事前情報こそもらっているが、実際に足を運んだのは今日が初。


 実際に目で見て確かめないと分からないこともあるため、キンコからハーレム街の現状について詳しい話を聞くことができたのは幸いだ。



「現在、ハーレム街には女性のダークエルフ、サキュバス、ラミア、アラクネ、元アシュハラ国民の女性獣人や一部の女性鬼人、あと学園の生徒さんたちが卒業後に移住予定です。それと有志の治安維持兵がいます」


「治安維持兵?」


「はい。やはり多数の種族が暮らす都合上、どうしても問題は起こるようで……。アラクネやラミアは森をそのままに、サキュバスやダークエルフは開発を進めたい、という具合で」


「あぁ、なるほど」



 アラクネやラミアは元々自然の中で生きていたからだろう。

 対するサキュバスは廃城跡地で暮らし、ダークエルフは技術者集団でもある。


 慣れている生活というものが互いにあるのだ。



「じゃあいっそ、区画分けするってのは?」


「区画分け……ふむ。たしかに広い土地ですし、その方がいいかもしれません。一度各種族の代表者で話し合うとしましょう」


「その時は俺も呼んでね」



 しばらく俺とキンコとサリオンの三人で森の中を歩いていると、いくつかの建物が見えてきた。


 まだ未開拓とは言え、人が生活する以上は仮設住宅の存在か必須。

 ダークエルフたちがちゃちゃっと作って、開拓のための足掛かりにしているらしい。


 キンコ曰く、俺のために建てた家もあるそうなので早速向かうことにした。


 その道中で俺に視線が集まる集まる。


 誰も彼も知っている顔ばかりで、肌を重ねたことのある女ばかりだった。



「……」


「レイシェル殿、如何なさいました?」


「いや、その、色々思い出しちゃって……」


「……ふふ、レイシェル殿は破廉恥ですね。サリオン殿、少々ここでお待ちください」


「む? 分かったのじゃ」


「レイシェル殿、どうぞこちらに」


「え? あ、うん」



 急に俺の腕を引くキンコ。


 色々思い出したせいで前傾姿勢になり、抵抗することも叶わず、俺は連れて行かれる。


 やってきたのは森の中だった。



「キンコ、ここは……?」


「ここは滅多に人が来ない『穴場』なのです。青空の下、森の中でというのも、きっと気持ちいいですよ?」


「な、なんてエッチな狐だ!!」


「エッチな狐は嫌いですか?」


「大好きです!!」



 俺はキンコの誘惑に屈した。


 澄み渡るような青い空の下で二人、清涼な空気に満ちた森の中で巫女さん狐をめちゃくちゃにしてしまう。


 それは開放的で背徳感のあるものだった。


 更にはキンコのもふもふな尻尾と耳を堪能しながらデキるため、最高の一言に尽きる。



「はあ、はあ、めっちゃ気持ちよかった」


「光栄でございます♡」



 俺はすっきりしたところで、本来の目的である家の方に戻った。



「何を、いや、ナニをしておったんじゃ、お主ら?」


「ご、ごめんごめん、サリオン。なんか盛り上がっちゃって」


「むぅ、儂という女が隣にいながら他の女を抱くとは。まあ、お主のそういうところも含めて気に入っておるんじゃがの。あとで儂のこともたっぷり可愛がってもらうのじゃ」



 放置していたサリオンの機嫌もすぐ直ったので、俺たちは今度こそ家に向かった。


 俺のために建てられたという家は想像していたよりもずっと大きく、屋敷と表現する方が正しいだろうか。


 この屋敷が凄かった。


 何というか、アシュハラの和な感じとアガードラムーンの洋な感じがいい感じに混じっている。


 俺は早速建物の中に入る。



「お、おお、中も凄いな」



 家具は一通り揃っているようで、お風呂やサウナまで付いていた。


 何より俺を驚かせたのは。



「おかえりなさいませ、旦那様」


「あれ、ラピちゃん?」


「はいっ」



 鬼ヶ島で捕まっていたプリズン友だち、兎人族のラピであった。

 以前見たバニースーツにフリルが沢山ついたメイド服風アレンジの衣装を身にまとっている。


 バニーメイド、素晴らしい。



「ラピ殿にはレイシェル殿のお世話をまかせることになりました」


「あ、そうなの?」


「はい。……本音を言えば私もお世話係りになりたかったのですが、他にやらねばならないこともあるので」


「そっか。ありがとう、キンコ」



 本当に可愛い狐である。



「じゃあ改めてよろしくね、ラピちゃん」


「よろしくお願いします、旦那様」



 こっちのバニーメイドも可愛いなあ。


 おっと、断じてラピをエロい目で見てるわけではないのだよ。


 大人になったら手を出すかも知れないが……。


 サリオンのような外見よりも年を重ねているならともかく、今は流石に幼すぎてダメだろう。


 流石に犯罪臭がする。


 ただ清楚さのあるメイド服と、エッなバニースーツが合わさったような、可愛さと妖艶さを両立した服装が素晴らしいと思っただけだ。


 ラピはあくまでも見守る対象というか、お兄ちゃんとか呼ばれたいところだな。


 と、思ったのだが。



「旦那様、あの」


「ん? どうし――!?」



 ラピが俺を見つめている。


 その瞳にはたしかな熱を帯びており、何度も見たことある目をしていた。


 俺が抱く直前の女たちと同じ顔だ。


 思わぬラピの表情に困惑していると、彼女は俺に抱きついてきた。


 そして、俺の胸に顔を埋めて大きく深呼吸する。



「すぅー、はぁー、いい匂い……」


「ラ、ラピちゃん? ど、どうしたんだ?」


「わ、分からないです。でも、旦那様を見た途端にお腹の奥がキュンってして、匂いを嗅いだらもったキュンキュンって」



 ラピ自身も自分の身体に何が起こっているのか分かっていないらしい。


 俺は助けを求めるようにキンコを見る。



「あぁ、おそらくは発情期でしょう」


「は、発情期?」


「獣人特有の現象です。個人差はありますが、十歳前後で異性の身体を求めるようになるのです。異性と言っても、好意を寄せている相手に限りますが」



 まさかの発情期とは。



「旦那様……私は、ラピは旦那様が好き、です。めちゃくちゃにして、ください♡」


「……ごくり。いや、流石にそれは……」


「ラピ、寂しいと死んじゃう♡ 旦那様、可愛がってください♡」



 いや、これは我慢とか無理だろ。


 俺はあまりにも可愛すぎる兎さんを前にして、暴走してしまうのであった。


 流石は兎、驚いたのはラピの絶倫具合だろう。


 ラピの体力が限界だろうと思って終わろうとすると、もっと物欲しそうな、寂しそうな顔をして俺を誘惑してくるのだ。


 こうして俺は、ハーレム街にやってきた初日をほぼラピと一つになったまま過ごすのであった。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「発情ロリバニーメイド、広まれ世界に」


レ「分かる」



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