第75話 捨てられ王子、ヤることヤって歴史を知る
俺は決闘に勝利し、七日七晩ミタマを独り占めする権利を得た。
なのでミタマの閨にやってきたわけだが……。
「そなたの持つ癒しの力。それは神から賜ったものかえ?」
何故かエロい雰囲気にはならなかった。
代わりに俺の『完全再生』について説明を求められたのだ。
これは答えてもいいのだろうか。
「ええと、そうですね。たしかに『完全再生』は女神様からもらったチート能力です」
「……そうか、やはりそなたは神の使徒であったか。これは、無礼なことをした」
「いやいや、そんな大それたものじゃないですし」
「否!! そういうわけには行かぬ!!」
ミタマの声が閨に響く。
「本来ならば、真っ先に朕の身体を捧げねばならぬところだったのう」
「……ん? え?」
「どうか七日七晩と言わず、飽きるまで朕を好きにしてたもう。もの足りなければキンコやギンコ、朕の民も好きにして構わぬ」
ちょ、え!? どういう展開!?
あまりにも突拍子の無いミタマの発言に俺は思わず硬直してしまう。
「ええと、どういうことなんです?」
「朕ら獣人は、かつての神の使徒が生み出した存在なのだ」
「神の使徒って、まさか転生者のことか? え、獣人って人造人間なの!?」
「『てんせーしゃ』や『じんぞーにんげん』が何かは分からんが、心当たりが?」
意外な真実!!
「朕らにとって、神の使徒は本来崇めるべき存在。まあ、今の獣人らは知らぬがな」
「忘れられちゃったのか?」
「うむ。自分たちが神の使徒と言えど、人間に作られし存在という事実が耐え難かったのであろう」
な、なるほど。
たしかに自分が誰かに作られたものだと知ったら少し怖いかも知れない。
「あれ? でもなんでミタマは知ってるんだ?」
「ああ、それはそう難しい話ではない。朕の一族、妖狐族は獣人の中で最も神の使徒への忠誠心や信仰心が強いのだ」
「忠誠心? 信仰心?」
「ふむ。朕にとってはこの世界を創った神よりも神らしい存在、と言えば伝わるかの?」
「え、えぇ、まじか」
もしや昔の神の使徒、つまりは俺の先輩転生者がそうなるように妖狐族を作ったってこと?
どういうチートだよ。
人種そのものを生み出す点でも凄いが、その特性まで設定できるとか。
「妖狐族は代々、神の使徒への忠誠や信仰、それらを記した巻き物を受け継いできた」
「その巻き物、ちょっと気になる!!」
「くふふ、あとでいくらでも見せてやろうとも。それは一旦置いておくとして」
「?」
その次の瞬間だった。
ミタマは真剣な面持ちでトンでもないことを言い始める。
「朕はもう下半身キュンキュンよ。目の前に創造主と同じ存在がいて、もう子宮が疼いておる」
「え? ちょ、ちょっと待って。たしかに俺もその神の使徒ってのかも知れないけど、獣人を作った人とは縁も所縁もないよ? 偶然、女神様に選ばれたってだけだし」
「くふふ」
俺がそう言うと、ミタマは妖艶に微笑む。
「偶然とは即ち運命。朕の子宮はもうそなたをご主人様と認めてしまったゆえ、もう諦めてたもう♡」
「ちょ!? まだ気になることが――」
「後でいくらでも話そうとも♡ 朕はもう堪えられん♡」
「わ、ちょ!?」
俺はミタマに押し倒されてしまった。
ふと思ったのは、先輩転生者はケモミミっ娘が大好きだったのかも知れないということだ。
特に狐っ娘ラブだったのかな。
じゃなきゃ妖狐族だけが忠誠心と信仰心が高い理由の説明がつかない。
あとキンコやギンコといい、色気をムンムンに放ちすぎている。
絶対に先輩転生者はエッチなことがしたくて獣人を生み出したに違いない。
心から尊敬しよう。
「はあ♡ はあ♡ ご主人様♡ どうか忠誠を誓わせてたもう♡ 朕のことは好きにしてくだされ♡」
こんな風に言われて断れるわけがないよね。
俺はもう全力で七日七晩、ミタマを抱きに抱きまくった。
食事を持ってきたキンコとギンコともめちゃくちゃエッチしてしまった。
ごちそうさまでした。
とまあ、ヤることヤった後。
「すっげー。アシュハラの歴史、面白いなあ」
「くふふ、ご主人様にそう言ってもらえて朕も嬉しい限りよのう。妖狐族が記録を残してきた甲斐もあったというものよ」
俺は休憩がてら、ミタマが所有しているアシュハラの歴史を記した巻物を読み漁っていた。
これが中々どうして面白い。
ただ、量がかなり多い。俺の先輩転生者は最低でも数千年以上昔の人物だったらしい。
そして、この人は色々と凄い人物だった。
どうも先輩転生者は俺と同じ日本の出身だったようだ。
故郷で咲いてた桜が見たくて、チート能力で作ってしまったらしい。
そう、アシュハラのシンボルと言っても過言ではない島の中央に生えている大樹。
あれは先輩転生者の作品だったようだ。
枯れず、折れず、腐らず、倒れず、成長し続ける木とのこと。
「記録を見た限りじゃ、もの作りに特化したチートだったのかな」
先輩転生者は獣人や桜モドキ、その他にも巻物に使われている紙など、色々と作っていたようだ。
どれも興味深くてつい読み耽ってしまう。
「それにしてもアシュハラの歴史、長すぎる……」
「これでも失伝してしまった記録の方が多いのですよ、レイシェル殿」
「多いのですよ!!」
追加で巻物を持ってきたキンコが苦笑いしながら、ギンコはニコニコ笑顔で言う。
本来なら巻物はもっと多かったそうだが、度重なる内戦で紛失してしまったものが圧倒的に多いそうだ。
全部あったらどれ程の量だったのか……。
ふむ、今度那由多が暇な時にアシュハラの歴史について『叡知』で調べてもらおうかな。
「ん? これは……?」
俺は山のような巻物の中から一際古い巻物を手に取った。
中を開いてみるが、その内容はアシュハラの歴史を記した記録とは少し違っていた。
何かの物語のようだ。
「それは記録というよりも、神話ですね。妖狐族が保有する中で最も古い巻物です」
「……文字が掠れてるが、何とか読め……読めないな。言葉そのものが古いのか? なんて書いてあるんだろ?」
「『始まりの白き神と終わりの黒き竜』、ですね」
「おお、なんか心をくすぐられるタイトルだね。挿し絵まであるし、小説みたいだ。っていうか読めるのか、キンコ」
「巫女の役割はこれらの記録を記憶しておくことですから。その神話は先代の巫女から教わった話なのです」
「なのです!!」
俺はギンコの狐耳と尻尾をもふもふしながら、巻物の内容をキンコから教わる。
「それは世界を創る神と、世界を壊す竜が愛し合うお話でして」
「なるほど、恋愛小説か」
挿し絵を見ると、どこかで会ったことがあるような雰囲気の女性が描かれている。
もしかして俺が転生する時に会った、デカ乳女神様だろうか。
神様って言われてもあのデカ乳女神様くらいしか心当たりないし。
あの時はおっぱいばかり見ていたせいで、顔を覚えていないんだよな……。
ただでさえ二十年以上前の記憶だし。
「ん? こっちの黒い竜もどっかで見たような……あっ」
ああ、竜化したサリオンに似てるのか。
サリオンもちょうど鱗が黒いし、重ねてしまったのかも知れない。
「……重ねちゃっただけ、だよな?」
「ご主人様よ、いかがした?」
「い、いや、何でもないよ、ミタマ」
俺は首を振って、巻物を読み漁るのであった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「先輩転生者は人体錬成してるから多分マッド。チート能力の名前は『真理の扉』だと思う」
レ「う、うん……」
「ケモミミ生み出したのは偉人」「サリオンの正体が気になる」「錬金術師……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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