第65話 捨てられ王子、敗北する



 サリオンが空からやってきた。


 全身から魔力を迸らせ、雷の如き速さで着地する様はどこかヒーローっぽくてカッコイイ。


 しかし、サリオンの表情は何故か固かった。


 どこぞの猫型ロボットのような呼び方をして機嫌を損ねてしまったのだろうか。


 と思ったら、どうも違うらしい。



「……お主、名はライムじゃったか。儂を騙す幻術を扱うとはどういうことなのじゃ?」



 どうやらサリオンは幻術を見せられて、偽物の俺に付いて行ったらしい。


 だから急にいなくなったのか。



「どう、とは?」


「儂は大昔から生きておる。まあ、長生きだからというわけではないがの、それだけ強いのじゃ。儂を出し抜けるのはアルカリオンかヴィオレッタ、あるいはアイルインくらいじゃろう。生まれて数ヶ月程度のスライムには出来ぬ」


「……なるほど」



 ライムはサリオンをまじまじと見つめながら、淡々と答える。



「答えは、愛」


「ほわ?」


「ライムが成長したのは一重に、マスターへの愛」


「……」



 サリオンがとても反応に困った様子で俺の方をちらっと見てきた。


 俺はライムの柔らかスライムおっぱいに包まれていて動けないんだから、そんな目で見られても困る。



「ライムのマスターへの愛を邪魔をするなら許さない」


「ほう? どう許さぬというのじゃ?」


「ライムの媚薬体液でぬるぬるにしてマスターのことしか考えられないようにする」


「……悪くないのじゃ」


「ちょ!?」



 サリオンが口からよだれを垂らしながら真剣な面持ちで頷いた。


 しかし、ハッとして首を横に振る。



「コホン。魅力的な内容じゃが、こちらにも都合というものがある。お主には諦めてもらうのじゃ」


「実力行使?」


「いや、儂は万が一でも負ける可能性がある相手とは戦わぬようにしておるのじゃ。舐めてかかって負けたしの」



 サリオンが俺を見ながらくすっと微笑む。


 もしかして俺と初めてダンジョンで会った時のことを言っているのだろうか。


 思い出すと懐かしい。


 俺を侮ってエッチ勝負を仕掛けてきたサリオンをガンガン責めまくって返り討ちにしたら好かれてしまったのだ。


 ライムがサリオンを警戒しながら問う。



「ならどうする? ライムはマスターとこの森で暮らす。邪魔は許さない」


「交渉なのじゃ。お主には儂らの軍門に降ってもらう。その代わりレイシェルのことは好きにしても構わぬのじゃ」


「ええ!?」


「……ふむ、一考の余地がある提案」



 サリオンの提案を聞いて頷くライム。



「……分かった。その提案に乗る」


「懸命な判断なのじゃ。じゃ、儂は二、三日したら迎えに来るとしようかの」


「え、本当に置いてくの!?」



 竜化したサリオンが空を飛び立とうとする。


 サリオンは俺の方を見てニヤリと笑い、何かを確信したように言った。



「ペットを調教するのは飼い主の役目なのじゃ。分からせてやるとよい」


「そ、それは、たしかに……」


「そうじゃのう、では三日でライムを調教したら儂がとっておきのご褒美をやるのじゃ」


「とっておきのご褒美?」



 俺は首を傾げる。


 すると、サリオンは一度竜化を解除し、魔力を練り上げて何らかの魔法を発動した。

 思わず目を覆いたくなるような眩い光がサリオンの小さな身体を包み込む。


 その光が収まると、そこには妖艶に微笑むグラマラスな美女が一人立っていた。


 艶のある長い黒髪を結い上げており、身体にぴっちりとフィットしたボンテージドレスが堪らなくエロい。


 肌の露出も多く、どことなく『女王様』という言葉が似合う格好だった。


 その顔立ちはアルカリオンによく似ている。


 もしアルカリオンが妖しく笑えば今のサリオンとそっくりなのではなかろうか。


 背丈もおっぱいの大きさもほぼ同じだ



「くっくっくっ、儂の本気フォームを見て声も出ぬようじゃな!!」


「サ、サリオン、その姿は……?」


「これは儂の本来の姿なのじゃ。ちと諸事情で幼児体型になっておるし、この姿も一時間と続かぬがの」



 し、知らなかった。まさかサリオンの本当の姿がグラマラスな美女だったとは。



「じゃあ、ご褒美っていうのは……」


「儂がこの姿でお主の子を孕んでやるのじゃ♡ ラブラブ子作りなのじゃ♡」



 俺は頭を悩ませる。


 グラマラスな大人サリオンとエッチしたくないわけがない。


 でもサリオンは幼女体型でこそサリオンだ。


 見た目が幼くても頼もしい雰囲気、というか実際に頼れて思慮深いところがサリオンの魅力的なところだろう。


 ……単純でポンコツなところも少々あるが、そこも含めてサリオンの愛らしいところ。


 グラマラスな大人姿で妖艶に微笑むサリオンとか、ただの魅力的なエロいお姉さんになってしまうではないか。


 最高すぎる。だからこそ悩ましいのだ。


 グラマラスなサリオンの身体に抱き着いて、大きなおっぱいに頭を埋めながらめちゃくちゃエッチしたい。


 でもロリっ娘サリオンを抱っこしながら子作りエッチというのは捨てがたい。


 いや、悩むのは後だ。



「サリオン、三日後に迎えに来て欲しい」



 グラマラスな大人サリオンと幼児体型なロリっ娘サリオン。


 どちらのサリオンと子作りエッチするにしても、まずはライムをしっかり躾けて改めて上下関係を分からせる必要がある。


 俺は覚悟を決めて頷いた。



「くっくっくっ、分かったのじゃ。ライムよ、そなたには同情するのじゃ。本気を出したレイシェルはベッドの上では無敵じゃぞ」



 サリオンはそう言い残して再び竜化し、大空へ飛び立っていった。

 森に残ったのは俺とライム、無数に分裂したライム軍団のみ。


 そして、俺はライムに宣戦布告する。



「ライム、俺はお前を甘やかしすぎてしまった。これを機に徹底的に分からせる。覚悟しろ」


「あっ♡ マスター、力強い♡ 好き♡」


「くっ、可愛いな……」



 厳しくバシバシしてイこうと思っていたが、ライムが女の顔を見せてきて決意が揺らぐ。


 いや、ダメだ。


 サリオンと子作りしたいのも理由ではあるが、このままライムを放置してはそのうち取り返しのつかないことになりそうだからな。


 ここはやはり厳しくライムを躾けて主としての威厳を見せつけねば。



「ん。マスター、可愛い♡ 好きなだけライムたちのおっぱいに甘えて♡」



 俺の手を自らのおっぱいに導いて積極的に誘惑してくるライム。


 分裂したライムたちも俺に群がってきた。


 まさに多勢に無勢。しかも分裂したライムたちはかつてないほどの強大な敵だった。


 ライムの分裂体はライム本体を司令塔とした群体なのだ。

 無数のライムがたった一つの本体の命令を忠実に実行する連携は侮れない。


 しかし、絶対に勝つ!!









「流石はマスター♡ たった三日で986体のライム分裂体がマスターの子を宿した♡ やはりマスターこそが神♡」


「う、あぅ……」



 負けた。負けてしまった。


 俺はスライムの増殖力というものを完全に舐めていた。

 一人を抱いてるうちに二人、三人と増えていくライムに勝てるわけがなかった。


 それはもうこってり搾り取られすぎて、手足を動かすことすら叶わない。


 にも関わらずライムは攻めの姿勢を崩さない。


 お腹が減ったり、喉が渇いたりしてもライムが身体の一部を食べさせてくるのだ。

 そこだけ聞くとホラーだが、ぷるぷるのゼリーみたいで美味しかった。


 栄養満点でゴールデンボールが空っぽになっても秒で強制充填。


 そして、また搾り取られてしまう。


 もうこのままでいいのではないだろうか。ライムの調教と、サリオンとの子作りを諦めようとしたその時。



「おい!! れいしぇるはトーカのご飯だぞ!!」



 聞き覚えのある声がした。


 俺が力なくそちらに振り向くと、そこには爆乳ロリがいた。


 アルカリオンの六番目の娘、トーカだった。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「主人公は敗北してこそ成長する」


レ「……思ってたのと違う……」



「サリオンのグラマラス化は許さん」「のじゃロリこそ至高」「これを敗北と呼んでいいのか?」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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