第51話 捨てられ王子、頼る相手を間違える





 ラミアたちの歓迎は熱烈だった。


 大人から子供まで美少女美女ばかりなのも最高だったが、誰も彼も例外なく積極的に迫ってきたのだ。


 ラミアの蛇の下半身で締め付けられながらこってり搾り取られるのは最高でした。


 特に子供のラミアたちは凄かった。


 幼いラミアたちは複数人で俺の手足を拘束し、それはもう容赦なかった。


 子供でも力が強くて振りほどけないし、幼い少女たちから言葉責めされて何かに目覚めそうだったのは内緒の話である。


 その翌日。


 俺は今後のことを話し合うため、アイルインに相談に乗ってもらっていた。



「国に帰る方法ねぇ~?」



 酒瓶を呷りながら考え込むアイルイン。


 本当なら素面状態のアイルインを頼りたいところだが、あまりお酒を抜きすぎても可哀想だからな。


 この大陸からの脱出方法を真面目に考えないならアルコールは速攻で分解するが、そうでないならそのままにすることにした。


 というかアルコールを抜こうとすると避けるようになってしまった。


 流石はローズマリーの姉。


 酔っぱらっていても素早い動きをしていたのには驚いた。



「船を作って海を渡るのは無理か?」


「うん、無理だね〜。海は何もないから少しの風でも荒れる。並みの船じゃ沈むのがオチかな~」


「じゃあ、大型船を作るとか?」


「それもおすすめはしない。リヴァイアサンのいる海域があるからね〜。その海域を迂回できる、つまりは超長距離を移動できる船が必要だ。その上で食料も積める船じゃないと海路は難しいかな~」



 俺の出した案は全て駄目だった。


 そもそも船を造るだけの知識と技術が俺たちには無い。

 ラミアにお願いしたら人手は確保できるかも知れないが、肝心な知識と技術が無いのだ。


 つまり、帰れない。


 そうなるとローズマリーやアルカリオンが反乱を早々に終わらせてくれることを祈るしか無いが……。


 それは何もしない理由にはならないだろう。



「うーん、せめて船に詳しい人がいたらなあ」


「ま、気楽に行こうよ〜。ママなら反乱ごときに負けないしさ~」


「……あの、レイシェル様」



 酒瓶を呷るアイルインを横目に見ながら頭を抱えていると、ラミアの女王ことミカエラが話しかけてきた。



「ん? どうしたの?」


「船を作る技術に詳しいかもしれない者を知っております」


「本当か!?」


「はい。ただ、その者はラミアではなく、ダークエルフでして」



 ダークエルフ。


 たしか西の方にある枯れた湖周辺に暮らしている連中だったな。



「かの者らはその昔、ドワーフと交流があり、大きな船を作って海に出ていたと聞きます。ダークエルフの協力があれば、立派な船を作れるかもしれません」


「おお!! じゃあダークエルフにお願いしに行ってみよう!!」


「……残念ながら、そこが問題なのです」


「え?」



 俺が首を傾げていると、ミカエラは困った様子で事情を話し始めた。



「ダークエルフに男性がいないことは知っていますか?」


「あー、ラミアのお姉さんから聞きました。男が生まれない種族だって」


「それは少し間違いなのです。実はダークエルフは、別に男性が生まれないわけではありません。その証拠に、我々は男性を含めたダークエルフと親交がありましたから」



 ダークエルフと親交があった?



「定期的にダークエルフの男性から子種をもらい、我々は滅亡せずに済んだのです。しかし、最近になってダークエルフの男性の全員が拐われてしまいました」


「道理でラミアたちの容姿が美しいわけだ。って、拐われた? 誰がそんなことを?」


「はい。北の旧魔王領に住み着いているサキュバスたちの仕業です」


「サキュバス!!」



 サキュバスと聞いたら世の中の男たちは期待してしまうだろう。


 ヴィオレッタもいくらかサキュバスの血を引いていると言っていたが、まさか本物のサキュバスに会えるとは。


 っと、興奮してる場合じゃない。



「男性ダークエルフは今、サキュバスたちの家畜として死ぬ寸前まで搾り取られているそうです。いえ、実際に亡くなっている方もいるとか」


「……ごくり」


「レイシェル君、今ダークエルフの男たちが羨ましいとか思った~?」


「ふぁ!? お、おおおお思ってないけど!?」



 くっ、アイルインめ。


 酔っぱらいのくせに俺の考えていることを読み取りやがって。



「……コホン。とにかく、残った女性のダークエルフたちは仲の良かったサキュバスたちに大人も子供も男性を奪われ、他種族に対して疑り深くなってしまって……」


「交渉は無理ってこと?」


「おそらくは。このままダークエルフの男性をサキュバスたちに独占されてしまうと、我々もいつかは子を為せず絶滅する……。協力はできると思うのですが、女性ダークエルフはすっかり他種族不信みたいでして」


「な、なるほどなあ」


「そう思っていた矢先にレイシェル様が現れたのです」



 あれ? もしかして俺、ラミアたちの未来を救っちゃった系かな?



「とはいえ、レイシェル様のお陰で皆が子を宿しても延命に過ぎません」


「まあ、そりゃそうだよね」



 たしかに俺の登場で奇跡的にラミアたちの絶滅までのタイムリミットは長くなった。


 しかし、それだけだ。


 百年も経てばまた同じ状況に陥ってしまうに違いない。



「どうにかしてダークエルフや南の暗闇の森に住まうアラクネとも協力し、サキュバスから男性ダークエルフを取り戻したいのですが……」



 その協力が上手くいかないらしい。


 しかもこの問題、一概に男を独占しているサキュバスたちが悪いとは言えないそうだ。


 サキュバスにとって男の精は食料でもある。


 子孫を残せなくてゆっくりと絶滅してしまうラミアやアラクネとは違い、食糧難による絶滅が一番近いのだ。


 難しい問題だな……。


 と、俺とミカエラが難しい顔をしていると、不意にアイルインが満面の笑みで言った。



「あ、じゃあ私に名案があるよ~」


「……一応、聞くだけ聞こう。大丈夫なやつだよね?」


「もちろん!! お姉さんを信用して~」



 まあ、アイルインは頼れる人だ。


 自信はあるみたいだし、ここは素直にアイルインに任せてみても良いかも知れない。











 そう思った俺が馬鹿だった。



「アイルイン、これは?」


「牢屋だよ〜。木製だから脆いけど、君じゃ壊せないくらいには頑丈でしょ~?」



 俺は狭い木製の牢屋の中に押し込められていた。


 牢屋は正方形で、幾つかの車輪が取り付けられている。


 気分はどこかへ運ばれている珍獣だ。



「なんで俺は牢屋の中に入れられてるんだ?」


「今から君をサキュバスたちに売りに行くんだよ~」



 駄目だった。本当に。


 やっぱり頼れるのはアルコールを抜いた状態のアイルインだった。


 アルコール接種済みのアイルインは信用しちゃいけない女だった。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「次回!! サキュバス!! デュエルスタンバイ!!」


レ「……」



「売られそうで草」「さすがアイルインさん笑」「城◯内クン!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。




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