第50話 捨てられ王子、歓迎される
「アイルイン、どうしてここに?」
ラミアの集落に到着したと思ったら、何故かアイルインがいた。
相変わらずお酒臭い。
アイルインは俺の問いに酔っぱらい特有にニヤニヤ笑いを浮かべながら答える。
「さあ? なんでだろうね~? 知りたい? お姉さんがここにいる理由、知りたい~? もぉ、仕方ないな~。あ、でもやっぱ内緒~」
答える気は無さそうだった。俺をからかっているらしい。
そっちがその気ならこちらにも考えがある。
俺はアイルインに無言で近づいて、体内に溜まっている毒素――アルコールを『完全再生』で分解してやった。
すると、アイルインから酒臭さが消え、ニヤニヤした笑みが消える。
途端に静かになったアイルイン。
胡座をかいて座るのを止め、俺の方に改めて向き直り、正座した。
「あ、あの、なんかすみません」
開口一番、取り敢えず謝罪するアイルイン。
その様子を見たラミアの女王と思わしき女性、アイルインがミカエラと呼んだ人物は目を見開いてギョッとしていた。
素面のアイルインを見るのは初めてだったのだろうか。
「で、どうしてここに?」
「ええと、その……」
素面になったアイルインは、俺と視線を合わせないように地面の斜め下を見ながら、今度は丁寧に話し始めた。
それを聞いて、俺は少し落胆する。
どうやらアイルインは俺を探しにここにいたわけではないらしい。
まあ、時間的にそうだよな。
俺がこの大陸に飛ばされてからまだ数時間と経っていない。
その短い時間で俺の居場所を特定、移動してきたなら凄いことだ。
では何故アイルインがここにいたのか……。
「世界中の珍しいお酒を飲むために借金したら、返せなくなって踏み倒そうと暴れ、お酒を差し出されて酔い潰れるまで飲んだら捕まった、と」
「……はい。で、そのまま借金を返すためにギガントマグロ漁船に乗せられて、リヴァイアサンに襲われて沈没して……」
そのままこの大陸の海辺に漂着した、と。
なんというか、事の発端が発端だけに同情はできないが、色々と大変だったみたいだな。
自業自得なので同情はしないが。
それは一旦置いといて、俺はこちら側の事情についても話す。
アイルインは静かに俺の話を聞いていた。
「で、だ。この大陸から出る方法を知ってたりはしないってことか?」
「あ、はい。私一人ならやりようはありますけど、三人はちょっと……。でもそちらの事情を聞いた限りじゃ、お母さんがすぐ迎えに来ると思うので待ってたら良いのでは?」
「それがそうも行かなくてだな……」
「?」
俺はヘクの存在についても話した。
ヘクが近くにいる限り、アルカリオンは俺を探知できない。
その旨をアイルインに話すと、彼女は難しそうに唸った。
「ならそのヘクって子を始末すれば……」
「うーん、それは無理かな。なんか放っておけない感じがしてさ」
「……いや、それが良いかも?」
「ん? なんで?」
「あ、いや、別に確信があるわけじゃなくて」
アイルインは違和感を感じ取ったのか、矛盾を指摘する。
「そのヘクって子が転移に巻き込まれちゃったのは偶然、というか事故だったんだよね? ってことは、本来この場にはいない。かと言ってレイシェル君一人だったらお母さんが感知できる……。あ、いや、それが狙いだったのかな」
「? えーと、どういうことだ?」
「つまり、その、なんて言うのかな。反乱を引き起こした黒幕さんの目的はレイシェル君をこの大陸に飛ばして殺すことじゃなくて、お母さんを一時的に帝都から離すのが目的、みたいな」
アイルインにそこまで言われて、俺は思わずハッとする。
な、なるほど。
その間にアルカリオンという最高戦力がいなくなった帝都を陥落させるつもりなのか。
あれ? でも……。
「じゃあ、俺の居場所をアルカリオンが感知できないってことは……」
「うん。普通に黒幕さんの思惑は失敗だね」
……まじか。偶然が重なるって恐ろしいな。いや、それよりも恐ろしいのが……。
「やっぱり酔っぱらってなかったらアイルインって有能なんだな……」
「う゛っ、そ、その、なんかすみません」
「いや、褒めてるから」
アイルインは素面になると真面目というか、有能な一面が出てくる。
酔っぱらってる時は俺をワイバーンの上から突き落としたりするから油断ならない。
しかし、この状態のアイルインは何故か頼れる。
やはり長女が自由奔放な分、次女としてしっかりしているのかも知れない。
「あの、アイルイン様。そろそろよろしいでしょうか?」
「「あっ」」
と、そこで申し訳なさそうに会話に入ってきたのはラミアの女王、ミカエラだった。
「お話から察するに、そちらの少年はアイルイン様のお知り合いなのですよね?」
「お知り合いっていうか、義弟かな」
「そして、義父でもあります」
「え? 義弟で義父……?」
ミカエラが首を傾げる。
でもまあ、アルカリオンとローズマリーの二人と結婚してる以上、関係性としては間違いではないからな。
ヴィオレッタも妻として娶ったら義兄にもなるわけだし、物凄く複雑な家庭になりそうだ。
「あー、えっと、その、まあ、そんな感じです」
アイルインはミカエラに説明するのを放棄した。
そして、その空気に耐えられなかったのか、無言で近くに転がっていた酒樽を片手で持ち上げ、中身を呷った。
「んぐ、むぐっ、ぷはあっ!! あー、やっぱお酒入ってないと上手く喋れないな~」
お酒を飲んでない方が頼りになるけど、本人は無理っぽいので止めはしない。
俺は改めてミカエラの方に向き直る。
「はじめまして、俺はレイシェルです」
「わ、私はこの集落の女王、クィーンラミアのミカエラと申します。……レイシェル様、アイルイン様の義父ということは、貴方の妻の名は……」
「あ、はい。妻の名前はアルカリオンって言います。他にも何人か俺の妻がいますけど」
アルカリオンの名前を聞いた途端、ミカエラは襟を正し、お辞儀してきた。
「こ、これはこれは。真なる竜の番の方だとは露知らず……。集落の者が無礼を働きませんでしたか?」
「全然大丈夫ですよ。それより、その……」
俺はごくりと生唾を飲み、ミカエラの身体を見つめる。
改めて見ると凄い身体だ。
上半身はおっぱいが大きくて腰が括れている絶世の美女で、下半身は十数メートルはあろうかという長い蛇の身体。
抱き心地がどんなものなのか、とても気になる。
「さっきラミアのお姉さんたちから、ラミアは女しか生まれないから他種族のオスを拐って子供を作るって聞いたんですけど……」
「あ、あの子たちはまったく……。も、申し訳ありません。真なる竜の番様にそのような無礼をすふつもりは――」
「いえ、むしろ協力させてもらっても?」
「え? 今、なんと?」
「むしろ協力させてもらっても?」
俺の提案に目を剥くミカエラ。
後でアイルインから聞いたことだが、ラミアにとってアルカリオンは神のような存在らしい。
その神の番から子種を貰うのだ。
ミカエラは困惑しながらも、歓喜しているようだった。
それから始まったのは、俺の歓迎の宴。
ラミアの大人から子供まで、揃いも揃って美少女美女ばかりで、全員が積極的に俺を誘惑してくるのだ。
我慢などできるはずもなく、俺は蛇の下半身に身体を拘束されながらめちゃくちゃ搾り取られた。
ラミアって最高っすわ。
ちなみに泥酔して眠ってしまったアイルインにエッチな悪戯をしたのは言うまでもない。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「最近、何となく蛇が交尾する動画を見て少し興奮した」
レ「末期だ……」
「素面アイルイン好き」「ラミアっ娘好き」「もうダメだよこの作者」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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