第49話 捨てられ王子、ラミアの集落に行く




 上半身が人間、下半身が蛇。


 いわゆるラミアは、地球だと有名な怪物として知られている。


 しかし、こちらの世界にはいなかった。


 いないと思っていた。でも実際はどうか。俺はそのラミアたちに囲まれている。


 しかも一人一人が美女である。


 ただ、ラミアのお姉さんたちはあまり友好的な雰囲気ではなかった。

 皆が槍を構えており、獲物を前にした狩人のようなギラギラした目でこちらを見ている。



「ひっ、な、なんだよ、こいつら!!」



 ヘクがラミアを見て震えている。


 まあ、この世界は色々なコンテンツでラミアが知られている地球とは違う。

 初めてラミアを見た者にとって、彼女らは異形の怪物そのものだ。


 そんなヘクに対し、ラミアのお姉さんたちは俺に向けたものとは種類の違う視線を向けた。


 殺気、あるいは殺意だ。



「ひっ」


「メスは要らないわ。殺しましょう」



 ヘクがビクッと身体を震わせて、短い悲鳴を上げる。



「あ、そっちのオスは安心しなさい」


「そうそう。大人しくしていたら嫌な思いはさせないわよ」


「むしろたくさん気持ち良くして、あ♡ げ♡ る♡」



 豊満な身体を見せつけながら、誘惑するように言うラミアのお姉さんたち。


 俺はラミアのお姉さんたちの言葉に対し――



「――はい!!」



 満面の笑みで頷いた。


 すると、ヘクがギョッとした表情で俺を睨みつけてきた。



「お、おい!! ふざけんなよ!! 僕と協力するんじゃなかったのか!!」


「いやあ、あんなエッチなお姉さんたちに誘われたら断れないし……」


「こ、この糞野郎!! やっぱりお前なんか嫌いだ!!」



 ヘクの苛立ちが限界に達したのか、俺に掴みかかってきた。


 そして、拳を振り上げるが……。


 それを見たラミアのお姉さんたちに殺気を向けられて振り上げた拳をゆっくりと下ろす。


 俺を拳で思いっきりぶん殴りたいけど、ラミアのお姉さんたちの視線が怖くて何もできないみたいだ。


 もう、仕方ないなあ。



「あのー、ラミアのお姉さん!! こっちの子は俺の妹なんです!! 俺は大人しくするので、こっちの子も丁重に扱ってくれませんかー!?」


「「「「「……」」」」」



 俺の言葉でラミアのお姉さんたちは視線を交差させ、小声で会話し始めた。

 距離があるため、会話内容までは聞こえなかったが……。



「分かったわ。そっちのメスも大人しくするなら、安全は保証してあげる」


「その代わり、君は私たちの集落で一生お世話するから」


「ふふ、楽しみだわあ!! 久しぶりのオス、一滴残らず搾り取っちゃうんだから!!」


「ちょっと!! まずは女王様が最初よ!!」


「それに貴方の後はすっからかんになっちゃうから駄目」



 こうして俺とヘクはラミアのお姉さんたちに捕らわれてしまい、彼女らの言う集落へ連行されることになった。


 その道中、俺はラミアのお姉さんたちと仲良くなって集落の事情を聞く。



「ほぇー、ラミアって男が生まれないんですね」


「そうなの。だから他種族のオスを拐って沢山子作りするのよ。でもこの辺りにいる奴らは男が生まれないから、極々稀にオスが手に入ったら種族間で争いが勃発するわね」


「他にも女の人しか生まれない種族が?」


「ええ、この辺りには四つの部族がいるわ。東の荒れ地を牛耳る私たちラミア、西の枯れた湖で活動するダークエルフ、北の旧魔王領を住み処とするサキュバス、南の暗闇の森に巣くうアラクネ……。他にもいるけど、有名なところはその四つね」



 ラミア、ダークエルフ、サキュバス、アラクネ、その他にも……。


 是非とも会ってみたい。

 でもラミアはどの種族とも敵対しているようで、会うことは叶わなさそうだ。


 それにしても、気になるワードが出てきたな。



「旧魔王領って?」


「あら、知らないの? その昔、まだこの大地が緑で溢れていた時代があるの。数百年前の話だけれどね」


「この荒野が緑で溢れてたのか……」


「信じられないわよね。私は生まれる前だったから分からないけど、一度は見てみたかったわ。でもある時、魔王が現れたの。この大地を我が物とするって言ってね」



 魔王……魔王か……。


 異世界っぽい存在と言ったらやっぱ勇者や魔王だよな。

 ハードな生活は嫌だけど、ちょっと憧れるというか、経験したくはある。



「じゃあその魔王を勇者が倒そうとしたけど、勇者は敗れて大地は荒れ果ててしまった、みたいな感じなの?」


「いいえ? 魔王はどこからともなく現れた女神にぶち殺されたそうよ」


「え?」



 女神が直接魔王退治したの?


 思い出すのは俺をこの世界に転生させたデカ乳女神様だが、地上には極力干渉しないスタンスだったと思う。


 となると、女神というのは当時の人たちがその姿を称えて呼ぶようになった異名、だろうか。


 俺は首を傾げる。



「魔王は倒せたのに、どうしてこんな荒れ地になっちゃったんだ?」


「ああ、それはね。魔王をぶち殺した女神様が『私が今から新しい魔王です』って宣言して二代目魔王が誕生したんだけど、その二代目魔王様の伴侶が暗殺されてしまったの」


「え!? あ、暗殺……」


「で、二代目魔王様がマジギレして大陸を焦土に変えちゃったんですって」


「……」



 なんだろう? どこかで聞いたことがあるような気がする。


 まさか、ね?



「その二代目魔王の名前って?」


「ふふ。その名は誰もが恐れて口にすることはしないけど、君には特別に教えてあげる。――魔王の名はアルカリオンと言うそうよ」


「ぶふっ、ごほっ」



 ちょっとびっくりしすぎて思わず変な咳が出てしまった。


 まじか、アルカリオン……。


 前に俺が拐われた時、もし俺が無事じゃなかったら大陸がここみたいな荒れ地になっていたかも知れないのか。


 アルカリオンってまじで凄いな。


 ラミアのお姉さんたちに実は二代目魔王の夫ですって言ったらどうなるか気になって仕方ない。


 そうこう話してるうちに、俺たちはラミアの集落に到着した。

 建物自体は縄文時代を彷彿とさせる竪穴式住居だが、ところどころに煙突があり、黒い煙が立ち上っている。


 ……もしかして製鉄技術があるのだろうか。住居が住居だから、ギャップが凄い。



「君の妹ちゃんはしばらく牢屋に繋いでおくわね」


「うっ、お、押すな、貴様!! 僕を誰だと思っている!!」


「はいはーい、こっちよー」



 ヘクは違う場所に連行され、俺は一番大きな建物まで案内される。



「この先に私たちの女王がいるの。きっと君のことを気に入るだろうけど、機嫌を損ねては駄目よ? 前に連れてきた子は調子に乗って女王様に死ぬまで搾り取られちゃったんだから」


「何それ怖い」



 ラミアのお姉さんの言葉に少し震えながら、俺は建物の中に入る。

 すると、その中にはうら若い女性が椅子に腰掛けていた。


 綺麗な紅葉色の髪の美女。


 上半身に服を着ておらず、大切なところが丸見えになっていた。


 蛇の下半身は長く、十数メートルはある。


 その美貌は俺が知る女性の中でも上位に食い込むほどで、絶世の美女であった。


 しかし、気になることが一つ。



「あっれ~? レイ君じゃん!! やっほ~、お姉さんだよ~」


「アイルイン!?」


「いぇーい、君もこっちで飲も~!! ほらほら、ミカエラも飲もうよ~」


「い、いえ、私はもう、うぷっ」


「えぇ~? だらしないなあ、こんなもんで酔っぱらうなんて」



 そこには酒飲みの酔っぱらい、ローズマリーの姉、アルカリオンの二番目の娘。

 アイルインがラミアの女王様にだる絡みしていたのだ。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「ラミアのお姉さんたちに全身を締め付けられながら死ぬ寸前まで搾り取られたい」


レ「もう慣れたよ、あんたの発言には」



「アルカリオンやらかしてて草」「アイルイン、だと!?」「まだ慣れない……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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