第47話 捨てられ王子、転移する





 首都を出発してから数時間。


 俺を含めたローズマリー率いる竜騎士団は反乱を起こした貴族たちに攻められている砦に到着した。


 今はローズマリーが砦の責任者と作戦会議をしており、そういう方面では役に立たない俺は怪我人の治療をしていた。


 ローズマリーら竜騎士団が到着するまで砦の責任者は討って出ることをしなかったらしい。


 籠城戦は功を奏したようで、怪我人は少ない。


 それでも籠城は精神的に削られるものがあるようで、怪我人を治療するとめっちゃ感謝された。


 感謝されるのは気分が良いな。うむ。


 そして、今はローズマリーが作戦会議を終えるまで滑走路付近でロリモードのサリオンと待機していた。



「ふぁーあ、面倒じゃのう。まとめて儂が始末した方が早いのじゃ」



 サリオンが欠伸しながら言う。


 俺はちょっと気になったのでどうやって始末するのか訊いてみた。



「ん? んなもん毒を戦場全域にばら蒔いたら良いのじゃ」


「敵も味方も大量虐殺じゃん」


「毒で死ぬ方が悪いのじゃ」



 毒がどの程度の強さかは分からないが、多分サリオンは細かい調整を面倒臭がって全力の毒を使うと思う。


 俺なら常に『完全再生』を使うことで無効化することはできるだろうが……。


 間違いなく兵士たちは全滅するだろう。


 そうなったらローズマリーがブチギレるどころの話ではない。



「そんなことしたら邪竜認定されるからダメ」


「むぅ。小僧はローズマリーのようなことを言うのう」



 いや、ローズマリーじゃなくても誰だって言うと思うけど。



「のぅ、小僧」


「ん?」


「暇なのじゃ。儂と交わろうぞ」


「い、今はダメ。ここは砦で、いつ敵が攻撃を仕掛けてきてもおかしくないんだから」


「そんなこと言っておる割に秒で硬くしておるではないか♡」


「うっ」



 サリオンが俺の愛刀を優しく撫でながら言う。


 ちくしょう。本当なら俺だって暇な時間を使ってエッチなことをしたい。


 いや、別に我慢する必要は無いのか?


 たしかにここは戦場だが、少なくとも野戦と違って砦の中であり、安全なのだ。

 そう思ったらヤっても良いような気がしてきて、俺はサリオンを部屋に連れ込み、合体した。


 サリオンは俺よりも身体が小さいから、抱きやすくて助かる。


 俺はローズマリーやアルカリオンに組み敷かれることが多く、組み敷ける相手は那由多とサリオンくらいだからな。


 たまには俺だって女の子を責め立てたいのだ。



「まったく、出しすぎなのじゃ♡ 儂とのエッチは気持ち良かったか?」


「……うん」



 最近はサリオンがエッチに慣れてきたのか、俺の方が一滴残らず徹底的に搾り取られることが多くなってきた。


 初めて会った時は雑魚雑魚だったのに、生意気である。


 と、ちょうどその時。


 ローズマリーが何やら真剣な面持ちで部屋に入ってきた。



「部屋の外まで音と声が聞こえていたぞ、レイシェル」


「え? あ、ごめん」


「いや、それは良いんだ。少し問題があってな」



 どうやら部屋の壁は薄いようで、激しい音が響いてきたらしい。

 しかし、ローズマリーの様子を見るとそれ以上の問題があったようだ。



「何かあったのか?」


「この砦の司令官、ネガエル伯爵だがな。……おそらくは反乱軍に与している」


「え?」


「いや、私も信じられないのだがな。ただ、その分かってしまった」



 分かってしまった?


 俺がローズマリーの物言いに首を傾げると、サリオンは頷いた。



「ふーむ。兆しは以前からあったが、ローズマリーも『竜の眼』が目覚めたようじゃな」


「それって、アルカリオンやサリオンと同じ?」


「うむ。まだまだローズマリーは若い故、覚醒するのはもっと先と思っておったのじゃがな」



 ということは、ローズマリーは竜の眼の力を使ってネガエル伯爵の裏切りを察知したのか。



「ただ、ネガエル伯爵と一部の兵士が反乱軍の者とやり取りしているのは分かったが、それだけだ。証拠がない」


「ローズマリーは律儀じゃのう。証拠など要らんのじゃ。その眼で視たことこそが事実。それだけでネガエルとやらを捕まえるには十分なのじゃ。行くぞ」


「え? ちょ、お祖母様!? どちらへ!?」


「そのネガエルとやらをシバき倒して反乱軍の情報を吐かせるのじゃ。拷問は儂の得意とすることじゃぞ、くふふ」



 ……そう言えば、初めて会った時に酷い目に遭わされたなあ。

 なんて考えているうちにサリオンはネガエル伯爵を捕えに砦の会議室へ行ってしまった。


 ローズマリーと二人でその背を追う。


 サリオンは会議室に到着するや否や、無遠慮に扉を開いて、中にいたネガエル伯爵に麻痺毒を浴びせた。



「な、か、身体が動かぬ!? こ、この小娘は何者だ!? っ、ローズマリー殿下!! お助けを!! この小娘のせいで身体が動か――」


「黙るのじゃ。百年も生きとらん若造が」



 そう言ってサリオンはネガエル伯爵の顔面を蹴り飛ばした。痛そう。



「ん? そっちの小娘は何者じゃ? 何故ここにおる?」


「へ? あ、ぼ、わ、私はネガエル伯爵様に仕えるメイドです!!」



 サリオンが部屋の隅にいたメイド服の少女に声をかける。


 俺と髪色が近い、銀髪ショートカットの美少女だ。


 ミニスカートタイプのメイド服を着ており、年齢は那由多とそう変わらないだろうが、おっぱいが大きい。


 あんな巨乳のメイドを雇っているのか、ネガエル伯爵は。

 いやまあ、学園では俺もメイドリオンを連れていたし、おかしくはないだろうが。


 ……それにしても、あの少女をどこかで見たことあるような気がするのは気のせいだろうか。



「……小娘。お主、どこかで会ったことがあるのじゃ?」


「あ、サリオンも? 俺もどっかで会ったような気がするんだよなあ」


「!? い、いえ、初対面でございます!!」



 メイドちゃんが焦ったように言う。



「……ふむ?」


「サリオン?」



 サリオンが無言で少女を見つめ、その黄金の瞳を光らせた。


 竜の眼を使っているらしい。


 すると、エッチの時以外は余裕のあるサリオンが少し動揺を見せた。



「っ、何も視えんじゃと!? お主、何者なのじゃ!?」


「っ」



 サリオンの何も視えないという言葉に反応したのは少女だった。



「バレたなら仕方ない、お前を殺す!! レイシェル!! お前を!! 僕の手で!!」


「え? 俺?」



 急に殺意を向けられて、メイド少女が俺に襲いかかってきた。

 そのスピードは速く、ローズマリーもサリオンも反応できない。


 少女はスカートの下、太ももに巻いた革ベルトから小石ほどの何かを取り出し、投げつけてきた。


 それは俺に当たり、眩しく輝く。



「は、はは!! やったぞ!! これでお前は世界の果てで一人孤独に死ね!! はははははッ!!」



 たしかに少女の投げた何かは俺に当たった。


 しかし、投げたものが跳ね返るのは当たり前のことである。

 高笑いする少女に、俺に当たった何かが跳ね返って触れてしまった。


 すると、一瞬で景色が切り替わる。


 さっきまで砦の会議室にいた俺は地平線の果てまで続く荒野に立っていた。


 ローズマリーやサリオンの姿はなく、この場にいるのは何かに当たってしまった俺とメイド服の少女のみ。



「はははははッ!! ――え?」


「うお!? どこだここ!?」



 少女は高笑いをやめ、冷や汗を流し始める。


 どうやら少女自身もこの展開は想定していなかったらしい。


 ポンコツッ娘なのかな。可愛いじゃん。







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「果たして少女の正体とは!?」


レ「誰ダロナー?」


作者「新作投稿しました。タイトルは『転生したら黒幕だった俺は正体を隠して悲劇のヒロインたちを片っ端から救済してイクゥ!』です」



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