第40話 捨てられ王子、夜中に襲われる
「うーむ。犯人の手がかりは今日も無し、か」
女子寮で暮らすようになってから数日。
俺はこれといったトラブルに見舞われることなく平穏に過ごしている。
いやまあ、那由多とエッチしてる場面をテナウやカナデに見られたりしたけども。
アルカリオンの『突発的に男性器が生える病』の設定で誤魔化すことができた。
……誤魔化せてはいないか。
スッキリしないと辛いと咄嗟に吐いた嘘で事なきを得たのだ。
カナデは『そういう病なら仕方ない』と理解を示し、少し無神経そうなテナウは耳まで真っ赤にしてしおらしくなっていた。
元気っ娘のテナウがもじもじする姿に興奮して那由多と激しい時間を過ごしたのは言うまでもない。
「それにしても私物荒らしの犯人、中々見つかりませんね」
「目撃者はいるんだけどなあ。どれも荒唐無稽というか、要領を得ないというか」
生徒の私物を荒らしている何者かの目撃情報は非常に多かった。
しかし、どれも意味不明な内容だったのだ。
曰く――
「犯人は超絶美少女で、声をかけたら溶けるように消えた。狙われるのは女子生徒の私物が多い。駄目にされた私物は教科書やノート、筆記用具など」
「うーん、流石にヒントが無さすぎですよねぇ」
「だなあ。悪いな、那由多。せっかくの休みの日に手伝ってもらっちゃって」
「いえ、アルカリオンさんもいないですし」
そう、私物荒らしの犯人捜しは俺と那由多の二人で行っている。
というのもアルカリオンの分身、メイドリオンが好き勝手やっていることがローズマリーにバレてしまったのだ。
ローズマリーが学園にワイバーンで突入してきてメイドリオンを捕獲した事件は話題になった。
ちなみに共犯のヴィオレッタも連行され、俺もローズマリーに事情を話せと迫られて洗いざらい話した。
俺は巻き込まれた側で女子寮暮らししていることは大して怒られなかったが……。
『ふん。ハーレムを作るのは結構だが、私を蔑ろにしたら許さないからな』
と、少しそっぽ向いて言うローズマリーがあまりにも可愛かった。
なので速攻でトイレに連れ込み、めちゃくちゃエッチなことしました。ハイ。
……話が逸れたな。
「なんかこう、ズバッと楽に犯人を見つける方法は無いかなあ」
「あはは、そんな方法があったら苦労しないですよー。ってあれ?」
と、そこで那由多が校舎の廊下で何かを見つけ、その何かを抱っこした。
「レイシェルさん、この子ってレイシェルさんのスライムじゃないですか?」
「……うちのライムだな」
「脱走してるじゃないですか!! ちゃんと面倒見なきゃ駄目ですよ!!」
俺だってしっかり世話をしてるつもりなのだ。
しかし、最近気が付いたら寮の私室に設置してあるケージから脱走している。
それでも二、三時間したら戻ってくるし、使役されている魔物は魔法的な処置が施されているため、一目見れば使役されていると分かるし、間違って討伐される心配はない。
これが危険なドラゴンだったら問題になるかも知れないが、ライムはただのスライム。
ちょっと触手で女の子との楽しい一時を彩ってくれるだけで、これと言った害は無いため、校舎を徘徊していてもあまり騒がれない。
むしろ『ライムちゃん可愛いー』って感じで学園のアイドルになりつつある。
あれだ、学校の校庭に迷い込んだ犬みたいな、そういうポジションに収まっているのだ。
うっかり撫でようとした女子生徒の服を溶かしてしまった時は本気で焦ったがな。
「ん? あれ? ライム、なんかちょっと大きくなったか?」
「――♪」
「そうなんですか?」
「あ、ああ。たしかに大きくなってる」
もしかして脱走してる間に誰かから餌を貰っているのだろうか。
あるいは餌を貰うために脱走してる?
「うーむ。俺のライムを餌付けするたぁふてぇ野郎だ。万が一にでもライムが凶悪になったらどうするんだ」
スライムは食べる物で特性どころか性格まで変わってしまう。
牛や羊のような温厚な動物の血肉を与えたスライムは大人しい性格になるが、凶暴な魔物の血肉を与えるとスライムは獰猛になるらしい。
しかも酸の強さや性質も変わってくるようで、服だけ溶かすライムは奇跡のような存在なのだ。
もしライムが変質して夜のスライムプレイが出来なくなったら一大事である。
と、その時だった。
廊下をしばらく進んだ先にある教室に何やら人が集まっている。
「ん? なんか向こうが騒がしいな」
「もしかして私物荒らしですか!?」
「ッ!! 行ってみよう!!」
俺と那由多は騒ぎの起こっている教室の方に向かった。
「うわ、なんじゃこりゃ……」
「ここってたしか、魔物の標本が飾ってある資料室でしたよね? 凄い荒らされてる……」
資料室の中は大惨事になっていた。
おそらくは魔物の標本や剥製だったと思われるものが一つ残らず壊されている。
いや、というか……。
「溶かされた、のかな?」
「何か硫酸とか掛けた感じですね?」
標本や剥製は、でろでろに溶けていた。
何らかの薬品によって壊され、跡形も無くなっているものが多い。
これは片付けが大変そうだ。
「これ、私物荒らしの犯人でしょうか?」
「どうだろうな……。でも、言われてみれば私物荒らしに荒らされた物の中にも同じように薬品で溶かされたようなものがあったな」
「じゃあやっぱり!! ……でも、なんで急に学校の備品にまで手を出したんでしょう?」
「それは俺に聞かれても……」
あーでもないこーでもないと犯人について考察するが、答えが分かるはずもなく。
遅れてやってきた教師たちに野次馬の生徒たちは解散を命じられ、俺と那由多は大人しく自室に戻った。
事件が起こったのは、その日の夜。
誰かが俺のベッドの中でゴソゴソと動き、俺は目を覚ました。
まさか那由多が夜這いに来たのだろうか。そう思って目を開ける。
「んぅ、那由多……じゃない!?」
「……」
美しい少女だった。
透き通る銀色の長い髪と青い瞳。およそ完璧と言えるプロポーション。
少し動くだけで激しく揺れるおっぱいが、俺の身体にのし掛かっている。その感触はまさにスライムだった。スライムおっぱいである。
そんな絶世の美少女が薄く微笑みながら俺に跨がっているのだ。
俺は思わず声を荒らげる。
「だ、誰!?」
「――やっと、お話できる。マスター、好き」
「!?」
「マスター、赤ちゃん作ろ?」
そう言って少女は顔を近づけてきて、そのままキスをしてきた。
その時に気付く。
少女からは体温をあまり感じなかった。むしろひんやりしていて気持ちいい。そう、ちょうどライムと同じくらいの……。
ん? ライム?
俺はふと気になって、部屋の隅に置いてあるライム用のケージを見た。
しかし、そこにはライムの姿がない。
その瞬間、俺のIQ53万を誇る頭脳が信じられない可能性に辿り着いた。
「……もしかして、ライムか?」
「――流石はマスター。やはりマスターは神。この世界の神になるべきはマスターしかいない」
「え、ちょ!?」
ライムが俺に覆い被さってきて、そのままおっ始められてしまう。
俺は抵抗できなかった。
手足を触手で拘束されてしまい、身動きが出来ないところをライムにこってりと搾り取られてしまったのだ。
ライムが俺を優しく抱き締めて、囁きかけてくる。
「大丈夫、マスター。マスターはこの世界の神になる。ライムに任せて。手始めに、この学園の女子生徒全員にマスターの赤ちゃんを産ませる」
「え?」
なんかヤバイことになってきた気がする。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「スライム娘に抱きついてそのまま骨の髄まで消化されて一つになりたい。そして永遠を共に生きたい」
レ「どしたん話聞こか?」
お知らせ
ノクターンにて『過去に戻った俺は鈍感な友人が好きな女たちを寝取って犯して生きてイクっ!』を投稿中です。時間のある方はどうぞ。
「スライム娘!! ひゃっほう!!」「なんか作者のメンタル死んでない?」「だいたいこんな感じやろ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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