第38話 捨てられ王子、メイドリオンを堪能する
トラブルが起こったのは、スライムをテイムする授業から一週間程が経った頃だ。
触手のように身体を自由自在に操り、夜のスライム遊びでも大活躍しているライムを抱えながら教室を移動していた時。
何やら廊下で生徒たちが揉めているようだった。
その中心には何故か那由多がいて、どうにも困っている様子。
那由多が渦中にいるなら他人事ではないので、俺は人混みを掻き分けて騒いでいてる中に入って行った。
那由多に声をかける。
「何々? 何事?」
「あ、レイシェ――レイさん。なんかいちゃもん付けられてて」
「何がいちゃもんだ!! 薄汚い王国人め!!」
見れば那由多と相対しているのは同じクラスの者ではなかった。
お隣の、アンチ王国の生徒たちだ。
「貴様がうちのクラスに侵入して彼女の持ち物をダメにしたのだろう!?」
そう言って隣のクラスの生徒が高々と掲げたのは、ボロボロの教科書や筆記用具だった。
それを見た那由多は疲れた様子で溜め息混じりに言う。
「いや、だから何度も言ってますけど、わたしじゃないですってば。そんなメリットもないですし、暇もないですし」
「黙れ!! 証拠ならばある!! うちのクラスの生徒が目撃しているからな!!」
「そのクラスメイトさんの見間違いでは? というか見ていたなら止めれば良いじゃないですか」
「往生際の悪い女め!!」
「とまあ、こんな感じで面倒なんですよぉ」
那由多が困った様子で俺に言う。
なるほど、これはたしかにいちゃもんだ。
相手側の用意した証人以上に当てにならないものはない。
相手が帝国の高位貴族だからか、那由多と同じクラスの生徒はあまり強気に出られないみたいだが、概ね俺と同じ意見らしい。
要は「は? 何言ってんのこいつ?」状態だ。
冷静に話し合いをしようにもあちらは頭に血が昇っているようだ。
まともに話すことはできないだろう。
俺はこっそり那由多に耳打ちして、現状を打開しうる方法を提示する。
「どうする? ヴィオレッタ呼ぶ?」
学園の最高権力者、理事長召喚だ。
俺がお願いしたらほぼ何の証拠も無く向こうを有罪にできる。
いや、証拠は後から出てくるだろうなあ。
ヴィオレッタなら俺のお願いを全力で聞いてくれるだろうし、那由多の冤罪も綺麗さっぱり晴らしてくれる安心感がある。
流石はお姉ちゃんだ。
しかし、どうやら那由多は権力に頼ることにあまり良い顔はしなかった。
「いやあ、ヴィオレッタさんも忙しいだろうし、わざわざお願いするのはなあ」
「でもこのままじゃ埒が開かないぞ?」
向こうは那由多を犯人って決めつけてるし、俺としても良い気分ではない。
この場を丸く収めるにはやはりヴィオレッタの手を借りるのがベストだろう。
と、その時だった。
「おや、皆さん。そんなところに集まって何をしているのですか?」
「誰だ!! 今はこの薄汚い王国人と話を――り、理事長先生!?」
呼びに行くまでもなく、ヴィオレッタが降臨した。
しかし、俺はヴィオレッタの後ろに控えている少女に目を向ける。
可愛らしい女の子だった。
綺麗な純白の髪を肩くらいで切り揃えており、金色の瞳が輝いている。
格好は何故かメイド服。
ヴィオレッタの従者に見えなくもないが、どこかで見たことがあるような……。
ん? んん? いや、流石に違うよな?
「聞いてください、理事長先生!! この薄汚い王国人が!!」
「あら、そのボロボロの教科書や筆記用具は……」
「この女がやったに違いありません!! こちらには証人もいます!!」
ヴィオレッタが俺の方をちらっと見て、誰にも分からないよう小さくウィンクする。
任せろ、ということか。
「まあ、大変ね。でも、そういうことは然るべき場所に、然るべき人物に言うようになさい」
「でもあの女がやる瞬間を目撃した証人が――」
「それでも、です。公の場で誰かを糾弾する行為は、相手との決定的な溝を生じさせます。貴族ならばその溝が如何に問題か分かるでしょう?」
「そ、それは……」
「それに、同様の報告が上級生の間にもありました」
「な、ならそれもその女が!!」
「残念ながら、下級生が上級生の校舎に立ち入るには複雑な魔法を解除せねばなりません。一年生には不可能ですよ」
……いや、どうだろ。
那由多の『大賢人』なら簡単にそういう結界を突破できそうだな。
流石に違うだろうけどね。
「この件は学園側で調査します。ほら、皆さん教室に戻ってください。そろそろ授業が始まりますよ」
「「「「「はーい」」」」」
そそくさと生徒たちが教室を移動する。
最後まで那由多が犯人だと言い張っていたお隣のクラスの生徒は、敵意を剥き出しのままこちらを睨んでいた。
那由多がヴィオレッタにお辞儀する。
「ありがとうございました、ヴィオレッタさん」
「ふふ、気にしなくていいのよ。……かわいい♡」
「え? えーと、ありがとうございます?」
「……コホン」
一瞬、ヴィオレッタが肉食獣のような目で那由多のことを見つめていた。
もしかしてヴィオレッタ、可愛い子なら誰でも良いのだろうか。
「っと、いけないいけない。レイくんにはお話があるので、付いてきてくれる?」
「あ、はい」
というわけで俺は那由多と別れ、そのまま理事長室に向かった。
俺はそのタイミングで声をかける。
ヴィオレッタに対してではなく、その後ろに付き人のように追随して歩いていた少女に向かって。
「何してんの、アルカリオン」
「おや、バレてしまいました」
……やっぱりか。
どうやらメイド服を着た少女の正体はアルカリオンだったらしい。
いや、でもその姿は一体……?
「これは分身体、言わば仮初めの肉体です。本体は今も城で政務をしています。ちょうど今、帝国の持てる技術を結集させて天空都市を造り、そこに坊やや娘たちと共に過ごすための城を建てようと莫大な資金を横流ししようとしたら計画が露呈し、ローズマリーとオリガに叱責されています」
何してんの?
ねぇ、アルカリオン。なんちゅー計画立ててたんの!?
「そ、そっか。でも、なんでここに?」
「……坊やが学園に通い始めてから、あまりエッチできていないので」
「え、そうかな? 毎晩朝方までシてると思うけど」
「足りません」
「た、足りないかあ……それはごめん」
「いえ、責めているのではありません。ただあわよくば学園で青春気分を味わいながらシたいなあ、と」
うわーお、すっごい煩悩。
「それならなんでメイド服? あんまり青春とは関係ないような……」
「学園では高位の貴族が自らの世話係としてメイドや侍女を連れてくることはままあります。坊やと学園で背徳ご奉仕プレイをしようかと思いまして」
分身体でも相変わらず無表情だが、いつもよりはっちゃけているような気がする。
その後、俺はメイドのアルカリオン――メイドリオンに甘々ご奉仕されて、見るに見かねたヴィオレッタが乱入。
母娘ご奉仕を堪能した。
その終わり際、ヴィオレッタがちょっと衝撃的なことを言う。
「あ、今日からレイくんには女子寮で過ごしてもらうから」
「……え?」
何それどゆこと?
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「メイドは素晴らしい」
レ「分かる」
作者「あと最近ノクターンノベルズで投稿を開始しました。タイトルは『過去に戻った俺は鈍感な友人が好きな女たちを寝取って犯して生きてイクっ!』です。エッに全振りしてるので、時間のある方はどうぞ」
「ざまあが楽しみだ」「恐ろしい計画だ」「メイドリオン可愛い」と思った方は、感想、ブックマーク、☆評価、レビューをよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます