第36話 捨てられ王子、全然萎えない






 俺は自分の身体の変化に気付いていた。



「全ッ然萎えない!!」


「うふふ、レイくんったら本当に絶倫ね♡」



 理事長室でほぼ一日中エッチしていた。


 流石は淫魔の先祖返りとでも言うべきか、ヴィオレッタは凄かった。


 あまり気持ち良さで女の人を順位付けしたくないけど、今まで抱いてきた女の中でもダントツだったと思う。


 ……いや、どうだろうな。


 ローズマリーやアルカリオンは対抗心を燃やしてもっと気持ち良くしようとしてくるかも知れない。



「はあ♡ 名残惜しいけれど、もう日が昇ってしまったわ」


「あ、ホントだ。那由多に悪いことしちゃったな」



 本当は一人で学園に通うのが寂しい那由多のため、またアルカリオンから学園の視察を頼まれての編入だったからな。


 初日からどちらもサボって少し申し訳ない。


 今日は真面目に学園に行こう、と決意したタイミングでヴィオレッタが俺を優しく抱き締めた。



「レイくん、困ったことがあったらいつでもお姉ちゃんに言ってね」


「おうふ。分かったよ、お姉ちゃん!!」


「ん゛あ゛あ゛っ♡ がわ゛い゛い゛っ!! レイくんを苛める奴がいたらすぐに言ってね、そいつを退学させて人生ぶち壊してあげるから♡」


「え、いや、そこまではしなくても……」



 何だろう。


 ヴィオレッタってお姉ちゃん属性なのは間違いないけど、ちょっと過激な人かも知れない。


 とまあ、色々あって俺は一日遅れで授業に参加することにしたのだが……。


 そこで問題が一つ発生した。


 俺と那由多が同じクラスになるようヴィオレッタが手を回したらしく、教室に向かった俺は信じられないものを目撃したのだ。



「那由多ちゃん、おはよー」


「ねぇねぇ、那由多ちゃん!! 放課後遊びに行こうよー!!」


「ちょっと男子!! 那由多ちゃんナンパするのやめて!! 那由多ちゃんは私たちと先約があるの!!」



 那由多が大勢のクラスメイトに囲まれている。


 男女問わず、それはもうビックリするくらいクラスの人気者になっていた。


 いやまあ、一人ってことに不安がってたけど、那由多って普通にコミュ強だからなあ。

 むしろ俺の方がクラスから孤立してしまっている気がする。


 一日遅れの自己紹介は無難に済ませたし、これと言って問題はなかったと思うが……。


 もしかして変装が完璧すぎたのだろうか。



「でも冷静に考えてみると、俺って前世でも友達少なかったからなあ」



 寂しい。


 那由多はすでにクラスメイトと打ち解けて遊ぶ約束までしてるのに。

 なのでこの寂しさを、那由多に埋めてもらうことにした。



「まったくもう、レイシェルさんってば。授業中なんですよ、今」


「ごめんごめん」


「本当にもう、レイシェルさんは仕方のない人ですね♡」



 クラスの人気者になった那由多と午前中の授業をサボってお昼休みまで色々するのは、正直興奮しました、ハイ。



「それにしても、この学園は慣れないですね」


「そうか? 俺から見たら那由多めっちゃ馴染んでると思うけど」


「うーん。そういうことじゃなくて、ほら。年齢で学年が分かれてるわけじゃないでしょ?」


「あー、なるほど」



 ヴィオレッタ学園は日本のものと大分システムが異なる。


 まず年齢だろう。


 同じ学年でも歳が五歳近く離れている場合も珍しくないのだ。


 ヴィオレッタ学園の特徴として、学びたい者は年齢や身分を問わず学べるというものがある。

 子供でも大人でも、勉強したい者は一定の学費を払うことで入学できるのだ。


 まあ、前科持ちとかだったりすると監視が付くみたいだけどな。


 面白いのは昇級の仕組みだろう。


 生徒は一年生から始め、昇級試験を受けて合格したら二年生になる。


 俺や那由多は編入したばかりでまだ一年生だが、その気になれば明日にでも昇級試験を受けて二年生になることができるってわけ。


 逆に昇級試験をクリアしないと二年生になれないし、ペナルティもある。

 五年以上同じ学年に在籍していると『学ぶ意志無し』として退学になってしまうのだ。


 それが八年生まで続くというシステムである。


 四年生までは基礎的な知識などを学び、五年生からは更に専門的な分野に分かれて学ぶって感じだな。


 那由多は五年生になったら政治関連の授業を受けるらしい。



「って、もうお昼休み終わっちゃう!!」


「遅刻遅刻~」


「んもう!! レイシェルさんのせいだよ!!」



 俺と那由多は大急ぎで次の授業が行われる学園の敷地内の森にやってきた。


 そう、森だ。


 帝都の一画に木々が生い茂っている場所があることは知っていたが、まさか学園の敷地内に森を作っているとは思いもしなかった。


 スライムのような弱い魔物を結界で閉じ込めているようで、生徒は戦いの基礎をここで学ぶらしい。



「全員揃ったな。今日はお前たちにスライムをテイムしてもらう」



 身の丈ほどの大剣を担ぎながらそう言ったのは、一年生の実技科目を担当している女性教師だ。


 名はベリメアと言い、獣人である。


 ウルフカットの灰色の髪が特徴的な人間寄りの容姿をした褐色肌の美人だ。

 狼と思わしき耳と尻尾が生えており、凄くもふもふしたい。


 あと少し露出の激しい格好だった。


 ホットパンツとヘソ出しのタンクトップという、学生たちの性癖を歪ませに来ているとしか思えない格好だ。


 ……いや、それを言ったら淫魔なのにシスターっぽい服を着ていたヴィオレッタも大概か。



「あの、レイシェルさん。スライムって、あのスライムですか?」


「ドラ◯エのスライムとは違うぞ。もっとこう、どろどろしてる」



 この世界のスライムは何かと万能だ。


 核を破壊して干したらゴムの代わりにもなるし、調理したらトコロテンみたいにもなる。


 あ、ローションの材料にもなるな。



「そこ!! 私語は慎め!!」


「「あ、はい!!」」



 那由多と一緒にベリメア先生に怒られる。すると、同じクラスの男子から睨まれた。



「クソッ、那由多ちゃんと仲良くしやがって」


「同じ時期に編入してきたからって調子乗ってんじゃねーよ」


「いつか痛い目に合わせてやる」



 ふっ、童貞たちが囀ずりよるわ。


 美少女美女を侍らせている俺は余裕を持ちながら男子生徒を見下ろす。


 殺気すら感じさせる視線もあるが、戦場の最前線を経験している俺からすると何ともない視線だった。


 ただまあ、その中で気になる視線が幾つか。


 同じクラスの男子からは嫉妬や羨望の混じった視線が向けられているのだが……。


 中には憎悪の感情を向けてくる者もいた。



「ちっ。王国人が」



 それは他クラスの生徒からの視線だった。


 理由はアルカリオンやヴィオレッタからあらかじめ聞いている。


 まあ、要は彼らは王国が嫌いな連中なのだ。


 アガーラム王国が無かったら、帝国は今頃世界を征服していたかも知れない。

 長年帝国の覇道を邪魔していた王国を憎むのもおかしくないだろう。


 しかし、何も帝国の人間が全員そう思っているわけではない。


 うちのクラスの生徒が友好的なのがその証拠である。

 アルカリオン曰く、王国人を嫌っているのは好戦派の貴族たちが主な連中とのこと。


 やだよね、そういうのって。


 どうせなら皆と仲良くしたいけど、戦争で生じた溝は中々埋まらない。


 アルカリオンが俺に学園の視察を依頼したのも、そういう部分を確かめて欲しかったからかも知れないな。


 まあ、学園の敷地内で手を出してくることはないだろうし、警戒する必要は無いだろう。



「――よし、全員グループ毎に分かれたな」


「え? あっ」


「ん? なんだ、レイは余ったのか?」



 ベリメア先生が俺の名前を呼ぶ。


 レイというのは、学園での俺の偽名だ。本名だと怪しまれそうだからな。


 いや、そうじゃない。


 どうやら俺が雑考してるうちに生徒たちがグループを作ってしまったらしい。

 那由多は他の女子生徒に腕を引っ張られてグループに入れられていた。


 友達が多いとこういうグループ作りで苦労しないから羨ましい。そう、俺は余ったのだ。


 あ、余った……。うっ、前世の記憶が蘇る!!



「仕方ない。ならレイは先生と組むか」


「よ、よろしくお願いします」



 ベリメア先生、男勝りだけど良い先生だなあ。


 めっちゃ美人だし、服の上からでも分かるくらいおっぱいもたわわに実ってるし。


 あ、よく見たら腹筋も少し割れてる……。



「……ごくり」



 俺は下半身が熱くなってしまう。


 できるだけベリメア先生にはバレないよう、俺は前傾姿勢で授業に臨むのであった。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「お前ぼーっち」


レ「お前もぼーっち」


作者&レ「イラッ」



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