第28話 捨てられ王子、王都上空に到達する




 俺たちはアガーラム王国の王都上空にいた。


 空は青々としており、頬を撫でる風がちょっぴり冷たい。


 目下の王都ではサリオンに気付いた兵士たちが防壁の上にある大型バリスタを動かしたり、対空魔法の詠唱を始めている。


 と言っても、超高空にいるサリオンに攻撃が届くはずもない。


 俺は安心してボケに走る。



「王都よ、俺は帰ってきた!!」


「……」


「サリオン? おーい、サリオンさん?」


「……うん?」



 俺が声を掛けると、サリオンは一瞬遅れて返事をした。



「あ、すまんのう。何だったのじゃ?」


「聞いてなかったからってボケを二回させるのは酷だよ。……大丈夫? さっきのこと気にしてる?」



 どうもサリオンの様子がおかしい。


 飛行中もずっと心ここに在らずという感じでボーッとしていた。


 その理由は何となく分かる。



「サリオン。俺は無事だったわけだし、あまり気にする必要は――」


「いいや、違う。小僧、お主を危険に晒したのは儂の油断じゃった」



 そう、実はサリオン。


 司令官の男が口から吐き出した自爆する魔導具を俺が正面から食らって死にかけたことを気にしているらしいのだ。


 先に言っておくなら全く問題はない。


 意識さえ残ってたら『完全再生』で治せてしまうからな。


 サリオンが不機嫌そうに言う。



「……少し、驚いておるのじゃ」


「何に?」


「儂は人間が嫌いじゃ。苦しむ顔は好きじゃがな。なのに、小僧。お主が死ぬかも知れないと思ったら焦った。こんなに焦ったのはアルカリオンと本気で喧嘩して殺されそうになった時以来なのじゃ」



 あのアルカリオンと喧嘩って凄いな……。



「どうやら儂は、儂が思っておる以上にお主のことを想っているらしい。まあ、身体の相性は抜群に良かったが、好意まで抱くとは自分でも予想外なのじゃ」


「……そう、か……」



 どうしよう。今、とても言いたいことがある。


 しかし、何やらしみじみと語るサリオンを遮ってまで言う必要があるのか。


 でも言いたい!! 凄く言いたい!! よし、言おう!!



「サリオン」


「なんじゃ?」


「そういう話は戦いの前にしちゃダメだって!! 死亡フラグだって!!」


「ふら……?」



 首を傾げるサリオン。真竜モードでも可愛いじゃないか。



「……まあ、ありがとう。俺を大事にしてくれて」


「べ、別にそういうわけではない!! 儂は儂のものを傷つけられることが我慢ならんだけなのじゃ!!」


「なんだ、ツンデレか? サリオンにも可愛いところがあるじゃないか」


「つん? よ、よく分からんが、馬鹿にされておることは分かるぞ!!」


「はは、馬鹿にはしてないよ。っとと!?」



 何をするつもりなのか、サリオンが急に地上に降りた。


 そして、いつもの黒髪幼女の姿になる。



「ちょ、サリオン? 何を――」


「何、お主が生意気を言うから儂が分からせてやるのじゃ!!」


「い、いやいや、目の前には王都があるんだぞ!? 敵の兵士が来たら……」



 一応、何があるか分からない場所での行為は控えるよう言ってみる。

 しかし、俺は服を無理やり脱がされて、その場でサリオンに押し倒されてしまった。



「ふん!! 儂に勝てる者などアルカリオンくらいなのじゃ。ほれ、さっさと服を脱ぐが良い」


「で、でも流石にここでは……」


「ならお主の好きなことをさせてやるのじゃ。多少は変態なことをしてやっても構わんぞ?」


「――よし、やろう!!」



 俺は満面の笑みでサムズアップし、ちょっとアブノーマルなお願いをしてみた。



「お主、ガチで変態じゃな。腋をくすぐらせて欲しいとは……」


「い、いやあ、ははは……」



 俺がサリオンにお願いしたのは、両手を頭の後ろで組んでもらう、ただそれだけだった。


 当然、他にもやらしいことをするが、それはこの後で十分だ。

 俺はガラスに触れるように優しくサリオンの腋をくすぐらせてもらった。


 サリオンが顔を少し赤らめる。



「く、くすぐったいのじゃ……。こんなことをして何が楽しいのかのぅ」


「俺はおっぱいとかお尻と同じくらい腋が好きなんだ」


「そう言えば、初めて会った時も儂の腋を見ておったのぅ」


「あと太ももも好き」


「おなごの全身が好きなのではないか」


「あ、別に女の子なら誰でも良いってわけじゃないぞ?」



 好きな女の子のおっぱいやお尻、腋や太ももだから興奮するんだ。


 小一時間ほどサリオンの腋をくすぐったり、イロイロなことをしてたら、ついにサリオンの方が我慢の限界を迎えたらしい。



「ええい、いい加減にするのじゃ!! 儂の腋ばかり愛でおって!! もっと儂自身を可愛がるのじゃ!!」


「ご、ごめんごめん」



 それから俺たちは三日三晩やりました。


 と、その途中で王都の兵士や騎士たちが地上に降りた俺たちを倒そうと向かってきたもした。

 戦場でナニをやるとか普通に抹殺するチャンスだろうからな。


 しかし、今回は相手が悪かった。


 サリオンは一瞥するまでもなく敵意剥き出しで近づいてきた連中に毒を浴びせ、戦闘不能にしてしまったのだ。


 一応、殺傷力の高い毒ではなく、感覚を麻痺させるものらしいが……。


 まさに敵無しの状態だった。


 サリオンと繋がっており、弱点を知り尽くしている俺以外はな。



「くっ、この変態めっ」



 手玉に取られて悔し紛れに言うサリオンが可愛かったので、もっと可愛がる。


 と、その時だった。



「君たちだね!! 王都を襲撃しに来た悪い帝国の人たちって……言う……のは……」



 剣と盾を持った栗色の髪の少女が襲撃しようと近づいてきたが、俺とサリオンが行為中なのを見て武器を下ろした。


 サリオンも少女が敵意を失ったことを察して攻撃せず、俺と愛で合いに集中する。



「え? え? な、なんでお外でエッチなことしてるの!?」



 困惑する少女は、可愛らしい子だった。


 年齢で言うなら十三、四歳の中学生くらいだと思われる。


 まだ熟れきっていない果実とでも表現すべきか、慎ましいながらも女性的な体つきをしていた。


 あの子、可愛いなあ。でもどこかで見たことあるような……。


 などと考えてたら、サリオンが唇を尖らせながらも困惑している少女に声をかけた。



「おい、そこの小娘」


「え? あ、は、はい」


「こっちに来るのじゃ」



 その命令に俺も少女も困惑する。



「ちょ、サリオン!? 何を言って……」


「お主があの小娘を抱きたいと思ったのじゃろう?」


「い、いや、そんなことは……」


「嘘は儂には通じぬのじゃ。儂とて見ず知らずの小娘に小僧を貸してやりたくないが、小僧が望むなら致し方なし」


「ちょ、ストップストップ!!」



 少し心配なくらいアルカリオンやサリオンは俺が望めば何でも許してくれるな……。


 いや、でも今回は少し違う。


 流石に俺一人のわがままでは通らない。女の子が同意しないとダメだろう。


 と思ったら、サリオンが先手を打った。



「どうせ小僧のことじゃ、同意があらねば抱く気にならんじゃろ。ほれ」


「きゃっ!?」



 サリオンが少女に毒を浴びせた。



「え、あ、あれ? なんだろ? 身体が、熱い……♡」


「ほれ、小娘。さっさとするのじゃ」


「あ、えっと、う、うん……。じゃあ、えっと、お邪魔しまーす♡」

 


 少女が服を脱いで俺たちに混ざってきた。


 近くで見ると余計に人形みたいに可愛らしい女の子だった。



「ほれ、小娘も同意したぞ。まだぐだぐだと適当な理由を並べるか?」


「……」


「くっくっくっ、どうしたのじゃ? 何か言うが良い」


「……す」


「んん?」


「いただきます!!」



 俺は少女に抱き着いて、軽く自己紹介する。



「お、俺はレイシェル。よろしく」


「あ、えーと、私は阿僧祇あそうぎ那由多なゆた。勇者としてこの世界に召喚されたんだ♡ よ、よろしくなんだよ♡」


「え、に、日本人か? か、可愛いな、那由多」


「あ、ありがと……♡」



 少女は自らを勇者と名乗ったが、もう細かいことはどうでも良かった。


 出会ってすぐの少女と肌を重ねるのは、とても背徳的で気持ち良かったので。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「あんまりこういうこと言うと変態に思われるかも知れないけど、成熟しきったボンキュッボンのお姉さんと同じくらい未成熟な元気ロリっ娘も良いと思います。あと腋って良いよね」


レ「あんたが変態なのは皆知ってるよ」



「本編よりあとがきにツッコミたい」「知ってた」「分かりきってて草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る