第25話 捨てられ王子、お説教される





「……んっ……んぁ……!?」



 下半身が熱くなり、俺は目を覚ました。


 何か大切な夢を見ていた気がするが、今は後回しにする。


 ふわふわの毛布を被っており、思わず咄嗟に毛布を捲った。



「……ん……おはよう……」



 眠たそうに目を半分開いたクリントと視線がかち合った。


 そして、俺は気付いてしまう。


 俺とクリントは今、繋がっている。

 今に至る理由は分からないが、たしかに一つとなっているのだ。


 いくら年上でも幼い容姿の少女と一つになるのは背徳感が半端じゃない。



「ちょ、あの、クリントさん!? な、何を!?」


「……ん……こっちの世界でも……貴方の赤ちゃんが……欲しいから……」


「こ、こっちの世界でも? ど、どういうこと?」



 クリントが何を言っているのか分からないが、彼女は嬉しそうに笑った。

 そのあまりにも幸せそうな笑顔に思わず目を奪われてしまう。


 か、可愛い!!



「で、でも、こういうのはもっとお互いを知ってからで……エッチなのはいけません!!」



 どの口がと思われるかも知れないが、俺とクリントは今回を含めて会ったのはたった二回である。


 話したのはさっきが初めてだ。


 俺がクリントの行動を注意すると、彼女は少し悲しそうに言う。



「……エッチな私は……嫌い……?」


「大好きです!!」



 エッチな女の子が嫌いな男はいない。


 それは合法ロリっ娘であっても、ムチムチ巨乳美少女であっても変わらない。


 俺はクリントと幸せな時間を過ごした。


 いや、本当にどうしてクリントが好意を寄せてくるのかはさっぱりだが、俺は難しく考えるのをやめた。











 そして、俺を待っていたのはローズマリーからのお説教だった。

 正確には俺を背に乗せていたサリオンが叱られ、俺は心配をかけてしまったらしい。


 これは後になって知ったことだが、クリントの部屋は誘拐事件以降から特殊な結界が張られており、許可のある者しか入れないようになっている。


 俺はその結界の中に偶然に入り込んでしまったようだ。


 ローズマリーは許可を貰うためにアルカリオンに会いに行ったが、何故かアルカリオンは時間を稼ぐように話題を逸らしまくったらしい。


 それからちょっと強引に許可を貰ってローズマリーはクリントの部屋に来た。


 そこで見たのが俺とクリントのエッチ。


 そりゃまあ、多少は叱られても仕方ないよねと自分でも思う。



「すまんのう、飛ぶのが久しぶりすぎてテンションが上がってしまったのじゃ。次は真面目に――」


「もう乗らない」



 サリオンが謝ってきたけど、俺はもう空を飛ぶのはゴメンだった。


 それでもアルカリオンやローズマリーが必要なことだと言うので、渋々サリオンの背中に乗ったわけだが……。


 そうこうしてるうちに、帝国と王国の戦争が始まってしまった。


 当初の予想通り、王国は海軍を主力として800隻の軍船を差し向けてきた。

 対する150隻と少ないように感じられる軍船で迎え撃つらしい。



「だ、大丈夫だよな? 帝国の方が少ないみたいだけど……」



 アルカリオンやローズマリー、サリオンやエリザとエッチした夜。


 俺は帝国が技術的に有利だと理解していながらも、戦争の行く末が気になって眠れなかった。


 それを知ってか、同じように眠らずにいたアルカリオンに俺は話しかける。



「心配は無用です。王国軍の軍船は未だバリスタが主な武装であり、帆船。魔導エンジンの搭載により遥かに速い速度で進む帝国の足下にも及ばないでしょう」


「で、でもほら、物量って怖くない?」


「その点も大丈夫です。先日、ローズマリーから進言のあった飛竜母艦なるものを十隻建造し、実戦配備しましたので」


「え、もう?」



 驚いた。


 俺がローズマリーに竜母の話をしてからまだ一ヶ月も経っていないのに……。

 と思ったら、どうやら既存の軍船を改造して滑走路を取り付けたらしい。


 やはり海戦でもワイバーンを利用できるというのは圧倒的に有利なようで、すでに戦果報告が絶えないとのこと。



「手加減する余裕もあるようですね。王国軍船のマストを燃やし、航行不能にすることで敵味方共に死亡者は出ていないようです」


「そ、そうなんだ……」



 海軍に知り合いはいないけど、やっぱり人が死なないに越したことはない。


 戦争は終始有利に進んでいる。


 俺の名前を使ったことで王国に味方する国が減っていたのも大きな影響があるだろう。


 アガーラム王国は半ば孤立している。


 古くからの同盟国は渋々協力しているようだが、それも精々食料や武具の輸出程度で、軍隊派遣まではしていない。


 やはりどの国も大人しくなった帝国を攻撃して藪を突っつくような真似をしたくないのだろう。


 ヘクトンから王位を奪還するという名目は他国が報復戦争に参加しない理由としては十分なようだった。



「でも、この調子なら俺の出番は無いんじゃ?」


「そうでもありません。海戦は重要ですが、結局戦争で物を言うのは敵地を占領する陸軍です。王国が本格的に陸軍を出してきた時が坊やの出番です」



 ……あー、何となくアルカリオンの狙いが分かったかも知れない。


 俺は陸軍なら知り合いが多い。


 最前線で戦っていた時、俺を気にかけてくれた元国王派の人が多かったのだ。


 あ、ここで言う国王派の国王はヘクトンじゃなくて俺の父親な。

 ヘクトンが王になり、ヘクトンマッマが実権を握って俺と同じく最前線送りになった人たちだ。


 彼らなら俺が武装解除をお願いしたら、聞いてくれそうではある。


 でも、上手く行くかなあ?



「今から不安だ……」



 俺がそう言うと、アルカリオンは無言で俺を抱き締めた。


 そして、頭をナデナデしてくる。



「な、なんだ? 急にどうしたんだ?」


「安心なさい、坊や。いざとなったら私が全てを無に帰します」


「いや、そこまではしなくても……」



 アルカリオンが全力を出したら本当にできてしまいそうなのが怖い。



「ならばいっそ、全てを放り出して逃げましょう」


「え?」


「娘たちも連れて、皆でどこか小さな島で暮らすのです。きっと、楽しいですよ」


「……そう、だな。それも悪くないかも」



 冷静に考えてみたら、そもそも王子という立場が俺には重かったのだ。

 前世では平凡だった男がいきなり王子様とか無理に決まっている。


 アルカリオンの提案は魅力的だった。


 でもそれは、無責任な選択でもあるような気がしてしまう。



「うーん、でもやっぱりナシで。そういうのは暇になったらやろうよ」


「暇、ですか」


「そうそう。やること全部やっちゃって、のんびり過ごしたくなったら。セカンドライフって奴? 今は色々と忙しいし」


「……たしかにそうですね。はい、そうしましょう」



 他愛ない話をして、時間が過ぎて行く。


 俺はこういう時間が結構好きなようで、いつまでも続いてほしかった。


 一方その頃、アガーラム王国では――







―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「エッチな女の子が嫌いな男はほぼいない(例外はある)。作者は大好きでござる」


レ「誰も聞いてない……」



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