第21話 捨てられ王子、取り引きする





 結論から言おう。


 勝負の結果は俺の圧勝だった。いや、本当にまじで圧勝だ。


 何故この程度で喧嘩を売ってきたのか分からないレベルで幼女は雑魚だった。



「ゆ、油断したのじゃ♡ こ、小僧、お主さては竜狩りの末裔じゃなっ♡」



 違います。


 と、言いたいところだが、どうも幼女の話をまとめるとそうでもなさそうな気がしてきた。


 竜狩りの一族はその昔、強大な竜をある手法によって打ち倒してきた一族らしい。


 その手法というのが、いわゆるハニートラップ。


 男の竜狩りはメスの竜を篭絡し、女の竜狩りはオスの竜を虜にする。


 たしかに俺はアルカリオンのような竜や、ローズマリーのような竜の血を引く者から好意を持たれやすいような気がしなくもない。


 もしかして本当に俺は竜狩りの末裔だったりするのだろうか。


 いや、それよりも今は……。



「おら!! さっき俺を殺そうとしやがった仕返しだ!!」


「あひっ♡ ゆ、許して欲しいのじゃあっ♡」



 俺は珍しくオラついていた。


 アルカリオンやローズマリー、エリザとする時はこってりと搾り取られる。


 あまりこちら側から責めることが無いのだ。


 なんかこう、あんまり乱暴なことして嫌われたら嫌だし。


 まあ、彼女たちなら普通に受け入れてくれそうだが……。


 でもこののじゃロリメスガキに遠慮する必要は無い。

 嫌われようが構わないし、さっき殺されかけた仕返しもしたいからな。


 そういうわけで、俺は温泉でのじゃロリメスガキと甘い一時を過ごした。


 そしたら、なんか好かれてしまった。



「あ、あの、近い……」


「むふふ、気にするな。儂と小僧の仲ではないか」


「仲って、まだお互いに名前も知らないでしょ」


「おお、そうじゃったな。儂はサリオン。このダンジョンの主なのじゃ。さあ、小僧の名を教えるのじゃ」


「……レイシェルだ」



 サリオンと名乗った幼女が俺に腕を絡めてくる。


 ぷにぷにの柔らかい肌が触れて、ちょっと気持ち良かった。



「ところで小僧、お主は何故ここにおるのじゃ? ここは普通の方法では辿り着けん場所じゃというのに……」


「あー、それがかくかくしかじかで――」


「ふむ」



 俺はダンジョン内にあった転移トラップに引っかかって温泉に来てしまったことを説明した。



「なるほどのぅ。まーたダンジョンが勝手に構造を変化させよったか」


「え、ダンジョンって構造が変わるの?」



 俺の問いにサリオンは頷いた。


 どうやらダンジョンというのは、その存在自体が一種の魔物らしい。


 原種はミミックのような物に擬態する魔物で、人間を宝や資源で誘い込み、体内に発生させたモンスターで仕留める。


 たしかにダンジョン内で死んだら人も魔物もダンジョンに吸収されるって聞いたことがあるな。


 なるほど、ダンジョンって生き物だったのか。



「……ええと、まあ、ダンジョンの話は一旦置いておくとして」


「む、なんじゃ?」


「実は俺、アルカリオンからのお使いでダンジョンに来たんです。ローズマリーと一緒に」


「!?」



 アルカリオンの名前を聞いた途端、サリオンは目をカッと見開いた。


 この反応、やっぱりサリオンがアルカリオンの言っていた人物に間違いない。


 サリオンが動揺を隠しながら訊ねてくる。



「ど、どういう用件なのじゃ?」


「あ、アルカリオンから手紙を預かってたんですけど、ローズマリーが持ってまして――」



 その時だった。


 湖の周辺の岩壁の一部が破壊され、その奥からローズマリーが飛び出してきた。


 目立った怪我は無いが、息切れが激しい。


 取り敢えずローズマリーに『完全再生』を使おうとしたら、こちらが何かする間も無く抱き着かれておっぱいに頭を埋められてしまう。


 なんか前にも似たようなことあったな……。



「レイシェル!! 怪我はないか!?」


「あ、うん。平気平気」



 いや、一回腕切断してるけど、もう回復したからノーカンだろう。



「おお、ローズマリーか。久しいのう」


「っ、お、お祖母様!?」


「……お祖母様? え、ってことは……」


「あ、ああ。こちらのサリオン様は、私のお祖母様に当たる人物でな」



 そう言うと、ローズマリーは俺にこっそり耳打ちしてきた。



「本当に大丈夫だったのか!? お祖母様は相当な人間嫌い、というか嬲るのが趣味の残酷な方だ。何もされなかったのか?」


「いやあ、されたっちゃあされた? けど、良い思いもさせてもらったというか……」


「? それはどういう――」



 と、さっきの出来事を話そうとしたタイミングでサリオンが俺の腕を引っ張った。


 そして、こちらもこっそり耳打ちしてくる。



「の、のう、お主。ローズマリーと随分親しげじゃが、どういう関係なのじゃ?」


「あ、妻です」


「!?」


「ちなみにアルカリオンも妻です」


「!?」



 アルカリオンの母なら竜の眼で色々と分かりそうなものだが、サリオンはそういう力をあまり使わないのかも知れない。


 俺の話を聞いて驚愕しているようだった。


 そして、俺とローズマリーたちの関係を知って額に脂汗を浮かべている。



「の、のう、小僧。儂がお主にしたことは黙っておいてくれんか?」


「え?」


「い、いや、ほら、その、あれなのじゃ。孫に嫌われるのは嫌なのじゃ。アルカリオンも怒らせたら怖いしの」


「……ふーん?」



 俺の反応にちょっと焦り始めるサリオン。



「よ、よし、分かったのじゃ。取り引きしようではないか」


「取り引き?」


「うむっ、儂の身体を好きにして構わんぞ? ほれ、お主も気持ち良さそうに使っておったじゃろう?」



 そう言ってサリオンが俺に微かな膨らみを感じさせる柔らかい胸を押し付けてきた。


 俺は思わず生唾を飲み込む。



「ま、まあ、別に怪我も元通りだし、わざわざ言うことはしないよ」


「っ、感謝するぞ、小僧!! お主、よく見たら儂好みの可愛い顔をしておるのう!! 儂の婿にしてやっても良いぞ!!」


「……のじゃロリ妻、か」



 ちょっと想像して良いなと思ってしまった。


 いやいや、俺にはローズマリーやアルカリオン、エリザがいる。


 これ以上はダメだろう。


 ……いや、でもアルカリオンが作った法律では俺は複数人を妻にできるって話だし、不可能ではないのか。



「さっきから二人で何を話しているのです、お祖母様?」


「何でもないぞ、ローズマリー!! わはは!!」



 サリオンが俺の頭を撫で撫でしてくる。


 なんだろう、ロリっ娘に頭を良い子良い子されるのは少し不思議な気分だ。

 

 アルカリオンも頻繁に俺の頭を撫でてくるが、親子揃って人の頭を撫でるのが好きだったりするのだろうか。



「っと、そうじゃった。ローズマリー、儂にアルカリオンからの手紙があるのじゃろう?」


「あ、はい。こちらです」



 ローズマリーからアルカリオンの手紙を受け取り、その中を読み始めるサリオン。



「……むぅ」


「な、何が書いてあったのですか?」


「アルカリオンめ、母たる儂をとことんコキ使う気じゃのう。まあよい。あ奴のわがままは今に始まったことではないからの」


「えーと?」


「ほれ、お主らも読むと良い」



 俺とローズマリーはサリオンから手紙を受け取り、二人でその中を読む。


 すると、驚きの事実が判明。



「どうやらアルカリオンは、儂をアガーラム王国との戦いで使う最終兵器にしたいらしいのじゃ」



 素直に言おう。


 オーバーキルすぎる。だってアルカリオンのお母さんなんだぞ?


 前にアルカリオンが暴走して真竜になった時は恐ろしく巨大な竜だった。

 仮にサリオンがあのサイズの竜になったら対空魔法はほぼ効かないと思って良い。


 ただ羽ばたいただけでも竜巻が起こって王国には壊滅的な被害を与えることができるだろう。


 俺としては、仮にも生まれ故郷だ。


 俺を追い出したヘクトンはともかくとして、民衆に被害を出したくはない。


 これはちょっとアルカリオンとお話した方が良いかも知れないな。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「ロリに頭をナデナデされて癒されたい」


レ「分かる」



★お知らせ☆

新作『最強だった悪役魔導士が生活魔法を極めたら規格外のぶっ壊れ性能で最凶に返り咲くっ!』を投稿開始しました。時間に余裕がありましたら、そちらもご覧ください。こちらも割と癖を出す予定です。


「サリオン可愛い」「孫には嫌われたくないのか」「あとがきで頷いた」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。


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