第18話 捨てられ王子、ダンジョン街の領主に挨拶する





 魔導列車に揺られること五時間半。


 俺はローズマリーやその他十数人の護衛と共に魔石が採れるダンジョンがある町までやってきた。



「お、おい、レイシェル。やはり帰らないか? ダンジョンは危険だし、お前にもしものことがあったら……」


「大丈夫大丈夫。生き埋めにならない限り死なないから。それにアルカリオンからのお使いだってあるし」


「ぐっ」



 何やらローズマリーの様子がおかしい。


 どうにもダンジョンに行くのを嫌がっているというか、ダンジョンのある町に行きたくないように見える。


 俺の知らない事情があるのだろうか。


 でもまあ、どのみちアルカリオンはローズマリーにお使いをお願いするみたいだったし、気にしない方針で行こう。



「ほら、早く行こう!! まずは領主に挨拶に行くんだっけ?」


「あ、ああ、そうだ。……一つ言っておくが、ここの領主は気難しい人物だから、あまり刺激するようなことを言ってはならないぞ?」



 仮にも王子だったからな、そこら辺の良識はあるとも。

 というわけで俺たちは駅から領主の屋敷にまでやってきた。



「ところでローズマリー。気難しいって言ってたけど、領主ってどんな人?」


「あー、まあ、見てもらった方が早い。色々と苛烈な方ではあるが、悪い人ではないのだ」


「?」



 濁すようなローズマリーの言葉に俺が首を傾げていると、不意に客室の扉が開かれた。


 バタンッ!!


 あまりの勢いに扉が壊れて、木片が辺りに飛び散った。

 その扉の向こう側に立っていたのは、淡い水色の髪をした美少女。


 年齢は十五、六歳くらいだろうか。


 二つの果実はローズマリーやアルカリオンと比べると慎ましく感じられるが、一般的に見ると大きな方だろう。


 少しクールな印象の少女である。


 履いている靴のヒールが高く、めっちゃ歩きにくそうだった。



「よく来たわね、愚妹。歓迎してあげるわ」


「お、お久しぶりです、ブルーメ姉上」



 姉上。……姉上!?


 も、もしかしてこのスレンダー美少女がローズマリーのお姉さん?


 まあ、この街は帝国を支えている重要な資源の産地なわけだし、皇族が領主として管理するのはおかしくないか。


 でもそういうことは先に言って欲しかったな!!



「で、そっちのガキは?」



 この人、口が悪いな。


 いやまあ、口が悪いだけで悪意や害意のようなものは感じないから別に良いけど。



「彼はレイシェル。この度、私と母上の夫になった者です。式はまだですが、近いうちに行う予定ですので、都合が合えば――」



 あ、そうそう。


 実は俺とローズマリーとアルカリオンの結婚式はまだ行っていない。


 というのも、色々あったからな。


 延期に延期が重なってしまい、未だに行えずにいるのだ。



「……そう、アナタが……アナタが私の可愛い愚妹とお母様を誑かした男なのね」


「あ、いえ、誑かしたというか、私や母上が迫ったというか……」


「細かいことは良いのよ。ちょっとアナタ」



 俺は緊張する。


 ブルーメから明らかにこちらを試すような、どこか鋭い視線を向けられたからだ。



「一つ、正直に答えなさい。嘘偽りを述べたら半殺しにするわよ」


「ブルーメ姉上!!」


「愚妹は黙っていなさい。私はそこのガキに訊いているのよ」


「っ、な、なんですか?」



 ブルーメが真剣な面持ちで俺に問う。



「アナタは愚妹のどこが好きなのかしら? お母様のどこが好きなのかしら? いえ、そもそも二人の何が理由で好きになったのか、正直に言いなさい」


「……それは……」



 二人のどこが好きなのか。切っ掛けは何か。


 答えようと思えばいくらでも答えられるが、そういうことではないだろう。


 ローズマリーのカッコイイところ、アルカリオンの愉快なところ……。


 いや、違う。


 そういう内面も好きだが、それは切っ掛けではない。

 最低かも知れないが、軽蔑されるかも知れないが、嘘偽りは言いたくない。



「おっぱいです!!」


「!?」



 ローズマリーが「この場で言うか!?」みたいな顔をする。


 対してブルーメは、俯いていた。


 顎に手を当て、口元を隠しながら震えている。怒らせてしまったかも知れない。



「アナタね……」


「ブルーメ姉上!! 違うのです!! レイシェルはこういうところがありますが、決して悪気があるわけではなく――」


「――分かってるじゃない」


「え゛?」



 俺の発言に対し、ブルーメは頷いた。



「そうよ。愚妹は堅物なくせに可愛いもの好きっていうギャップが良いけど、高い身長とばいんばいんのおっぱいが良いのよ。柔らかいし」


「え、揉んだことあるんですか?」


「当たり前じゃない。愚妹のおっぱいは私のおっぱいよ」


「違いますよ!?」


「なるほど」


「レイシェル、何が『なるほど』なんだ!?」



 合点が行った。


 ローズマリーはおっぱいが弱点なのは、このお姉さんに昔から揉まれていたからか。


 ありがとうございます、お姉さんのお陰で夜が楽しいです。



「お母様もそうよ。お茶目なところも可愛いけれど、あのけしからんおっぱいよ。大きさは愚妹以上、柔らかさも抜群。エッチすぎるわ」


「分かる」



 俺は確信した。


 このブルーメという女性は、見た目こそ絶世の美少女。


 しかし、その中身は変態エロオヤジだ。友達になれると思う。



「い、いい加減にしてください!! ほら、レイシェル!! ダンジョンに向かうぞ!!」



 ローズマリーが顔を耳まで真っ赤にしながら、俺の腕を引っ張った。


 すると、ブルーメが待ったをかける。



「まあ、待ちなさい愚妹」


「こ、今度はなんですか?」


「もう一つ、そっちのガキ――いえ、レイシェルに訊きたいことがあるわ」



 部屋から俺を連れて出て行こうとするローズマリーを呼び止めるブルーメ。



「レイシェル。――貴方はおっぱいとお尻、どっちが好み?」


「もう行くぞ、レイシェル!!」


「どっちも大好きです!!」


「答えなくて良い!!」


「気が合うわね!! 私もおっぱいもお尻も好きよ!! あと太もももイケるわ!!」


「それな!! 腋も!!」


「アナタ最高ね!!」


「もう黙ってください、ブルーメ姉上!! レイシェルもいちいち賛同するな!!」



 こうして俺は領主への挨拶を終え、ダンジョンへと向かう。


 ちなみにブルーメとはそれ以降、手紙でやり取りするようになった。


 後で酔っ払ったアイルインから聞いた話によると。

 ブルーメは無類の女の子好きらしく、少し前に女性関係でトラブルを起こしたそうだ。


 仕事はできる優秀な人材なため、アルカリオンが領主としてダンジョンのある街に派遣したのだとか。


 どうしてこう、アルカリオンの血筋は愉快な人が多いのか。


 ……アルカリオンが愉快だからか。


 俺とアルカリオンの間にできる子も愉快な子だったりするのかも知れない。

 ローズマリーとの子は、やっぱり真面目なのだろうか。


 エリザは……うん。破天荒な子が生まれてきそうではある。


 そんなことを考えながら、俺はダンジョンに潜り、最奥にいるという人物にアルカリオンの手紙を届けに行くのであった。








―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「拙者、美少女の猥談に興奮する侍」


レ「分かる」



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