第4話 捨てられ王子、女帝を治療する
一糸まとわぬ姿となったドラグーン帝国の女帝は、本当に美しかった。
女神という言葉が似合う女性を俺はこの女帝以外に知らない。
何より特筆すべきは2mを優に越えているであろう身長だ。
俺は長身フェチではなかったが、ぶっちゃけ目覚めそう。
身長に合わせておっぱいも大きいのが特に素晴らしい点と言える。
もしかしたら長身は竜人の特徴なのだろうか。
ローズマリーも2m近い身長があるし、可能性はあるな。
「レイシェル殿? 早く母の、女帝陛下の治療を始めてもらいたいのだが……」
「あ、は、はい。すぐに始めます」
俺は女帝の身体に手を伸ばした。
先に言っておくが、これから行うのはやましいことではない。
あくまで治療行為なのだ。
呪いは毒と同じように全身に巡るため、治療するには身体の端から端までお触りしまくる必要がある。
「まずは足から……」
足、太もも、腰、おっぱ――胸、腕……。
少しずつ『完全再生』でその身に巣食う呪いを取り除いて行く。
何も難しいことはなかった。
「後は……」
俺は女帝の頬を両手で挟むように触れる。
そして、『完全再生』で呪いを全て取り除いた、その次の瞬間だった。
「あ、えーと……」
「……」
「お、おはようございます?」
女帝の目が開き、黄金の瞳が俺を真っ直ぐ見つめている。
視線がかち合って気まずい。
と思ったら、女帝は俺もローズマリーも想定していなかった行動に出る。
俺の腕を掴み、ぐっと引き寄せたのだ。
そして、その夏場のスーパーに売っている大玉スイカよりも更にデカイおっぱいに頭を埋められてしまう。
俺は息が出来なくてもがき、谷間から見上げる形で視線を交差させた。
「坊やが私を目覚めさせてくれたのですね?」
「あ、えっと、はい」
「感謝します、坊や。つかぬことお聞きしますが、坊やには好いている女性や婚約者はおられますか?」
「え? い、いえ、今はいないですけど」
女帝のあまりにも突然すぎる意味不明な質問に俺は正直に答える。
すると、女帝はクールな表情をピクリとも動かさないで俺の頭を優しく撫でながら言った。
「では坊やを我が夫とします」
「……え?」
「は、母上!? な、何を仰っているのですか!?」
「おや。ローズマリー、いたのですね。心配を掛けました。母はこれから夫と甘い一時を過ごしますので、少し席を外すように」
「ツッコミどころが多すぎますッ!! レイシェル殿も何故抵抗しないのか!?」
そりゃあ、ねぇ?
少し身長に差はあれど、女神みたいに綺麗なお姉さんから「夫になれ」と言われたら抵抗しないに決まっている。
というか女帝さんからふわっとした超良い匂いがするんですけど!!
冷静に考えてみたら、ローズマリーは第七皇女らしいし、ということはこの美人なお姉さんが七人も子供を産んでいることになるのか。
なんだろう、新たな扉を開きそうだ。
などと考えていると、女帝さんは俺の頭を撫でながら、やはり表情を変えずに言う。
「坊やの名はレイシェルと言うのですね。素敵な名前です。私はアルカリオン。神聖ドラグーン帝国の女帝です」
「何を自己紹介しているのですか!! レイシェル殿も一旦母上から離れるのだ!!」
女帝さん、アルカリオンに抱き締められていた俺をローズマリーが無理矢理引き剥がす。
ああ、もう少しあのおっぱいに顔を埋めていたかったのに……。
少し名残惜しいが、ローズマリーの目が怖いのでふざけるのはここまでにしよう。
「母上、急にどうしたのです!? もう少し他にあるでしょう!? ましてやレイシェル殿を夫にするなどという冗談は――」
「ローズマリー。母は生まれてから冗談を口にしたことはありません。坊やを我が夫とするのは本気ですし、決定事項です」
「せ、せめてその結論に至った過程を話してください!!」
「……そう、ですね……」
あー、いるよね。
頭の中で完結しちゃって端から見ると突拍子も無いことやってるように見える人。
どうやらアルカリオンはそういうタイプの人間らしい。
「……ずっと、暗闇の中にいました」
「母上?」
「どこまで歩いても暗い。何も見えない。聞こえない。私の永き命も遂に潰えるかも知れないと覚悟しました。その時でした」
アルカリオンが俺を見つめながら言う。
「眩しい光が暗闇に差し込んだのです。光に向かって真っ直ぐ進んだら、こうして目が覚めました。そして、目を開いたらこの坊やがいました」
「なる、ほど」
俺は少しピンと来ないが、ローズマリーには何となく分かったらしい。
アルカリオンは再び俺を抱き寄せて、頭をめちゃくちゃナデナデしてくる。
おうふっ、美人なお姉さんに抱き締められながら頭を撫でられるとか、最&高にもほどがあると思います。
そして、アルカリオンがぶっちゃけた。
「まあ、ぶっちゃけて言うなら、私は坊やに一目惚れしました。好き好きメロメロゾッコンラブちゅっちゅっ、です」
「母上、真顔で言わないでください!!」
無表情で少し冷徹な印象を受けるが、もしかしてアルカリオンって実は愉快な人だったりするのだろうか。
「ローズマリーは母が坊やを夫にすることに反対ですか?」
「は、反対というか、お二人は出会ったばかりでしょう!? そういうのはもっと、お互いのことを知ってからで……」
「なるほど、一理ありますね」
アルカリオンがコクリと頷いて、ローズマリーが安堵する。
俺は少し残念だった。
「坊や」
「あ、はい。なんですか?」
「私は一途で尽くすタイプです。夫は七人いましたが、それは過去のことで、今は未亡人です。これからは坊やだけを愛すると誓います。あと今後は私が坊やを養うので、常に私の側にいなさい」
「え? あ、えっと、え?」
「というわけなので、これからもっと母のことを坊やに知ってもらうため、今から子作りをします。ローズマリーは退席するように」
「母上!?」
すっごい俺を抱こうとしてくる……。
いやまあ、極上の美女に求められるとか男冥利に尽きることかも知れないが。
と、その時。
「……ふむ」
無言でアルカリオンがローズマリーをじっと見つめ始めた。
アルカリオンの黄金の瞳が光っている。
「……なるほど、そういうことですか。たしかに事を急ぎすぎましたね」
「え? あ、そ、そうですか。お分かりいただけたなら良かっ――」
「ローズマリーも坊やに危ないところを救ってもらって惚れているとは――」
「わー!! わー!! レイシェル殿!! 貴殿を客室まで案内しよう!! 貴殿は陛下の命の恩人だ!! 最上級のもてなしをするぞ!!」
ローズマリーが大声で叫びながら俺の首根っこを掴み、そのまま引きずってアルカリオンの部屋から無理矢理出されてしまった。
その際、アルカリオンの呟くような独り言が少し聞こえてきた。
「可愛い娘が慕う殿方を奪うのは忍びないですね。いえ、いっそのこと二人で坊やを共有するというのも有りでしょうか。ふむ、法を変える必要がありますね……」
アルカリオンの表情はやはりピクリとも動かないが、その目は本気だった。
というか、ローズマリーも俺を慕っているというのは本当なのだろうか。
母娘から好かれてしまうとは、俺は罪な男だったようだ。
それからまあ、色々とあって俺は女帝アルカリオンの客人として神聖ドラグーン帝国で最上級のもてなしを受けることとなった。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「アルカリオンは作者の癖が詰まったキャラ」
「アルカリオン可愛い」「ローズマリー可愛い」「この作者、あらゆる癖を持ってやがる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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