第2話  少年達は、家から出ない!

「カズナリ様、宿題は終わりましたか?」


 カズナリの腰までの身長しかないロボットが語りかけてくる。育児・教育・家政婦を兼務する万能ロボットだった。


「ああ、宿題ならもう少しだよ、アーリー」

「わかりました、夕食の時間になったら、また来ます」


 ロボットはカズナリの部屋から移動していった。


「ふー!」


 カズナリは大きく息を吐き出した。先程外した仮面を手に取る。カズナリはライ達とは仲閒だが、素顔は知らない。みんな、個人情報保護のため仮面をつけて外に出る。先程の戦闘中も、皆、それぞれ仮面をつけていたのだ。みんなの素顔は互いに知らない。


 カズナリは、宿題を始める。カズナリは、まだ中学1年生なのだ。

 宿題が終わった頃、ロボットのアーリーがカズナリを呼びに来た。


「カズナリ様、夕食のお時間です」


 カズナリは、下の階のダイニングまで降りた。そこで、家族と顔を合わす。カズナリは一人っ子で、両親と3人暮らしだ。夕食の時だけ、家族の時間が持てる。


「カズナリ、最近、疲れているんじゃないか?」

「大丈夫だよ」

「何か悩んでいるんじゃないのか?」

「大丈夫だよ」

「家族の時間がとりにくい時代だが、お前はカワイイ息子なんだ、何かあれば遠慮無く相談しろよ」

「マサナリ様、カズナリ様に悩み事が出来た時は、私が相談に乗ります」

「だがな、アーリー、お前はロボットじゃないか?」

「私は、どんな相談事でも何億パターンもの解答例を知っています。そして、その解答の中から1番適した解答を導き出すことができます」

「ロボットのくせに、何を偉そうに!」

「私達は、最新のパーフェクトロボットです。私達の能力を疑うのですか? それとも、私達を登用している社会のシステムへの批判と受け取っても良いのでしょうか?」

「わかった、もう何も言わん」

「ご馳走様でした」

「もう部屋に戻るのか?」

「うん、風呂に入るよ」

「そうか」


 風呂から上がると、カズナリはスグに寝てしまう。特殊能力を使う戦闘は、すごく疲れるのだ。


「カズナリ様、朝です。朝です」

「うーん」

「カズナリ様、起きて支度をしてください。顔を洗って歯を磨き、髪を整えましょう」


 カズナリは、まだ眠いのだが起き上がる。顔を洗い、歯を磨き、髪を整えて、着替える。それから、登校する。登校すると言っても、外出するわけではない。学校は、オンライン、3Dアバターとなってパソコン上の通学だ。


 それぞれ、健康パラメーターが表示され、健康状態が一目でわかる。カズナリのゲージはいつも低めだ。要するに、いつも疲れていることになる。


「カズナリ君、今日も元気ないのね?」


 クラスメイトのアダチが、毎朝心配して声をかけてくれる。


「病気じゃないよ、少し疲れているだけ」

「いつも疲れているわね、大丈夫?」

「大丈夫、心配してくれてありがとう」


 カズナリは席に着く。そして、今日も興味の無い授業が始まる。



 放課後を迎えた頃には、カズナリの元気ゲージも上がっていた。一日中、居眠りをしていたから、体力が回復したのだ。


「あ、やっちまった」

「カズナリ君、ずっと居眠りしてたんだね」

「ああ、アダチさんか。これは、流石にマズイよなぁ」

「大丈夫、ノートを見せてあげるから」

「本当か? 助かるよ」

「カズナリ君の家のパソコンにデータで送っておくから」

「ありがとう、感謝するよ」

「今日はよく眠った方がいいよ」

「わかった、じゃあ、また明日」

「うん、また明日」



 中学に入学してから、カズナリはアダチに助けてもらうことが多かった。カズナリは、密かにアダチに好意を抱いていた。アダチの素顔は、知らないのだけど。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る