第3話  少年達は、苦戦する!

 カズナリは、学校からログアウトした。まだ眠い。

 だが、カズナリはアーリーに、


「集中して宿題をするから、あまり部屋には来ないでね」


と告げて、こっそり家の鍵を開けて外へ出た。両親は在宅ワークで部屋に閉じこもりきりだ。


 この世界の超能力者は、基本的に1つの能力しか使えない。カズナリのように、2つの能力を持つ超能力者は希だった。そもそも、超能力者の出現自体が希なのだ。


 カズナリは、仲閒の家の鍵を順番に開けていった。仮面の戦士達が揃っていく。そして、今日の戦いが始まる。それが、カズナリ達の日常だった。外の怪異に、皆は気付いていない。だが、自分達は気付いてしまった。気付いた以上、見過ごすことは出来ない。


「今日の相手は誰だ?」

「沢山いるから、どれでもいいような気がするんだけど」


 ライとハクが話している。この4人チームのリーダーはライなのだ。


「カズナリ、やっぱりどうせならメジャーな妖怪が相手の方がいいよなぁ!」

「僕は、なんでもいいよ。標的はライが決めてくれ」

「お! あの和服の婆さん、もしかして砂かけ婆じゃないのか?」

「人に砂をかけて驚かせる妖怪だ」

「流石、ハクはよく知っているな」

「カズナリ、あの婆が標的だ」

「わかった。シン頼む」

「おう」

「おらー!火球だ」


 ライの火球は、砂かけ婆の砂のバリアーに防がれた。


「なんで、あんな砂の壁で防げるんだよ!」

「砂や土は火を消す。相性が悪いぞ、ライ」

「なんで早く言わなねーんだよ、ハク」

「すまん、今、気付いた」


 次の瞬間、砂かけ婆の放った砂がライの身体を包んだ。


「なんだ?この砂、おかしいぞ」

「身体が痺れる、ハク、一度降りてくれ」

「わかった」


 地上に着くと、砂を浴びたライが仰向けに寝転がった。


「しびれ薬だ、カズナリ、シン、気を付けろよ」

「わかった。シン、行くぞ」


 一度舞い上がり、カズナリはまずじっくりと追い風を作った。砂も向かい風なら上手く扱えないだろう。


「かまいたち!」


 疾風が走り、婆の和服がズタズタになった。トドメを刺そうとした時、何かが婆の前に立ち塞がった。風をものともしない小柄な人物。それは、おそらく子泣き爺だった。石のようになった爺は、婆の手を取ると走り出した。


「何してんだよ、カズナリ。早く追いかけろよ」

「いや、子泣き爺は石のようになる。風も炎も通用しない。今日はここまでだ」

「畜生、悔しいなぁ」

「それより、ライの具合はどうなんだ?」

「ああ、良くないないな。どんどん痺れがきつくなってくる」

「シン、ドクターを呼びに行こう」

「了解!」


 ドクターというのは、どんな傷も病気も治す能力の持ち主だ。ドクターがいてくれるから、カズナリ達は妖怪退治に専念できるのだ。しかし、そのドクターも、自分で家の鍵を開けることは出来ない。だから、カズナリが着いていく。


 ドクターを連れてシンの上に2人乗りで戻ると、ライはぐったりしていた。


「ドクター、お願いします」

「ああ、まかせておけ」


 1時間後、ライは復活した。その日の任務は収穫無しだった。まあ、そういう日もあるさ。それより、再び子泣き爺が現れたらどうしよう? 考えることは沢山あるが、とりあえず、皆、家に帰って休むのであった。


 また、いつも通りの朝を迎え、オンライン通学で教室へ。


「どうしたの、カズナリ君。いつもにも増して元気無いよ」

「ああ、寝不足なだけ。気にしないで」

「授業中に寝ちゃったら、後でノートのコピーを送るからね」



「いつも、ありがとう」







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