第二話 戦闘開始!
「マルコ、やるよ!」
「
私の声に、マルコが応じる。
「
アナウンスと同時に、装甲表面に魔力の膜がぶわっと広がっていき、マルコの身体全体を包み込む。
錆の浮いた鈍色の装甲が、青白い光を帯び始めた。
「マルコ、シルフィード・エッジを!」
「
マルコの装甲の一部が、パカッと開くと同時に。
装甲内に格納されエネルギーを充填していたシルフィード・エッジが、「カシュッ!」と小気味良い音を立てて四機一斉に飛び出してくる。
白い矢じりのような形をしたシルフィード・エッジたちは、私の周囲をくるりと一周回った後、
「モード:アサルト、いっけぇ!」
私の指示に従い、先端から薄緑色の刃を生やして四機一斉に飛翔・突撃した。
対する漆黒の巨躯を持つ『熊』のオバケ――チェルノボグは、それらを一気に薙ぎ払おうと腕を振るう。
が、シルフィード・エッジたちは瞬時にバラバラの方向に散開してそれを回避。
続けて四機がそれぞれの別の角度から突入し、相手の身体に次々と刃を突き立てた!
……と、思いきや。
「なっ!?」
薄緑色の刃は相手の身体に触れたか所から、ジュッと鉄板の上のバターみたく溶けるようにして消えてしまった。
相手の身体を覆う見えない膜……不可視のバリアのようなものに阻まれているようだ。
「ッ、それなら!」
シルフィード・エッジ各機に素早く距離を取らせ、別の攻撃を叩き込む!
「モード:ニードル!」
半分ほどに欠けた薄緑色の刃が消失し、その先端からは代わりに薄緑色のビームが発射される。
ビームは次々と相手の身体に命中するが……やはり体表でパッと光って霧散し、消えてしまった。
「くっ……!」
「KEoo!!」
周囲を飛び回るシルフィード・エッジを叩き落とそうと、鋭い爪がブォンブォンと振るわれる。
二階建ての家並みのデカさの相手に比べれば、シルフィード・エッジなんて羽虫みたいなものだ。
ちょっとでも攻撃が掠れば、一巻の終わり。
私は脳内で必死に指示を出し、攻撃を回避させる。
そして隙を見ては、爪や腕に向け至近距離から魔導エネルギー砲:ニードルをカウンター気味に撃ち込んだ。
だが結果は同じ。
攻撃はすべて、相手のバリアで阻まれる。
……アサルトもニードルも、魔力による攻撃だったはず。
……魔法攻撃は効かないってこと? だったら!
さっと手を振ってシルフィード・エッジ四機を自身の周囲に戻し、続けて命じる。
「マルコ、MG8《エムジーエイト》!」
「
――バガガッッ! バガガガガガガガッッ!
重い破裂音が続けざまに生じ、私の耳朶を激しく叩く。
マルコの胴体上に設置されている車載機関銃、MG8の連続射撃だ。
銃口が火を噴き、飛び出した鈍い金色の
「KyAoO!!??」
思った通り、相手が身体の表面に纏っていた不可視のバリアは、物理攻撃には耐性がなかったらしい。
放たれた鉄の礫は、次々と『熊』のオバケの身体に着弾。
剛毛に覆われた表皮のあちこちを抉った。
「よしっ、効いてる!」
――バガガガガガガッッ!!
マルコがさらに畳みかける。
チェルノボグは腕を盾に顔を守るような姿勢を取り、後ろに向けて一歩、二歩と後退。
明らかに攻撃を嫌がっている感じだ。
このままいけば倒せそう! と思った、その時である。
「KEOOooOOO!!」
チェルノボグが、青空に向け一際大きく咆えた。
と同時に、背中に生えている虹色の水晶みたいなのがバチン、バチンと光り輝き……。
その”虹色の水晶”を起点に、ぶわっと紫色の波動みたいなものが生じて周囲に広がっていく。
「な、何!?」
驚く私の目の前で、相手の身体からパラパラと何か小さく丸っこい物体が排出され始めた。
石畳の地面の上にキンッ! カンッ! と音を立てて散らばるそれは、見れば先程マルコが撃ち込んだ弾丸だった。
「た、弾が……傷が治っていってる!?」
相手の身体に与えた
くっと唇を噛む私を見て、チェルノボグは口角をニマァッと釣り上げ、嗤うような表情を見せる。
「Bu,Fu,Fu,Fu,Fu……」
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