第四章 ギルド登録と模擬戦闘
第一話 モーゼルさんのスーパーお説教タイム ①
「ここが、冒険者ギルド…」
衛兵隊長モーゼルさん特製・まごころお説教のフルコースを、心
私の姿は、冒険者ギルドの前にあった。
目の前には、茶色いレンガで組まれた丈夫そうな壁と、古い木でできたどことなく無骨な両扉。
ギルドのシンボルだろうか?
扉の上には、羽ばたく鳥の姿が掘りこまれた金属製のプレートがぶら下がっている。
前に依頼を出したことはあったけど…ギルドへの依頼の持ち込みはハルニアがやってくれていたので、直接顔を出すのは今回が初めてだ。
「さて、入ろっか」
「あ、うん!」
足を止めてぼーっと建物を見上げていたら、付き添いにきてくれたハルニアがふわりと微笑んで扉を開けてくれた。
遅れないように、私はシルフィード・エッジ四機を引き連れて一緒に中へと入る。
さて、今回冒険者ギルドにやってきた目的は、依頼の持ち込みとかじゃなくて私のギルド登録であるわけなんだけど…。
どうしてそんなことになったのか?
その理由を語るには、話を前日のモーゼルさんのスーパーお説教タイムの最中へと引き戻さないといけない…。
☆
「この際ハッキリ言うがな。このままだとお前、この街から追放処分になるぞ」
午後になって日が傾き、西日が強く差し込み始めたお説教部屋…もとい、衛兵詰め所の取調室にて。
必要なもの以外なんにもない殺風景なその部屋で、私は唐突にそう告げられた。
耳から入ってきた内容がショッキングすぎて、一瞬思考がストップしたのを覚えている。
体温がさぁっと下がる感じがして、冷たい汗が背中を濡らした。
……追放?
……それって、この街を出ていけってこと…?
「え、その…追放って。冗談、ですよね?」
「冗談でも何でもない。考えてもみろ」
四角い机を挟んだ向こう側から、モーゼルさんが不機嫌な目をこちらに向けて言う。
「得体の知れないデカい魔物を引き連れて街のあちこちを壊して周ったり、都市近郊の森をいきなり吹き飛ばしたり…どちらも死傷者がでていないのは幸いだったが、そんな事をする危険人物が住んでる街で、皆が安心して暮らせると思うか?」
「………」
「嬢ちゃんみたいな年若い女の子相手に、こんなキツいことは言いたくねぇが…この街を護る衛兵隊長としては、厳しい対応も考えざるをえん」
そう言われて初めて、私は今日自分がやらかしたことの重大さに思い至った。
…モーゼルさんの言う通りだ。
今日私がやったことは、けが人、死人が出ていてもおかしくない危ないことで、それを無自覚に繰り返すようでは街から叩き出されても文句は言えない。
視線が自ずと下がって、膝の上で握られた自分の両手が目に入る。
目の前の両手が…いや、自分の体全体が、小さく震えているのを感じた。
不安なのだ。
私はこの特殊体質のせいで、魔力が必要な日用品のすべてが使えないし、以前の記憶がまるっとないせいで世情にも疎い。
アルやハルニアから離されて、1人で生きていけるワケがない。それはもはや、死刑宣告にも近いのだ。
「だが俺も鬼じゃないからな。さっきも言ったが、運がいいことに、今日の件での人的損害はゼロだ。きちんと反省して、明日以降大人しくしていてくれるなら…」
「……」
モーゼルさんが何か言っているけど、さっきの話の衝撃が大きすぎて頭にうまく入ってこない。
少しでも落ち着こうと、胸元にぶら下がる八面体のペンダントに触れてみる。
なぜだかは分からないが、”これ”の存在を意識すると不思議と安心感が湧いてくるのだ。
……モーゼルさん、許してくれないかな。
思わずそんなことを考えながら、触れた右手でぎゅっとペンダントを握りこむ。
一瞬、ペンダントがチカリと光った気がして―…次の瞬間。
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