第二十四話 そして、二人は還る

「…で、その後は、アルさんをここに乗せて、しばらく走って…って感じです」


「ふむ…」


 ユキの説明を聞き終わり、アルは小さく唸って腕を組む。

 一方のユキは、目を伏せ表情を曇らせて、


「その、アルさん。ごめんなさい…」


「む?」


「その怪我、私を庇おうとしたせいですよね…?」


「…」


「私、こんなことになるなんて思ってなくて」


「…気にするな。仕事クエストだ」


 これも仕事クエストのうち。

 むしろ護衛対象を守り切れず、危険に晒してしまったこちらにこそ非がある。

 だから、依頼者たるユキはそんなこと気にする必要はない。

 

 …そんな意図を込めての一言だったが、うまく伝わっていないのか、ユキの表情は暗いままだった。

 

 だがそんなことは些事だと思考から切り捨てて、アルは眉根に皺を寄せたむっすり顔で思索を始める。

 

 ……しかしこれは、考えるべきことが多すぎるな。

 

 本来の行動原理を無視し、ユキを執拗に狙う魔物ども。

 ユキの目覚めとほぼ同じタイミングで、各地の遺跡で復活し始めた古代兵器オルト=マシーナたち。

 突然現れ襲い掛かってきた、冒険者狩り・マンイーターを名乗る少年。

 そして、ユキに付き従い、守ろうとする古代兵器オルト=マシーナの登場。


――…この世界で、何かが起ころうとしている。


 そう感じずにはいられなかった。

 それが何かは、全く分からないが。

 

 何か、自分の手には負えないような…とても大きな何かが動き出す気配を、アルは確かに感じていた。

 

 ふと周囲を見渡せば、疾走する古代兵器オルト=マシーナは森を抜け、ちょうど平野へと差し掛かったところであった。

 

 木々に囲まれた景色が途切れて、さわり、さわりと波打つ草の海が一面に広がる。

 はるか遠く、地平線の向こうに沈むオレンジ色の陽を見つめながら…。

 アルはふと重大な事実に気づき、思わず身を震わせるのであった。

 

 やばい。今回もまた、遺跡を壊しすぎた。

 これは絶対、後で怒られるなぁ…と。



ルインズエクスプローラー ―冒険者アルと遺跡の少女―

第二章 セルナ=イスト遺跡探索 【完】

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