第3話 ツムギ、初任務!
「ツムギ、お前はまずこの街の担当だ」
「なんか、中世のヨーロッパみたいですけど」
「そうだ、ここはツムギのいた世界とは違う。異世界だ」
「異世界ですか、なんだか不思議な気分です」
「スグに慣れて、違和感は無くなる。それで、お前の仕事だが」
「はい、どんな仕事ですか?」
「死神の眼鏡によって、人間の人気ゲージが見えるだろう?」
「あ、これって人気ゲージだったんですか?」
「そうだ、空っぽな奴は必要とされていないということだ」
「必要とされていない人間はどうするんですか?」
「その眼鏡で見えるだろう? みんなが命のパイプと繋がっている」
「確かに、でも、太さが違います」
「人気は無いが、今は間引きにくい物のパイプは太い」
「あの人、ゲージが空なのにパイプが太いです」
「あの男は多数の前科がある。だが、あいつはもうすぐ改心し、自警団を作って活躍する。だから、今は間引かない方が良い」
「あの人、人気ゲージは満タンなのに命のパイプが細いです」
「あいつはプロの詐欺師だ。詐欺で人望を得ている。だが、生きていても詐欺を繰り返すだけなので間引いてもいいんだ」
「誰を間引いて、誰を間引かないか? その判断が難しいです」
「なので、慣れるまではゲージが空っぽでパイプも細い奴を間引けばいい。こんなふうにな」
ゼロが鎌で或る男のパイプを斬った。男は、胸を押さえながら倒れた。ゼロの手元にはどす黒くブヨブヨした球体があった。
「これが魂だ。間引いた魂は役所に持って行けばいい。役所に行くぞ!」
「はい」
「この窓口に魂を提出すればいい。流れはわかったな?」
「わかりました」
「では、実践だ」
「はい!」
ツムギは空中からターゲットを探す。いた! ゲージが空でパイプも細い。ツムギはゼロをチラッと見た。
「俺の顔色をうかがわずに、自信を持ってやれ」
ツムギは初めて鎌を振るった。手元にどす黒いブヨブヨがあった。パイプを斬られた男は、胸を押さえながら倒れた。
「役所に持って行きます!」
「おう、持って行け」
「これで終わりですか?」
「終わりだ。これを繰り返すだけだ」
「直接、人間と接触することは出来ないんですか?」
「うーん、夢枕に立ったり、憑依することは出来るが、あまりオススメはしないな」
「どうしてですか?」
「あまり人間に関与しない方が良い。黙々と間引いた方が多分楽だ」
「もし、間違って間引いたらどうするんですか?」
「その心配は無い。重要人物のパイプは、C級の鎌では斬れない。斬れないパイプは、自分の管轄外なのだと思えばいい」
「死神って、何級まであるんですか?」
「C、B、A、S、そして我々最高幹部だ」
「国王とか、大臣などの権力者を間引くのは何級ですか?」
「A級からS級だ。A級からS級は、国や世界を動かす。B級やC級は街を動かす。そう考えたら、おぼえやすいだろう?」
「じゃあ、私のせいで降格になったアリエスさんは、スゴイ人だったんですね?」
「ああ、だが、致命的なミスをした。降格は妥当な判断だ。まあ、アリエスは優秀だからスグにA級に昇格するだろう。アリエスのことは気にするな」
「わかりました、とりあえずゲージが空っぽでパイプの細い相手を間引きます」
「それでいい。では、俺は自分の仕事に戻る」
「もう、行っちゃうんですか?」
「元々、私のような最高幹部が直々に指導することが滅多に無いことなんだぞ」
「そうでしたか、ありがとうございました」
「では、頑張ってくれ」
「はい、ありがとうございました」
ゼロは飛び去った。ツムギは、1人で死神の仕事をすることになった。緊張するが、死神になることを選んだのは自分だ。また、ゼロに会える日が来ることを夢見ながら、仕事に取りかかることにした。
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