第6話 再戦 変身失敗!自縛ミイラ拘束

決戦当日。早朝。


クロが百合の部屋にやってきた。

いつもならベットでうじうじしている百合なのだが、今日はもう着替えてベットに腰を掛けていた。

百合の意を決した顔に察するクロ。


「本当に…戦うんだね?」

「はい。クロさん、お願いします」

「…わかった。じゃあ移動するよ!」


クロが魔法陣を展開する。

二人は商店街に瞬間移動した。

以前シルクハットと遭遇した路地裏だ。


ズズっと空間の歪みが生じる。

シルクハットが現れた。


「ごきげんよう百合さん。おや?猫さんも来たんですね」

「ふん!自分から呼び出したくせに!」

クロは威嚇のポーズをとって警戒している。


「逃げずに来てくれたということは、私と戦うということでよろしいですね?」

「はい…ですから街の人々には手を出さないでください」


シルクハットはニヤニヤと笑った。

「ええ、約束ですからね。どうぞ変身してください。できるかどうかわかりませんがね?ふふふ♪」

「くっ…百合!君ならできる!自分を信じて!」

「はい!変身!トランスマジカル!」


百合は変身アイマスクを顔にかざし変身ポーズを取った。

しかし次の瞬間、変身アイテムが百合の目にぴったり貼りつき、無数の包帯のようなものが飛び出した。

そして百合の体は包帯にくまなくギチギチに巻かれ、ミイラのようになってしまった。

立ってられない百合はバランスを崩し、ドスン!とその場に丸太のように横たわってしまう。


「むぐぅ!…ふぅ…ふぅ…」

「おやおや?また殻にこもってしまうのですか?」

「百合!くっ転移魔法で…!」

「いけませんねぇ、邪魔はしないでください?」


シルクハットはクロの背後に瞬時に現れ、マントで拘束した。

クロは必死にもがくがびくともしない。


「やめろ!はなせ!この!」

「これで転移魔法は使えません。百合さん?私と戦うのではなかったのですか?」


そう言ってシルクハットは百合の胸をツンツンと指でつついたり、揉んだりしてきた。

しかし今の百合は体をよじることしかできない。


「ふぅ!…ふぅ…ふぅ…むぅむぅ…」

「ほらほら?何か言ってみたらどうです?」

「やめろ!百合に触るな!」

「むぐぅ!」


百合はシルクハットの手を何とか振りほどき、芋虫のように這いつくばって上半身を壁に寄りかけた。

そして包帯に包まれた口で何かもごもご言っているようだった。


(くっ!やっぱりまだ恐怖心が残ってるみたいですね。ふぅぅぅ…落ち着いて、自分に素直になって、もう一度…変身!トランスマジカル!)


どうやら包帯の中で何度も変身の口上を叫んでいるようだ。


「ふんひん!ほむんふはむむぅ!ほむんふはむむぅ!」

「そんな恰好で私から逃げられるとでも思っているのですか?」


シルクハットは手で百合の口を塞いだ。

百合は必死に抵抗するがなかなか振りほどけない。

このままでは窒息させられてしまう。


(く、苦しぃ…はぁ…はぁ…息が…)


「むぐ!むぐぅぅぅ!むぐんぅ!」

「百合から手を放せ!くっ!この…このぉ!」


クロが何とか拘束から抜け出し、百合の口を塞いでいるシルクハットの手に噛みついた。

シルクハットは百合から手を放し、クロを地面にたたきつけた。


「がは!はぁ…はぁ…ゆ…り…」

「さっきからうるさいですねぇ猫さんは」


しかしそれによって百合の口の部分の包帯がずれ、百合は喋れるようになった。


「ぷはっ!はぁ…はぁ…逃げる気なんてありません!

 変身!トランスマジカル!」


その言葉とともに変身アイマスクが光り出す。しかし変身アイマスクからはまた無数の包帯が生成され、百合の体をさらに包帯でギチギチに締め上げる。


「さらに殻に閉じこもってしまいましたねぇ。くくくく♪」

「く…ここまで…なのか…」


シルクハットは百合の頭をつんつん突いてニヤニヤと笑っている。

味方であるクロはなかば諦めかけていた。

しかし、百合の心の静かな炎は消えてはいなかった。


(クロさん、大丈夫です。わたし諦めたりなんかしません。だってこの街を…みんなを守りたいから!)

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