第8話 『ドS』と【ドM】と「この豚が!」
『ユイト、ちょっと簡単な質問をしてもいいデスか?』
「ん? どうした
『ユイトはどんなマゾが好きですか?』
「難しいってレベルじゃねーぞ!?」
『ああ、間違いまシタ。正しくは謎でシタ、謎』
「いやいいやいやいや。それ普通間違えないから……そもそもイントネーションが違うから……」
『えへへ、日本語は難しいデス。でも、そもそもその質問をするなら、ユイトはドMさんですから、『どんなサドが好きですか?』ってききマスから』
「うん、勝手にドM認定しないでくれると助かるんですけどね…………で、質問はどんな謎が好きか? だっけ?」
『はい! この学校――
「そうなんだよな……なぜか原因不明の怪奇現象みたいなのが起こったりするんだよな、うちの高校」
『デスデス。『天冥七不思議』なんていう括りもあるくらいデスから』
「ああ、実際には七つに収まってないアレな……しかも昔からずっとある、とかじゃなくて、すぐに解明されたりするからしょっちゅう内容が入れ替わるし……」
『素晴らしい事デス! 謎は解かれる為に存在するのデスから』
「目ェキラキラさせちゃってまあ……いや、俺は特に好きな種類の謎とかはないんだけど、白姫はほんとにそういうの好きだよな」
『はい。ヴェールに包まれていた真実が解き明かされる過程はとてもドキドキしマス!』
「その辺も
『サヤカは言葉はツンツンしてますけど、優しい子デスから。悩みを解決して相談者が喜んでくれるのが嬉しいんでショウ』
「そうだな。まあでもその点に関しては白姫も同じだろ? ここに来るのは謎が発生して困っている人間だ。それをなんとかしたくてこの『白黒つけよう会』を作ったんだもんな」
『ええ。謎が謎のままだと、とてもモヤモヤしますカラね。それがクリアになって相談者がハッピーになってくれれば私も楽しいデス! まあそれが本当に心霊現象なんかの類いであれば完全にお手上げなのデスが……』
「まあ、ここで起こる不可解な現象の原因は『人間』なんだよな……微妙なすれ違いとか思惑の交差で結果としておかしな状況になっちゃうというか……まあジャンルで言うとホラーじゃなくて、ミステリーの『日常の謎』系に近いんだろうな」
『はい。ですからユイトに入ってもらってとても助かっていマス。ユイトは人の心の動きを感じ取るのに非常に長けていますカラ。悩みにしても謎にしても、最後は結局ユイトが解きほぐしてくれる事が多いデスよね』
「はは、まあちょっとは二人の力になれてるのかな?」
『モ○チンです!』
「遂に一番やっちゃいけない間違いしたなお前!」
『えへへ、勿論でシタ』
「いや、聞いてるのが俺だけでよかったわ……」
【あら、なんだか楽しそうね】
『あ、サヤカ! お掃除当番ご苦労様でシタ!』
【ええ。徹底的にやっていたら少し遅くなってしまったわ】
「黒妃、お疲れ。まあ楽しそうにしてたのは白姫だけだけどな……」
【一体なんの話をしていたの?】
『ユイトがマゾでモ○チンだというお話しデス!』
「お前絶対わざと間違ってるだろ!」
『日本語は難しいデス……』
【別に前半は何も間違っていないと思うけど】
「いや黒妃もそういう認識なのかよ……」
【別に後半も何も間違っていないと思うけど】
「安心してくださいはいてますよ!」
『サヤカ。ユイトは人の心の動きについて敏感で、いつも私達を助けてくれる、という話をしていたんデス』
【ああ、そういう事。まあそれはたしかね。
『ユイト、いつもありがとうデス』
【右に同じね。灰咲君がこの『白黒つけよう会』に入ってくれて感謝しかないわ】
「な、なんかそこまで持ち上げられるとちょっとむず痒いな……ん? ちょっと悪い。なんかスマホにメッセージが」
『誰からデスか?』
「えっと……ああ、佐藤からだな。なになに……『よかったらこの前のお礼も兼ねて、ケーキでもご馳走させてください』…………ん? なんかまた別のメッセージが来たな」
【……今度は誰から?】
「ええと……あ、これはこの前乱入してきた阪本からだな……なになに……『爽介の性根があまりにも腐りきってたから捨てたった』? はやっ!? 見限るのめっちゃはや!……ん? 『どっかで茶ぁしばかへん?』って……これも礼って事なのか?……ああ、会話の途中で悪かった。まあ返信は後でするとして……ん? なんだ二人とも、そんな微妙な表情して――」
『ユイトって人の気持ちが全然分からないデスよね』
【ええ。灰咲君がこの『白黒つけよう会』にいる事に怒りしかないわ】
「なんかさっきと言ってる事違いすぎません!?」
『はあ……ユイトはほんとに困ったさんデス。他人の心の事はあんなによく分かるのに、自分に関してはサッパリなんデスから』
【そうね。ニブチンかつモ○チンなんて手の施しようがないわ】
「脱いでないっつってんだろうが!」
《……ちょっと、アンタら客入って来てっけど》
「……え?」
『あ、相談者さんデス!』
【不覚にも全然気付かなかったわ……】
《いや、ちゃんとノックしたっつーの。アンタらがワーギャーしてて気付かなかっただけだし》
「も、申し訳ない」
『うう……なんかいつもこのパターンデスね、私達』
【ごめんなさい。全ては灰咲君の下半身がだらしないせいなの】
「そういう事言うから騒がしくなるんだろうが!――って、言ってるそばからうるさくしてすまない……」
《ふん、いきなり押しかけてんのはこっちだから別にいいけど……アタシは二年三組。
「あ、ああ、よろしく……二年一組の灰咲
《うわ、表情わっかりやす! アンタ、こいつ今時どんだけコテコテのギャルなんだよ、って思ってるっしょ?》
「い、いやそんな事は……」
『はいはい! 私は日本のギャルのファッション大好きデスよ! 金髪にルーズソックスにデコバッグ……私もいつかはやってみたいデス!』
《お、マジ?
『いえいえ、社交辞令ではありまセンよ。お話しした事はありまセンでしたが、遠目から見てキラリの金髪とっても綺麗だな、と思った事、何回もありマスから』
《あ、そりゃ大成功だわ。目立つ為にこんだけギラッギラに染めてっからね》
『でも、色の綺麗さは変わりませんが、随分とサッパリしまシタね。数日前に見た時は腰のあたりまで長さがあったと思ったんデスけど』
《ああこれ? なんとなく気分でバッサリいっちったの。どうどう? アリっしょ?》
『はい! ショートヘアーもベリーキュートデス!』
【そうね。よく似合っているわ。ほとんど痛みも見られないし、お手入れ方法を知りたいくらい】
《うっわ。
【でも、いきなりそんなに思い切って大丈夫なのかしら。鬼塚さん、雑誌で読者モデルもやっているでしょう?】
《うわはずっ!
「むしろ?」
《あ、脱線すっからそれはいいや――ってか灰咲、女子トークしてっとこにいきなり入ってくんなし!》
「い、いや相づち打っただけなんが……なんか鬼塚……俺にだけ当たりが強くないか?」
『あー、わりわり、アタシさ、男子が自分の言葉でシュン、となったりオロオロしてんの見てっと、なんかゾクゾクすんだよね』
【ドSね】『ドSさんです』
《まーね。特に灰咲――アンタみたいなタイプの男子に対しては》
【つまりドMね】『つまりドMさんですね』
「そこはハモんないでくれますかね!」
《つか、そんな事はどーでもいいんだっての。アタシがここに来た本題はさ……どーしても解いてほしい謎があるんだ》
『謎デスか!』
《うおっ!? ど、どしたんフワっち。いきなりそんなに興奮して……》
『はっ! す、すみまセン。謎と聞いてつい……私、不思議を解明するのが好きなものデスから』
《いーねぇ。アタシがいっくら考えてもひとっっつも解けない謎、やっつけてもらおうじゃん》
『はい! 私達『白黒つけよう会』にお任せくだサイ!」
《じゃあ早速……アタシさ、つきあってる奴がいるんだよ。で、そいつがさ――》
『ふんふん! その方がどーしまシタか?』
《おかしいんだ……アタシが『この豚が!』って罵っても、喜んでくんないんだ……》
『……………………………ええと……それは、謎なんでショウか?』
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