第4話 『エッチ』と【縛り】と「雪月花」
【
「ああ、暇だな……」
『すぴー、すぴー……』
【フワリスもこの通り寝ちゃってるし、相談者も来ないし……どう、二人でエッチな事でもする?】
「は?……い、いきなり何言ってるんだ?」
【言葉通りの意味よ……ほら、もっとくっつきましょう?】
「ちょっ……か、顔! 顔が近いって!」
【当たり前じゃない。密着しないとエッチな事なんてできないんだから】
「ま、待て
【あら、そういうスリルがあった方が興奮するじゃない】
「お、俺にはそういう趣味はない! そもそもこういうのは好きな奴ら同士がやるもんであって――」
【あら、随分おかたいのね。別に恋愛感情がなくてもエッチな事くらい、いいじゃない。だから……ね?】
「だ、駄目だそんなの!」
【ふふ、まあ口でいくら抵抗しても無駄よ。悪いけど――拘束させてもらったわ】
「はっ!? い、椅子の裏で手を縛られてる! い、いつの間に……」
【悪いけど、強制的にエッチな事をさせてもらうわ】
「…どうしたんだ黒妃……な、なんで急にこんな事をっ……」
【……灰咲君が悪いのよ】
「え?……」
【昨日の相談者――
「し、したけどそれがどうしたんだ? 何も力になれなかったのに、なぜかお礼のメッセージが来て……一回返してそれで終わりだぞ」
【まあ、とりあえずはそうでしょうね。灰咲君……私はあの時気付いてしまったの。自分の本当の気持ちにね】
「ほ、本当の気持ち?」
【ええ。このまま手をこまねいていたら、とられちゃうって思ったの。だから……実力行使に出る事にしたわ】
「く、黒妃……」
【大丈夫よ。全部私に任せて。灰咲君は目をつむって委ねるだけでいいの。なるべく早く終わりにするから】
「よ、よせ黒妃! お前は冷静な判断力を失ってる! 勢いでこんな事したら絶対後悔するぞ!」
【その心配はないわ。ずっと……ずっとしたいと思ってた事だもの】
「ま、待て黒妃、お、落ち着け! や、やめっ――ん? な、なんだ? なんか変な臭いが――」
【はい、おしまい】
「……へ?」
【終わったわよ。エッチな事】
「い、いや、だってまだ鼻をちょっと触ったくらいで――」
【だからしたわよ。H(鼻の頭を)H(ホッケを触った手で)H(一撫でする)――トリプルエッチな事を】
「だからちょっと生臭ぇのか!?」
【あら、何か勘違いしちゃった? ふふ、この為にお弁当のホッケの塩焼きを少し残しておいたの。はむ…………おいしい。ん? どうしたのそんな顔して? もしかして私がいやらしい事しようとしてるとでも思った?】
「そ、それはお前……あんな言い方したら誰だって……」
【別に嘘は言ってないわよ。本当に先を越されるって思ったもの。昨日の佐藤さんのLINE交換した時のあの目――『絶対ホッケ触った手で鼻の頭を一撫でしてやる』って目だったわ】
「人間は瞳にそんな複雑な情報のせられねえよ!」
【ふふ、灰咲君はいやらしい事を期待してたのよね?】
「そ、そんな事は――いや、俺も男だからな……まったく無かったっていうと嘘になるけど……」
【あら、正直なのね。ごめんなさい、紛らわしい言い方をしたのは事実だし、罪滅ぼしとして……まあいやらしい事は無理だけど――
「なんだ鰯らしい事って!?」
【いやらしい事をする際に、何もしないでその身を委ねる事――ああごめんなさい。それはイワシじゃなくてマグ○だったわ】
「きょうびオッサンでもそんな最低の下ネタ言わねえぞ!」
【やだ、やめてよ】
「褒めてねえよ! なんで『満更でもない』みたいな照れ笑いができんだそこで!…………………はあ、もういいからとにかくこの縄を解いてくれ」
【ああ、ごめんなさいね。じゃあこれをこうして……ああして……】
「いやおかしいだろ! なんでほどくはずが全身縛られてんだ!?」
【てへペロ】
「セリフのポップさとやってる事のハードさがつり合ってねえんだよ! あれだろこれ
【違うわ。
「真顔で訂正してんじゃねえよ! どっちでもいいわそんなもん!」
『ふわあ……』
【あら、起きたのねフワリス】
『うにゅう…………おはよーございマス、サヤカ。あれ?……さっきまでここに座ってたユイトはどこデスか?』
【そこの床に転がってるわ】
「……よ、よう……おはよう白姫」
『わあ、芸術的な拘束デス! ええと、これはたしか……ああ『必死なわりばし』デスね!』
「相変わらずどんな間違い方だよ! 木片に必死も呑気もねえよ! ちゃんと覚えろ菱縄縛りだ!」
『ああそうでシタ! 正確に記憶しますね!』
「いやよく考えたらそんなもん覚えない方がいいわ!」
『むー……ユイトが理不尽です』
【言っている事が途中でコロコロ変わる男……最低ね】
「全部お前のせいだよ!」
《あー、ごめんねー。ノックをしても反応がないもんだから勝手に入らせてもらったよ。ちょっと相談に乗ってほしい事が――――――――――――って取り込み中みたいだから日を改めよっかな……》
「待って相談者の人帰らないでくれええええええええええっ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《あはは、噂にはきいていたけど想像以上に愉快なところみたいだね、『白黒つけよう会』ってのは》
「も、申し訳ない……非常にお見苦しい所を」
【まったくね。せっかく相談にきてくれた人にあんな常軌を逸したものを見せるなんて】
「お前どの口が言ってんだマジで!」
『あはは! 気にしないでくだサイ。あのくらいの事、ここでは日常ブー
「
『日本語は難しいデス……』
【どうせなら日常
「余計な茶々入れんな!」
【うわ……ちょっと上手い事言ってやった、みたいなドヤ顔が生理的に無理】
「してねえしそこまで言われる事ですかね!?」
《あの……君達の会話はとても楽しいんだけど……相談させてもらってもいい?》
「か、重ね重ね申し訳ない!」
【ごめんなさい。さすがに少しおふざけが過ぎたわね。まあこの先もふざける事になるとは思うけど、問題を解決するという事に関しては三人とも真剣だから安心して頂戴――
『え? ハナミヤソウスケ? それって昨日の――はっ!?』
《ん? どうしたのかな、白姫・ラ・フワリスちゃん》
『いっ……いえいえ、気にしないでくだサイ! あ、危うく守秘義務を破ってしまう所でシタ……ん? ソウスケは私の事、知ってたんデスか?』
《はは、君はもう少し自分が有名人だという事を自覚した方がいいよ。『
『ああ、ものすごく人気のある男の子達の事デスね。どうりでイケメンだと思いまシタ!』
《おやおや、それはアタックと受け取っていいのかな?》
『いいえ?……見たままを言っただけデスよ?』
《ははっ! 噂通りの面白い娘だね。そして間近で見ると噂以上にかわいい》
【花宮君、そろそろ本題に入った方がいいんじゃないかしら?】
《おっとすまないね『
「えっと、花宮。黒妃の言う通り、そろそろ相談内容を教えてほしいんだけど……」
《おお、そういえば君もいたんだっけね。『
「やっぱり浸透してるのかその呼び名……」
《まあこんな美女二人に囲まれてるんだ。そのくらいの汚名は謹んで受けてもらわないとね――まあ、俺の相談っていうのも実は女の子に関する事でね。実はさ――ある人を好きになっちゃったんだ》
『わあ、それは素敵デスね! それで、お相手は一体どこの誰なんデスか?』
《ああ、知ってるかな? 俺と同じクラスの――佐藤…………あいちゃんって子》
【『ぶふーーーーーーーーっ!?』】
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