第2話出会い

 突然見知らぬ場所に飛ばされ、目の前に広がる光景に未だ頭が追い付かない。しかし、長い髪を後ろに束ねたその男は依然こちらを見ようともしない。すると闇の中から祭祀のような格好の血まみれの男が、何かぶつぶつつぶやきながら出てきて男の前に立ちはだかった。

「貴様ら何者だ。我は影の王に仕える騎士ルーラクであるぞ。貴様ら英雄を望む者か」

男はフラフラになりながら言った。

完全に乱心していると晋之介は思い、同時に恐怖した。

しかし、対する長髪の男は堂々と答えた。

「俺はギルリア・トシアル。乱心のとこ失礼だが英雄になど興味はない。」

そう答えると刀を抜いた。

(間違いない。あれは日本刀だ。)

晋之介は確信した。

すると、ルーラクと名乗る男はぴたりと止まり背中にさしていた剣を抜き言った。

「貴様ら王国軍は一人たりとも生きては返さん。」

その言葉を皮切りにトシアルに切りかかった。

「まったく何を言っとるのかさっぱりわからんな。」

そう言葉を返すとトシアルはようやく構えをとった。

(殺し合いが始まる!)

晋之介はそう思いさらに恐怖したが、二人の男から目が離せない。しかし、そんな緊迫の中トシアルに向かって風が吹いているのがわかった。いや集まるといったほうが適切かもしれない。しかし、数秒後その風はピタリと止み、その瞬間トシアルは目の前から消え、ルーラクの首が宙を舞っていた。

(なんだ今の...全く見えなかった。)

そう思ったのも束の間、堰き止めていた風が吹き出すように爆風がやってきた。晋之介はやっとの思いでその場所に踏みとどまった。


 風が止み前を見るとトシアルはルーラクの後ろに立っていた。晋之介はこの数分の出来事に混乱していた。するとトシアルは白刃をむき出しのままこっちに歩いてきた。殺される。そう思った。

「お前ヒノタカの国の人間か」

(俺に言ってるのか?)

「い、いえ何も知りません。ほんとに何も知りません。」

「落ち着け。ガキの命までは奪わん。」

そう言うとトシアルは刀を納めた。

「しかし、何も知らんとはどういうことだ。お前がこの場にいる以上知っていることはすべて話してもらう義務がある。それができんのならお前の命の保証はできん。」

「あ、あのほんとに何も知らないんです。信じてもらえるかはわかりませんが、頭痛がして気づいたらここにいて...ワープ?召喚?みたいな感じで...」

「召喚だと?」

そう言うとトシアルはあたりを見渡しはじめ、何か感づいたかのように死体の山と血で隠れた地面を見つめた。その時ルーラクがやってきた逆の方から人間の声が聞こえた。

「もう来やがったか。一旦はお前のことを信じよう。だが妙な動きをした瞬間お前の命はないと思え。」

そう言われひと時の安堵と恐怖でいっぱいになりながらも、やっとの思いで立ち上がった。

「いいか、俺がいいというまで動くことも話すこともこの先禁じる。いいな!」

「はい。」

そう答えるしかなかった。しばらくすると、声のしたほうからこれまた騎士のような格好の男が数名現れた。すると先頭の全身赤い甲冑を着た男が

「ずいぶん派手に暴れたなトシ。聞きたいことは山々だがまずは横にいる小僧について話してもらおうか。」

とトシアルを小ばかにしたような口調で言った。

「その前になぜお前がここにいるのかを聞くのが先だ。」

二人は静かに睨み合って言葉を交わした。

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宿命の救世主 @atsukawa

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